映画選びの基準は映像美?ストーリー?俳優?監督?…皆それぞれ
あるかと思いますが、「映像体験」なんて基準もこれからはアリ
かも知れん…と思わせる2作品です。
まず「パッセンジャー」。近未来、他の惑星を目指す宇宙船の中で
120年の予定が30年で冷凍睡眠から目覚めてしまった男の孤独の
物語。到着まで残り90年、つまり宇宙船の中で独りで死ぬことが
確定しているわけですね。もうこの時点でめっちゃ面白そうです。
CMなんかでもSF超大作的な紹介をされていて、もちろんそれは
それは凄い映像で、“ありそうな”未来感があって純粋に楽しいです。
ただ、この作品の核は孤独に陥った人間の行動と選択という極めて
人間性の濃いものです。カッコよい映像に装飾されていますが、かなり
哲学的かも。ある意味映像はミスリードですね。ヒロインのお色気
シーンがやたらと多いのもまたミスリード?(笑)個人的にはこの
装飾をもっと抑えて、人間性のテーマを掘り下げた方が良かった
と思います。間口を広げるために欲張りすぎたかも知れません。
なんせ制作費1億ドル以上ですからね。失敗できんわな。ストーリー
だけを追うと御都合主義的だし、SF的リアリティに欠ける部分も
あるけど、映像はすんごい楽しいです。
そして問題は「ハードコア」。アホです。バカです。大好きです。(笑)
「パッセンジャー」の30分の1以下の安い制作費で怖いものナシなのか
やりたい放題。FPS映像と言って、完全に1人称の視点だけで展開される
作りで、結構ホラー映画なんかではよく用いられるのですが、本作は虐殺
しまくりのアクション。目が覚めると失った手足に機械のパーツを装着され、
言葉をインプットされる前に狂気の超能力者に襲撃され、大脱出を
試みる所から始まります。ね?バカでしょ?(喜)
もうこのテンションが下がることなく上がり続け、破壊と虐殺が続くと
いう極めて悪趣味な映画。…なんですが、とてつもなくセンスフルで、
タランティーノ映画を観ているよう。映像には主人公の手しか写らないし、
言葉をインプットされる前という設定のせいで、言葉も発しません。これが
奏功してあたかも自分が主人公のような錯覚を覚えます。これはなかなか
得られない体験ですよ。
しかしながら、相当グロい表現があることと、FPS特有の映像の揺れ
から、二重の意味で気持ち悪くなるかも(^ ^;)相当面白いですが、
相当人を選びますね。今回ばかりは予告編を見てから判断した方が
いいでしょう。予告編でも使われている Queen の楽曲のチョイスがまた
センスフル!そもそもこの監督が関わったロシアのロックバンドの
PVから発展した企画だそうで、そのPV映像も凄いです。これ見たら
確かに映画にしたくなる。是非劇場で。