予告通り今回も柴胡剤の中から紹介します。柴胡剤は数種類
ありややこしいですが、基本的には小柴胡湯からの派生です。
小柴胡湯の効能を拡げるか、弱点を補完するか、です。今回
紹介する処方は前者です。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ 12番)
構成:柴胡5g+黄芩2.5g+半夏4g+人参2.5g
+大棗2.5g+生姜1g
+桂皮3g+茯苓3g+竜骨2.5g+牡蛎2.5g
処方名が長く、構成生薬も比較的多いのでギョッとするかも
知れませんが命名は「小柴胡湯に竜骨と牡蛎を加えたよ」と
いう意味ですので恐れることはありません。構成の上、中段
が小柴胡湯、下段がこの処方で追加された生薬です。
加味された竜骨(リュウコツ)も牡蛎(ボレイ)も「気を緩める」
のが得意な生薬です。注目して頂きたいのはさらに「桂皮+
茯苓」も追加されていること。これ、何度も出てきた組合せ
ですよね。…よね?(笑)桂皮+茯苓は「気を降ろす」という
に配合されていましたね。
竜骨+牡蛎で気を緩めつつ桂皮+茯苓で気を降ろすわけです
から、上半身、特に頭頸部の症状がターゲットなるわけです。
具体的にはイライラ、不眠、頭痛、肩コリ、眼の疲れなどです。
小柴胡湯が胸部周辺の症状を得意としていましたから、守備
範囲が拡がる感じですね。上記のような症状があると向精神薬
が処方されがちですが、その前にこの処方を試したいところ
です。
さて、紛らわしい名称の薬があります。
・桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ 26番)
構成:桂皮4g+芍薬4g+大棗4g+甘草2g+生姜1.5g
+竜骨3g+牡蛎3g
こちらは桂枝湯(ケイシトウ 45番)に竜骨と牡蛎を加えた薬
ですので、名前は似ていますが全然別ものとなります。竜骨と
牡蛎をわざわざ追加しているので、もちろん過敏緊張気味に
なっている人に適応があるのは間違いありません。12番
との違いは何と言っても柴胡+黄芩を含まないことです。
柴胡+黄芩は抗炎症作用があるので言ってみれば「冷ます」
薬です。これは冷え症の人には使いにくいですね。26番は
桂皮が配合されているので温める作用を有しますし、桂枝湯は
胃腸を整える薬でもあります。結果、竜骨+牡蛎を使いたい
過敏緊張気味の人で、冷えと胃腸虚弱がある場合が適応と
なるわけです。12番とは逆ですね。
ただ、だからと言って12番を “実証向け” 、26番を “虚証
向け” としてはいけません。あくまで症状と構成生薬とを
照らし合わせて選択すべきです。しかも、なんと次回もまた
柴胡剤チョイスです。