糖質制限と同等かそれ以上に栄養療法で指導されるのが、鉄の
摂取です。「隠れ貧血」なんてのがたまに特集されたりしますが、
そこまで鉄を重要視するのはなぜなのか。
一言でいうと、鉄が不足すると酸欠になるから。我々は酸素が
なければ死んでしまう動物なので酸欠は最大の敵です。そこに
鉄が不可欠なんですね。全ての疾患は血流不全だ!なんいう
本もありますが、血流が十分でも酸素を届ける能力がなければ
病態改善は頭打ちでしょう。届けられた酸素を利用するのにも
鉄が必要なので鉄不足下では酸素の運搬障害、そして利用障害
とダブルで酸欠になるのです。鉄、すっげー大事ですね。
そこで鉄不足を細かく診断することが重要になるのですが、
健康診断や人間ドックで測定するヘモグロビンだけでは全く
分かりません。ヘモグロビンは鉄を利用したタンパクの一つに
過ぎないので、鉄の在庫状況、鉄の運搬状況も併せて診断する
ことがとても重要です。具体的にはフェリチンやトランスフェリン
を見ることになりますが、ここでも重要な点があります。
それは腸内悪玉菌も鉄を必要としている、ということです。
つまり我々の細胞と悪玉菌は常に鉄を綱引きみたいに取り合って
いるんですね。腸内環境が悪化して悪玉菌優位になっていれば
それは即ち我々は鉄不足に陥るということ。その不足を見て
慌てて鉄を大量投与すればさらに悪玉菌は活気づき、不調を
招くわけです。
鉄は酸欠を改善する極めて重要なミネラルですが、正しく不足を
診断されていないこと、診断されても腸内環境と切り離されている
こと、が問題なんです。サプリなんて薬じゃないから、と安易に
摂取するのはやめた方がいいです。特に鉄を大量摂取するのは
危険な場合があります。大事なんだけど扱いが難しい、という
認識が必要です。