院長室

« 5月 2020 6月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 7月 »

漢方薬解説-16 人参湯

さて柴胡剤が一段落付いたところで、次の重要生薬関連処方を

紹介いたします。柴胡剤(9番、10番、12番)にも配合

されていた人参(ニンジン)です。人参はみぞおちの痞え感や嘔気

に対して効果があるので守備範囲がかぶる柴胡と併用されたの

ですが、今度は人参を主薬とした処方群です。あ、ちなみに

キャロットとは別ものです。念のため。

 

・人参湯(ニンジントウ 32番)

構成:人参3g+蒼朮3g+甘草3g+乾姜3g

 

4種の生薬のみで構成されるシンプルな処方です。4種均等に

配合されていますが、主役は人参+蒼朮です。蒼朮は17番など

で登場した水分代謝改善剤であり、鎮痛効果もあり、と各方面で

重用される生薬です。人参とタッグを組むことで悪心嘔気を

抑える効果を高めます。このタッグはとても多くの処方に組み

込まれています。

 

人参湯で着目すべきは乾姜(カンキョウ)です。消化器系の薬、と

いうより温める作用を目的として配合されることが多いです。

なので、32番は悪心嘔気、胃部の痞え、そして冷えが対象

となる処方です。西洋薬にはない効能なので、とても重宝します。

そして、似たような構成をしているのが

 

・四君子湯(シクンシトウ 75番)

構成:人参4g+蒼朮4g+茯苓4g+甘草1g+大棗1g+生姜1g

 

です。“単独で使用されることは少ない”などと評されることが

多い不遇の(笑)処方ですが、32番より人参+蒼朮の用量は

多いですし、これまた嘔気やめまい、動悸に効果がある茯苓

まで配合されていますから、十分使える薬です。

 

名称にある「君子」とはその名の通り「偉大な人」という

意味で、四君子湯とは「偉大な生薬4つを配合した薬」という

ことです。前半4つの人参、蒼朮、茯苓、甘草を指しています。

大棗と生姜がオマケみたいになってますが、大棗はナツメで

生姜はショウガですから、比較的入手しやすかったための

軽めの扱いのようです。この視点で言うと32番は「三君子湯」

でも良さそうですね。

 

効能が似ていてほとんどの生薬が共通しますから、この2薬

を併用するのはもちろんOKです。君子と言われる所以の一つ

として副作用がほとんど無い、という点が挙げられるので

安全面でもOKです。

 

実は人参は原価が高騰していて、処方の製造コストが上がって

いますが、それに見合った保険薬価上昇が伴わないのでメーカー

側の涙ぐましい努力が裏にあるんです。ありがたく感じつつ

服用しましょう。(^ ^)

2020年6月11日 木曜日

カテゴリー 院長室

タグ