ウチで頻用している漢方薬です。その割にはあまりメジャーに
ならないので、僕の力不足を感じる次第でもあります。(笑)
薏苡仁(ヨクイニン)は水イボに使う、なんて言われているので皮膚
の漢方薬のように思われますが、全く違います。その構成を見て
みましょう。
・薏苡仁湯(ヨクイニントウ 52番)
構成:薏苡仁8g+麻黄4g+芍薬3g+甘草2g+蒼朮4g+当帰4g+桂皮3g
さあ、いかがでしょう?結構これまでに紹介してきた生薬の知識で
読み解くことができる構成になっています。薏苡仁+麻黄は関節炎
などに使いました。(麻杏薏甘湯)芍薬+甘草も筋肉の張りに
使いましたね。(芍薬甘草湯)そして蒼朮はむくみのある痛み
に使いました。(桂枝加朮附湯)ついでに桂皮+麻黄は発汗解熱
作用を有しました。(麻黄湯)
当帰(トウキ)以外はこれまで解説してきた痛み関連の生薬を合わ
せたような構成になっているのが分かると思います。あまり良い
言い方ではないですが、痛みの“オールラウンダー” とでも言える
でしょうか。これに附子末を追加すればさらに…。当帰は血流
改善効果があるので、間接的に鎮痛に寄与します。
もちろん麻黄や甘草の過量には留意せねばなりませんが、僕が頻用
する理由がこのバランスの良さです。医師向けの雑誌インタビュー
なんかで「好きな処方はなんですか?」なんてショーモナイ質問を
されたりするんですが(^ ^;)、「そんなんねーし」と答えるのも
大人げないので宣伝も兼ねて薏苡仁湯を挙げることにしています。
ではこの全方位型の鎮痛処方が効かなかったらどうするのか。漢方
なんて効かねーじゃん、ではなくて「普通の痛みではない」と捉える
のです。例えばストレス絡みだったり、循環不全だったり。ここで
「気血水」という概念が登場するんですね。もちろんその処方も
用意されていますので、痛みをふるいに掛ける、という意味でも
広く使用されるべき処方かなと思います。
さて、我々の永遠のアイドル(?)志村けんさんのコロナウィルス
感染が報道されました。年齢的に高齢者の域ですので重症化しない
ことを祈るのみです。すっかり良くなって「だいじょぶだぁ」と
かまして欲しいです。