駅伝の強豪校が試合前に鉄剤注射をして問題になっています。繰り
返し警告をされていたようで、注射が常態化している可能性が高い
です。鉄剤はもちろんホルモン剤ではないですからドーピング指定
はされませんが、果たしてこれはアリなのか?
そもそもなぜ鉄剤を注射するかというと、推測ではありますが
ヘモグロビン(Hb)量を増やして細胞への酸素運搬能を増強し
バテにくくしよう、という目的なのではないかと思います。高地
トレーニングをするのも酸素が薄い場所で運動することでHb生成
を促すのが目的なので、“即席の高地トレ”とも言えます。
これは栄養学的には非常に危険な方法で、却って不調になることも
あります。鉄は活性酸素も産み得るミネラルで、体内濃度を厳密に
管理するシステムが備わっています。そのシステムの要になるのが
腸なのですが、注射で投与することによりこの腸の調節システム
を無視して体内濃度が上がるので、活性酸素の発生源となってしまい
これが不調を招きます。
さらに、Hbはヘム+グロビンで構成されますが、鉄が必要なのは
ヘムの方で、グロビン合成に問題があれば鉄剤を入れてもHb合成は
うまくいきません。ただ、鉄を利用する際の酵素も鉄が必要なので
運搬能が上昇しなくても利用能が上昇することで効果を感じるかも
知れませんが。
運動選手への栄養指導で鉄剤を投与することはありますが、少なく
とも正しい経路で体内に取り入れることが大切です。注射での投与は
正常の代謝にはなりません。自分で判別のできない子供に投与する
のはさらに慎重になるべきですね。