通常、アカデミー賞を受賞したからといってホイホイと映画館へ行くような
浅はかな行動はしないと心に決めていたのですが、余りにも評価が高いので
アッサリと信念を捨てホイホイ行ってきました。そして、評判通り。脱帽。
まずは黒人差別が激しかった1960年代のアメリカを描いた「グリーン
ブック」です。音楽家として既に確固たる地位を持つ黒人ピアニストと
食うや食わずの生活を強いられているが、ずる賢く立ち回って家族を
養っているイタリア系白人の、いわゆるバディムービーです。
北アメリカに比べ、南部は黒人差別が顕著でトイレや食堂は別で泊まれる
ホテルも限られています。そしてそれに全く罪悪感を感じていないという
異常さ。黒人が安全に食べたり泊まれる場所をガイドしたのがタイトルの
グリーンブックという本なんですが、主人公の黒人はわざわざそんな危険な
南部にコンサートツアーに出かけるのです。その運転手を任されるのが白人
主人公というわけ。ともすると重く暗くなりそうなテーマなんですが、監督
さんがピーター・ファレリーというコメディを得意としている方、というのが
本作のミソです。見事に全方位型の娯楽作に仕上げています。“思い出し笑い”
ならぬ “思い出し泣き” ができるよ。素晴らしい。
アカデミー賞受賞のタイミングで公開するというアコギな(?)宣伝方法も
功を奏して絶賛ヒット中ですが、あまりにも用意周到なのでアカデミー賞
自体を出来レースと思わせることにもなったりして。(^ ^;)
「グリーンブック」が気に入りすぎて「スパイダーバース」を書く余裕が
無くなってきましたが、いやこれも劣らずの傑作です。アニメなんですが、
未見性に満ちていてもの凄い情報量かつ圧倒的な迫力の“体験型” 映画です。
初代スパイダーマンの跡を継ぐことになった新米スパイディを軸に多次元
から召喚されてしまった5人のスパイダーマンの活躍を描きます。設定から
するとザ・陳腐(笑)なのですが、全く問題ない、というかこれが正解なの
です。なぜなら本作のテーマは「ヒーローはどこにでもいる」ということ
だから。
それよりも何よりも本作の特徴はまるでコミックの様な絵がヌルヌルかつ
スピーディーに動くという点です。吹き出しが出てみたり、擬音マークが
出たり、漫画を読むような感覚で映画を観る、と言うと近いでしょうか。
近年はCG技術が革新してもう既にアニメの存在価値自体が危ぶまれている
向きもありますが、アニメにしかできんこともあるんぜよ!という声が
聞こえて来そうな気概溢れる作品です。
僕は吹き替えが苦手なので字幕版を探して鑑賞しましたが、今作は
吹き替え版の評価もすこぶる良い。なので、また軽く信念を曲げそうです。
ちなみに重要な役どころである主人公の叔父の声を担当したのが
マハーシャラ・アリという俳優さんなんですが、実はこの方「グリーン
ブック」の黒人主人公であり、さらに「アリータ」の敵ボスでもあります。
つまり現在、劇場はちょっとしたマハーシャラ・アリ祭り状態です。(笑)
僕の中でも株爆上げ状態です。
この2作は本当にオススメです。ちなみに「イップマン外伝 マスターZ」
をトニー・ジャーとミッシェル・ヨー見たさに観に行きましたが、
“思い出し苦笑い” をすることとなりましたとさ。