院長室

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傷跡は残りますか?

通常のケガでもヤケドでも、大人でも子供でも共通してよく

聞かれる質問です。湿潤療法をやっていると確かに傷跡が

きれいではありますが、それはあくまで通常の治療に比較

して、ということで跡形もなくなるわけではありません。

さらに医者目線で、という条件も付け加えられるかも知れ

ません。僕たちが思う「きれい」と患者さんが思う「きれい」

には差があることもしばしばです。


さて傷跡が残るかどうか、とても知りたいことですよね。

正直僕も知りたい。(笑)湿潤療法の理屈の主座は創傷が

治る環境を整えることです。結果としてきれいに、痛みが

少なく治癒するわけであって、別に綺麗にすることを目的に

している治療法ではありません。ならば当然、傷跡が残るか

どうかはキズ側(?)の問題に帰結します。


まず第一に深さです。皮膚は新陳代謝の激しい臓器ですから、

表面の浅い傷はケガでもヤケドでもきれいに治ります。典型は

日焼けですね。新しい皮膚の細胞ができて古い細胞がめくれて

脱落するわけです。第二に感染の有無です。異物が混入したり

過湿潤になったりで感染を起こすと、組織の損傷も激しくなり

ます。第三に熱損傷の有無です。浅ければヤケドでもきれいに

治りますが、目玉焼きを冷やしても生卵に戻らないように、

タンパク質は熱の影響を非常に強く受けます。


以上を考えると、低温ヤケドがなぜ治りにくいのか、傷跡が

残りやすいのかが分かると思います。逆にこれらの要因が

あまりない場合は傷跡が残りにくいと考えて良さそうです。

でもね、実はやはりそうは問屋が卸さないのです。一見して治り

が良さそうなのに瘢痕になったり色素沈着が残ったり、という

こともあります。これは何故か。もうそれは皮膚の栄養の問題に

なります。皮膚の代謝が盛んであるということは、それだけ材料

も必要ということです。材料が不足していたり上手に利用できない

人は必然的に浅い傷でも跡が残るということです。


では皮膚の代謝に必要な栄養とは何か?個人差があるので一言

では言えませんが、亜鉛と鉄が大きく関与するのは間違いない

です。これらのミネラルが不足している人は普段から乾燥肌で

あったり、湿疹ができやすかったりと不調があることが多いですね。

亜鉛も鉄も赤身の肉で補えますので、傷跡を残さないためには

食事を見直すことも有用です。

2015年5月11日 月曜日

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善玉悪玉

皆さん、連休は有意義でしたでしょうか?僕もしばらく振りに

GWを全休にしてゆっくりできました。連休になるとついつい

食べ過ぎてしまう、外食が多くなってしまう、という方も多い

と思います。でも最近、日本動脈硬化学会が「血中コレステロール

値は食事とは無関係」と明言しましたので、安心して良いの

かも?!


まあ医学では既存の正論がひっくり返ることは日常茶飯事で、

それを認めようとしないことが問題なのであって、「言ってる

ことが違う!」のはさして問題ではありません。コレステロール

値についても昨今かなり認識が「ひっくり返って」いる良い例

です。多分これからは「悪玉、善玉」という呼び方も無くなる

でしょう。


悪玉コレステロールと通称されているのはLDLコレステロール

ですが、LDLの最後の「L」は Lipoprotein(リポ蛋白) のことで

実は血中コレステロールというのは、コレステロールそのものを

測定しているのではなく、タンパク質を測定しているんですよ。

で、LDLはコレステロールを乗っけて細胞に届けるので、悪玉と

言われているだけなのです。逆にHDLはコレステロールを回収して

肝臓に届けるタンパク質なので善玉と言われているに過ぎません。

そしてコレステロールはそのほとんどが肝臓で作られるので、

食べ物の中のコレステロール量とは相関しません。


コレステロールはLDLによって細胞に届けられ、細胞の膜の成分に

なったり、ホルモン合成に使用されたり、ビタミンDになったりと

人体では極めて重要な物質です。コレステロールの不足については

これまで全く無頓着でしたが、アレルギーにも不妊にも疲れにも

関係するので今後は大きな方向転換がなされることでしょう。


恥ずかしながら、僕も分子栄養学を学ぶまでこのことを知らなかった

ので別に自慢にもなりませんが、「悪玉コレステロールが上がると

大変だから油物を控えましょう!」というのがいかにトンチンカン

か分かりますよね。ただ、動脈硬化の血管壁にもっさりコレステロール

が付着しているのは事実です。この理由は「酸化」です。酸化した

コレステロールは異物として排除されるのですが、過剰になると血管に

くっつきます。ですから、これからの指導は「摂りすぎ注意!」なの

ではなく「酸化注意!」にすべきです。そして酸化とはサビること。

要は過剰なストレスですね。


連休中しっかり休むと、こんな長文もものともせず書けちゃったり

しているように(^皿^)、都度しっかり休んで身体をサビさせない、

あるいは意識してサビ落としをしてまた仕事に励みましょう!

2015年5月7日 木曜日

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ハイドロコロイドの適応

「しみない、剥がれない、濡れても平気!薬も不要!」でおなじみ

(でもないか ^ ^;)のキズパワーパッド、随分と一般にも浸透して

いるようで、患者さんが自己処置で使う市販品の中ではかなり頻用

されている印象です。同時に、キズパワーパッドが原因と思われる

障害も増えています。


キズパワーパッドはハイドロコロイドという素材なのですが、確かに

これは湿潤療法を行う上で、なくてはならない被覆材料です。ただ

このハイドロコロイド、密封性は高い反面吸収性が貧弱なのが大きな

弱点です。そもそもキズからの浸出液には創治癒に必要な成分が

含まれているので、密封して浸出液を逃がさないようにすれば、

早く、痛くなく、きれいに治ると言うのがこの素材を治療に使う

理屈です。


なので、逆に浸出液が多くてジュクジュクしているキズに貼ると

容易に過湿潤状態を招き、皮膚のかぶれ、かゆみ、さらには感染の

原因になります。感染してしまうとキズ周辺が赤く腫れて痛みも出ます。

ひどいと膿が出たり、とびひにもなり得ます。こうなると抗生剤や

抗炎症剤が必要です。まだ湿潤療法が今ほど市民権を得ていない時は、

だから湿潤療法は危険だと攻撃されたもんですよ。このジュクジュク

状態になる代表がヤケドです。ヤケドにハイドロコロイドが向かない

のがお分かり頂けるでしょう。


テレビCMでも「乾燥したあかぎれ」に使用しているところがミソ

ですね。では乾燥したキズならとても良いかというと、実はここも

一工夫必要。ハイドロコロイドのもう一つ大きな弱点が接着性が強い、

ということです。まぁだから剥がれにくいんですが。乾燥したあかぎれ

に貼ると確かに軽度のものはきれいに治りますが、結構深くて大きい

と、ハイドロコロイドを剥がす時にまた割れます。これガーゼ並みに

拷問です。(*o*)なので、乾燥したキズに使う場合でも、キズの上に

ちょん、とワセリンを乗っけておいてから貼ると剥がす時に痛く

ありません。


このハイドロコロイドの弱点を少し改善したのが瑞光メディカルの

「ハイドロコロイド包帯」です。決してヤケドに使えるようになった

訳ではありませんが、吸収性を上げ、粘着性を下げているためトラブル

が少なくなります。またキズパワーパッドより安価なので、常備品と

しても優秀です。ウチでもお分けしていますが、ネットでも購入可能

ですので、これからの季節外出も増えるでしょうから持っておいて

損はないでしょう。

2015年4月30日 木曜日

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「証」とはなんぞ?

「方証相対」、「随証治療」、「虚証」に「葛根湯証」など

漢方の教科書を開くとかなりの頻度で「証」という漢字に

出くわします。しかも「証」が大事なんだぞ!と力説していたり

します。「証」ってなんでしょう?(いや、不可抗力ですよ)


まあ一般の方がここで悩むことはまず無いでしょうけど、

我々医療関係者は結構ここでつまずきます。学生時代に

漢方の講義がないので(現在は若干あるそうです)、就職

してから独学で学ぶ人が殆どなんですが、どの教科書も

「証」を重要視しており、先に挙げたような熟語のオンパレード

なので、せっかくやる気があってもそっと教科書を閉じて

本棚の飾りになることもしばしば。(^ ^;)これはとても

もったいないです。ズバリ!「証」とは「状態」のことです。


「方証相対」とは「方」が薬のことなので、「状態」と「薬」

が対応しているよ、という意味ですし、「随証治療」とは

「状態」に沿って治療をします、という意味です。「虚証」は

「虚」の状態、というだけのことだし、「葛根湯証」というのは

「葛根湯が効く状態」ということなんですね。いやーカンタン

でしょ?


西洋医学は例えば「アトピー性皮膚炎」とか「腰部脊柱管狭窄症」

などの「病名」で薬を決めたりするので、この「状態」で処方を

決めることに慣れていないだけのことです。翻って漢方医学は

常に「状態」ありきです。「アトピー性皮膚炎」でもジュクジュク

なのか、乾いているのか、赤いのか紫なのか…などなど。

そう考えると「方証相対」や「随証治療」が当たり前の言葉に

見えてくるから不思議です。


ドラッグストアや通販でも漢方薬が入手できる時代になり、

利便性は増しましたが、ラベルには「花粉症に」とか「肥満に」

って書いてありますよね。これは「証」を無視しているわけで、

当然効果にバラツキが出てくるわけです。「○○状態にこの漢方!」

なんて発売されたら新しいですね。(^ ^)

2015年4月27日 月曜日

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腹の中は身体の外

最近参加したセミナーでの印象的な一言です。これは、

食べたものは吸収されて初めて栄養となるのであって、

食べただけで安心してはいけないよ、ということです。

とても重要なことです。分子栄養学では血液検査から

栄養の過不足を推理する手法を用いますが、どうしても

ビタミンやミネラルの不足にばかり目が行き、それを

補うことに拘泥してしまう傾向があります。


もちろんそれが功を奏して、とても良くなることも多々

あるのですが、一向に改善しない場合もあります。そんな

時は、足した物が吸収されていないと考えるべきで、

まさに足してもまだ「身体の外」にある状態なんですね。


そうなると栄養の不足はさておき、まずは上手に吸収

されるようにアプローチを変えねばなりません。吸収の

妨げになる要因としては、消化酵素が出ていない、吸収の

現場である腸管壁に問題がある、などです。これらは

血液検査ではなかなか判断できないので、患者さんの

自覚症状を頼りに try and error を繰り返しながら適切な

提案に練り上げていく過程が必要です。


それでも、全ての人に共通してやるべきことがあります。

それは過食と早食いをしないこと。腸は皮膚の延長で

重要な外敵からのバリアでありながら必要な物は通すと

いう、いわば税関のようなもの。もの凄い仕事量なんです。

これを疲れさせてしまっては本来の仕事がままならなくなる

のは自明ですね。過食や早食いは腸にもの凄い負担を強い

ます。腸の健康は全ての基本で、乳酸菌やビフィズス菌も

大切ですが、さらに前提として疲れさせないことがとても

重要です。


この発想は食事のみならず、当然薬にも当てはまることで、

不要な薬剤は害にしかなりません。食事はゆっくり、薬は

最小限、を合い言葉にしましょう!

2015年4月23日 木曜日

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