桂枝茯苓丸(25番)、当帰芍薬散(23番)、と来たらこの
処方を紹介せねばなりますまい。予想通り、の方も多いのでは
ないでしょうか。(^ ^)
・加味逍遙散(カミショウヨウサン 24番)
構成:柴胡3g+当帰3g+芍薬3g+茯苓3g+蒼朮3g
+甘草1.5g+生姜1g+薄荷1g+牡丹皮2g+山梔子2g
23、24、25番と連番になっていることもあり、これら
3薬は “婦人科漢方三銃士” の如く頻用されています。どれも
月経の不調や更年期の諸症状に使用され、24番は特に不眠や
イライラがある場合に使用されます。もちろんそれぞれ効果は
ありますが、問題はその選び方なんですね。体型や顔色などで
使い分けることが当然のように紹介されますが、それはむしろ
補助的な診断法です。またそれをやると併用の選択肢がなく
なるのでもったいないです。やはり構成生薬から考えることが
主でなければなりません。
では24番を解析してみましょう。生薬数は10種でこれまで
紹介してきた処方の中では比較的多いですね。しかし「加味」
とは「生薬を足す」という意味なので、加味逍遙散の本体は
「逍遙散」です。上記構成の最後の2つ、牡丹皮(ボタンピ)と
山梔子(サンシシ)が後から加味された生薬です。
つまり逍遙散という薬があって、何か物足りないから2つ足して
みたら適応する人が多くてヒット商品(笑)になった、という
ことです。では逍遙散とはどんな薬か。中心となるのは柴胡(サイコ)
+薄荷(ハッカ)です。この2つが「気を晴らす」という効果が
あるので、気分が落ち込んだり、胸苦しかったり、イライラ
したり、という症状に良いのです。
2〜4番目の当帰、芍薬、茯苓、蒼朮は当帰芍薬散(23番)
にも配合されていましたから、23番+気を晴らす(理気作用と
言います)のが逍遙散、という見方ができますね。
さて加味された山梔子は「冷やす」効果があります。牡丹皮は
桂枝茯苓丸(25番)にも配合された血を巡らせる生薬です。
この加味された効能こそが24番の意味ですから、そう、ほてり
の有無がこの薬を選択する上で重要、ということになります。
理気作用にばかり目が向いて「不定愁訴の漢方」なんて紹介
されることも多いですが、それは逍遙散のことであって24番に
特化したものではありません。
不定愁訴は“原因が特定できない非定型的症状” みたいに捉えられ
ますが、そもそもは「訴えが一定しないこと」なので原因不明
の難しい症状のことではありません。これも24番を誤用する
ことに繋がるので注意が必要です。
生薬数が増えれば効能が増え、組合せによる副次的な効果も付与
されるので一気に複雑になる気がしますが、考え方は全く変わり
ません。…って、解説長い?だってヒマなんですもの。(笑)