院長室

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脂肪肝あなどるなかれ

健康診断などで、「軽い脂肪肝がありますね。」なんて言われた

ことのある方、結構いるのではないでしょうか。

「脂肪肝って要はフォアグラでしょ?」

「美食家の象徴だね!」

「この歳になれば皆多少はあるよね。」

「先生も特に処置はないって言うし。」

「健診も終わったことだし飲みに行きますか!」(笑)


かように、結構日常会話にも登場する疾患名なのですが、その

メカニズムはあまり正しく認識されていないようです。しかも

脂肪肝は “負のスパイラル” の始まりでもあるのです。


脂肪肝は肝臓に脂肪が蓄積する現象ですが、この原因は決して

脂肪の摂りすぎなのではなく、糖質過剰の結果です。糖質を摂取

すれば誰でも血糖値が上昇しますが、この上昇に反応してインスリン

が分泌されます。インスリンは血糖値を下げてくれる頼もしいヤツ、

と思われがちですが、その仕組みは糖を脂肪に変換する結果です。

ですから糖質過剰はインスリン過剰を招き脂肪合成が促進するわけ

ですね。これが脂肪肝のメカニズムです。特に我々日本人は精製

された炭水化物を好んで摂取するので、この現象が起こりやすいと

思われます。


とすると、脂肪肝は決してアラフォーの肥満気味のオッサン

(え?呼んだ?)の病気ではなく、糖質過剰になっていれば年齢や

性別は無関係に発症すると言えます。そして脂肪肝の真の恐ろしさは、

この先にあります。


糖質は摂取した量のおよそ半分をまず肝臓に備蓄します。残りの

半分が血糖となるわけですが、血糖はだいたい2時間で消費されて

しまいます。そこで肝臓の備蓄を切り崩しながら血糖値を維持する

のです。脂肪肝になっていると、この備蓄能力が低下します。つまり

摂取した糖質は肝臓に貯められないまま血中に移動するので、食後に

高血糖を招きます。これは大量のインスリン分泌を誘導します。

そして肝臓の備蓄がないためにすぐに低血糖になってしまい、短時間で

空腹感を覚え、糖質を摂取、血糖急上昇、インスリン大量分泌、

脂肪肝促進、さらに低血糖に……


こうなると1日の中で頻繁に低血糖が起きますので、食後は眠いし

だるい。この習慣が20年も続けばほぼ間違いなく糖尿病になります。

さらに低血糖時はコルチゾールというホルモンも消費されますので、

アレルギーや疲れが悪化します。ああ、考えただけで恐ろし…くない

ですか?(*o*)「軽い脂肪肝だから大丈夫。」という言葉は

「負のスパイラルの始まりでっせ。」と脳内変換して食習慣を変えて

くださいね。

2015年4月20日 月曜日

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「バードマン」

一般的にアカデミー賞受賞作というと、文学的であったり、

壮大な物語であったっり、視覚効果がとんでもなかったり、

と聞く人が納得する理由があるものです。つまり超ド級B級

アクションとか、超クールな低予算ホラーコメディ(笑)

なんていう外角低めな作品はまず選ばれないわけですよ。

本作は堂々たるアカデミー賞受賞作ですが、はっきり言って

後者に分類される異色作です。

 

あまり前情報を入れずに観に行きましたが、そんな仕様なので

僕的にはもの凄い好物でしてとても満足しました。間違っても

「タイタニック」や「アバター」的な作品をイメージして劇場に

行ってはなりませんよ。(^ ^;)ストーリーは至ってシンプルで、

若い頃「バードマン」というヒーローもので名を馳せた俳優が、

再起をかけて舞台の芝居に挑む、というだけです。そこにプライドや、

家族や、さらに演じることの本質などなどが絡むわけですが、

幹となる命題は「何を望むか?」です。

 

こう書くと、なんかどこにでもありそうな映画ですが、言葉で

説明するのが実に難しい作品です。ネタバレになるから、と

いうのもありますが、それは見方によって解釈が変わってしまう

からです。ある人にはすっきりした爽やか成功ストーリーに

見えるかも知れないし、ある人にはとても切ない孤独な話に、

ある人にはブラックコメディに写るでしょう。これこそが

監督の狙いなのかも知れません。最近の映画はあまりにも

「望まれるもの」ばかり作っていないかい?観客もそれに慣ら

されていないかい?と問いかけられているようです。

 

さらに特筆すべきは全編切れ目がないように見える撮影方法です。

いわゆる長回しというやつですが、実際には超絶技巧の編集テク

の賜物だそうです。それでも実際にワンシーンずつは長いそうです。

これによりまさにお芝居を観ているかのようなリアリティを

感じられます。調べてみたら「ゼロ・グラビティ」でも長回し

撮影をやった人でした。これを体感するだけでも価値があります。

BGMもほぼジャズドラムのみという恐るべき仕様。しかしこれも

またとても素敵な効果をもたらしています。それはエンドロールに

まで及ぶという手の込みよう。ここもまた解釈が分かれるところ

です。

 

俳優陣は主演にマイケル・キートン、周囲をエドワード・ノートン、

エマ・ストーンが固めます。みんな過去にヒーローものに出演して

忘れられているという皮肉の効いた配役。(^ ^;)けれども

その演技はとても素晴らしい。作中の台詞も量産される「大作」

映画への皮肉も盛りだくさんで映画好きはクスッとすること

請け合い。撮影方法から、脚本、構成、音楽まで想像以上に練り

込まれた作品です。記録にも記憶にも残る名作です。

2015年4月16日 木曜日

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栄養解析レポート

今年度も幾つか新しいサービスや治療を企んで(?)おり

ますが、まず第1弾として「栄養解析レポート作成」を始め

ます。当院では食事や運動などの生活習慣の指導に重きを

置いていますが、その助けとなるのが血液検査です。


色々な食事法や運動法がある中で、その人にとって何が

ベターなのか、あるいはするべきでないのか、は問診など

ではなかなか分かりません。客観的な尺度として血液データ

は雄弁にその方の現状を語ってくれます。


ただ栄養学的な説明は時に難解でまた時間もかかってしまい

ます。こちらとしても、もう少し深い説明を加えたいと思っても

そんなに長く時間は取れません。患者さんにとっても、早口で

一気に話されては混乱するばかりでしょう。そこでご希望の

方には栄養学的なレポートを作成して郵送するサービスを

採用することにしました。郵送ですので、遠方から血液検査

の結果だけ聞きに来る、なんていう面倒も省けます。


・栄養学的解説をもっと知りたい!

・聞いてもすぐ忘れちゃうので手元に置いておきたい!

・処方もないので遠方から結果だけ聞きに来るのは面倒!


こんな方にはオススメです。血液検査の際に「レポート希望」と

言って頂ければOKです。検査項目にもよりますが概ね2週間で

発送致します。但し、作成は当院で行った検査に限ります。

レポートはA4用紙3〜4ページの内容で、1回3500円です。

どうぞご利用くださいませ。(^ ^)

2015年4月13日 月曜日

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新学期、新生活

ウチの姪達もそれぞれ小学校と幼稚園に入学入園しましたが、

皆さんの中にも進学、就職、あるいは異動や転職などなど新しい

環境に身を置くことになった方がみえると思います。こういう

変化は何度経験しても不安半分、期待半分、でドキドキですよね。


東洋医学的に冬から春にかけてはあらゆるものが「目覚め」る

季節なので、これまで持っていた症状が悪化しやすい時期でも

あります。特に新たな環境での緊張と相まって、ストレスに由来

する精神的な過敏症状が出現することが多いです。不眠やイライラ、

動悸にほてり、などなど…。


漢方医学的にはこれらは「気」の異常と判断し、その症状や

所見から「気鬱」や「気逆」と診断します。特に上記のような

症状の時には柴胡、黄芩、竜骨、酸棗仁、厚朴、蘇葉なんていう

生薬が効果的なので、それらを配合する漢方薬をチョイスする

ことになります。「柴胡加竜骨牡蛎湯」なんて薬の名前を見ても

普通はチンプンカンプンですが、柴胡と竜骨が配合されている

ことから、なんとなくストレスに対応した薬なんだなぁと分かる

と思います。もちろん全てのストレスに対応はしていませんが。


それはさておき、ストレスや疲れに対して、甘い物でホッと

しようぜ的なCMをたまに見ますが、これは絶対にNGです。確かに

血糖値が上がるので元気にはなりますが、上がった速度で今度は

下がるので、低血糖を招きます。するとまた甘味が欲しくなって…

の繰り返しに陥り、ホッとするどころか症状が悪化しかねません。

いくらガッキーが「ア〜モンド〜(ニコッ)」と誘っても食べては

なりませぬ。(笑)


この季節はとかく過敏状態になりやすいので、空腹時の糖質は

避けて漢方薬で補助をする、というのが身体に優しい治療になる

と思います。

2015年4月9日 木曜日

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湿潤療法の死角

だいぶ一般にも定着してきた湿潤療法ですが、相変わらず

大病院では受け入れられないようです。当初は大学病院の

皮膚科や形成外科から「逃げて」きた患者さんが多かった

ものですが、最近は初めからネットで検索して受診される

方が殆どです。大病院は逃げていった事実を知らないし、

最初から受診されなくなったので、気付きの余地がないまま

なんでしょうね。これは何年も前から夏井先生が指摘されて

いたことですが、一向に変わる気配がありません。まあ僕

に実害はないからいいんですが。


さてそんな湿潤療法でもなかなか太刀打ちできない病態が

あります。それが慢性に経過した爪周囲炎です。ささくれ

なんかで爪の脇が化膿して腫れて痛くなるアレです。一般的

には排膿したり抗生剤使用で良くなるのですが、これを繰り返し、

慢性になって肉芽が過剰に盛り上がってしまうと途端に治り

が悪くなります。肉芽は皮膚ができる土台になるものなので、

通常はできていいんですが、過剰にできると上皮化を阻害します。


過剰肉芽にはステロイド外用がよく効くので、湿潤療法中にも

過剰肉芽に遭遇したらしばらくステロイド外用をしますが、

慢性爪周囲炎の不良肉芽は極めて反応が悪いです。恐らくこれは

爪が刺激となっていたり、そもそも体重が常にかかる部位だから

なのではないかと思います。こうなると湿潤療法で使う被覆材

をあて続けてもあまり変化がないし、結構痛いので患者さんの

日常生活動作に支障が出ます。


ここで登場するのがクエン酸。そう、あのすっぱいヤツです。

クエン酸には抗炎症効果と、収れん作用という引き締め効果が

ありこれを患部に塗布すると肉芽が縮むんですねー。もちろん

刺激となる爪があれば部分的に切除しますが、クエン酸がある

のとないのとでは、経過が全然違います。これで湿潤療法の

死角もカバーできるというものです。ただね、クエン酸を塗布

すると、とってもしみます。(^ ^;)

2015年4月6日 月曜日

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