「先生、私の病名って一体何なんですか!?」
とドラマみたいに患者さんに詰め寄られることは実際には
あまりありませんが、病名なんて全然重要じゃありません。
たまに医師の中にもいますが、病名がつかないと治療が
できないというのは大きな間違いです。
大事なのは発症様式と経過です。
昨日から出現したのか(急性)、何年も前からあるのか(慢性)、
原因ははっきりしているのか(単純)、不明あるいは複数(複雑)
なのか。
昨日転んで頭を打って出た頭痛と、数年来の片頭痛では当然
治療が変わってきますよ、っちゅーことです。
急性で単純なものほど、言葉は悪いですが、医師は安心する
ものです。早く治る可能性が高いからです。もちろんこれには
生命が危ぶまれる緊急性の高いものも含まれますから、軽んじて
いいわけではありませんが、この場合最初から救急に搬送される
ことが多いので除外します。
やっかいなのは慢性で複雑なものです。これは症状が何であれ
すぐには解決しないので、医師は腰を据えて取り組むことになります。
我々の世界はある意味「治したモン勝ち」な所があるので、絶対に
この治療法しかない!なんて場合はありません。とくに慢性で複雑な
病態ほど、人それぞれで何がいいか分からないものです。
ただ一つ、共通して言えるのは、我々がしている行為は治療全体の
半分でしかないと言うことです。それ以上は立ち入れない領域というか、
患者さん本人しか変えられない部分なんです。
つまりどんな治療でも、患者さんが自分を変えよう、治そうとする意識が
あるかないかで大きく結果が変わると言うことです。患者さんのその力を
借りなければ、治癒に導くことはできないと思っています。
だから、「この治療をすれば絶対治る!」という治療者はあまり信用しない
ことにしてます。