さて柴胡剤が一段落付いたところで、次の重要生薬関連処方を
紹介いたします。柴胡剤(9番、10番、12番)にも配合
されていた人参(ニンジン)です。人参はみぞおちの痞え感や嘔気
に対して効果があるので守備範囲がかぶる柴胡と併用されたの
ですが、今度は人参を主薬とした処方群です。あ、ちなみに
キャロットとは別ものです。念のため。
・人参湯(ニンジントウ 32番)
構成:人参3g+蒼朮3g+甘草3g+乾姜3g
4種の生薬のみで構成されるシンプルな処方です。4種均等に
配合されていますが、主役は人参+蒼朮です。蒼朮は17番など
で登場した水分代謝改善剤であり、鎮痛効果もあり、と各方面で
重用される生薬です。人参とタッグを組むことで悪心嘔気を
抑える効果を高めます。このタッグはとても多くの処方に組み
込まれています。
人参湯で着目すべきは乾姜(カンキョウ)です。消化器系の薬、と
いうより温める作用を目的として配合されることが多いです。
なので、32番は悪心嘔気、胃部の痞え、そして冷えが対象
となる処方です。西洋薬にはない効能なので、とても重宝します。
そして、似たような構成をしているのが
・四君子湯(シクンシトウ 75番)
構成:人参4g+蒼朮4g+茯苓4g+甘草1g+大棗1g+生姜1g
です。“単独で使用されることは少ない”などと評されることが
多い不遇の(笑)処方ですが、32番より人参+蒼朮の用量は
多いですし、これまた嘔気やめまい、動悸に効果がある茯苓
まで配合されていますから、十分使える薬です。
名称にある「君子」とはその名の通り「偉大な人」という
意味で、四君子湯とは「偉大な生薬4つを配合した薬」という
ことです。前半4つの人参、蒼朮、茯苓、甘草を指しています。
大棗と生姜がオマケみたいになってますが、大棗はナツメで
生姜はショウガですから、比較的入手しやすかったための
軽めの扱いのようです。この視点で言うと32番は「三君子湯」
でも良さそうですね。
効能が似ていてほとんどの生薬が共通しますから、この2薬
を併用するのはもちろんOKです。君子と言われる所以の一つ
として副作用がほとんど無い、という点が挙げられるので
安全面でもOKです。
実は人参は原価が高騰していて、処方の製造コストが上がって
いますが、それに見合った保険薬価上昇が伴わないのでメーカー
側の涙ぐましい努力が裏にあるんです。ありがたく感じつつ
服用しましょう。(^ ^)