院長室

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癌と闘う③

癌の性質を知れば闘いも有利に進む。DNA複製のミスプリント

によって癌が発生することは理解頂けたと思いますが、では、

不幸にも癌が発生してしまったら打つ手は無いのかと言ったら

そんなことはありません。癌が大きくなるのにもちゃんとルール

があるからです。


癌は基本的にゆっくり大きくなります。約1cmの大きさになる

のにも10〜15年かかると言われています。早期癌が喜ばれる

と書きましたが、現状の医療技術では1mmの癌は発見できません。

つまり我々が画像検査で見つけることができるよりも、はるか

前に癌は発生しているのですね。


では癌はどうやって大きくなるか。キーワードは「糖」です。

癌細胞は正常細胞よりも5倍以上の糖を必要とします。超甘党

なんです。(笑)その糖をエネルギーとしてタンパク質を材料に

どんどん大きくなります。ただここでも特殊な性質があって、

癌細胞は人間が食べた食事中のタンパク質は利用できません。

人間の体タンパクを分解して利用します。人間の体でタンパク質

が豊富なのが血液と筋肉です。特に筋肉は糖に変換できるタンパク

質を多く含むので癌細胞にとっては一石二鳥です。癌患者が例外

なく痩せるのは筋肉を癌細胞に持って行かれるからです。同様の

機序で血液も分解されるので、いわゆる貧血も必発です。


筋肉が減ればカロリー不足になって体温が下がるので、冷え症に

なるし、酵素活性は落ちるしで、とてもしんどくなります。また

貧血で体中が酸欠になりますから、冷えに拍車がかかって

凝りや立ちくらみや疲れも増幅します。俳優の今井雅之さんの

会見を覚えている方も多いと思いますが、痩せて立つことも

できず、声を出すのもやっとでしたね。それは癌によって筋肉と

血液を奪われたがためです。


癌は日本人にとても多く、死に直結する怖い病ですが、癌細胞

そのものに殺されるのではなく、癌細胞に貴重なタンパク質を

根こそぎ持って行かれて栄養失調が原因で死に至るのです。

2015年7月20日 月曜日

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「バケモノの子」

宮崎駿監督が引退された今、日本のアニメ映画の担い手と

しての責を負ってしまった感のある細田守監督最新作です。

今作でまだ4作目なのに、他にヒットメイカーがいない、

というか、タモロスならぬ宮崎ロスに陥っているアニメ

業界では何とか変わる盟主が欲しい空気が漂っているために

無理矢理に押し上げられ、結果全国民受けする作品を作る

しかなかったようなやるせなさを感じます。ちょっと同情。

 

前作「おおかみこどもの雨と雪」では母子のお話でしたが、

今作は父子のお話。安直〜!と思ってしまうけど、師弟ムービー

でもありバディムービーでもあるという点ではまあ幅はあるの

かな。不幸な生い立ちから孤独を感じ、排他的になった

主人公が新たに獲得する仲間達との成長ストーリーなのですが、

まあ、全ての演出が既出感満載なのがいけない。金太郎飴の

ようにどこから切っても新鮮味がないので、せっかくの

美麗なアニメも、アクションシーンもオドロキが少なくなって

しまっています。

 

声優陣も最近の大河ドラマ宜しく、旬の豪華俳優陣で構成されて

います。大河もアニメもこんなことしてたら新しい才能を伸ばせ

ないと思うのですが、まあ話題性がある方がスポンサーも付き

やすいでしょうから、仕方がないのかな。大泉洋ちゃんが活躍

するのは嬉しいけれど、この映画は断るべきだったような。

でもベタなストーリーを力技で盛り上げてくれた役所広司さんや、

マルチな才能を発揮し続ける宮崎あおいさんはさすがでした。

驚いたのは広瀬すずさん。何このコ?!すごいじゃん。ネット

では何か叩かれてましたが、こんなん見せられたら声優の卵達は

皆ヤケ酒でしょうな。(^ ^;)

 

なんかこき下ろしてますが、平均点以上の感動は得られますので、

僕の「無難嫌い」のメガネを通した感想と思ってください。ああ、

知ってますか。(笑)前作での胸が苦しくなるような感動や、

やっかみに似た誹謗はなさそうな今作ですが、多分監督自身も

ジブリ化するのは避けたいところでしょうから、次作の “とんがり”

の前フリ的位置づけ作として納得しておくとしよう。

2015年7月16日 木曜日

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減塩と減煙と

熱中症対策はこれまで何度も話題にしてきましたが、

猛暑日の昨日、早速高齢者が熱中症で亡くなられた

とのニュースが。もともと体内の水分量が少ない上に

口渇を感じにくくなる高齢者では、本当にちょっと

した脱水でもひどい症状に陥ります。高齢者がいる

ご家庭では、重々注意してください。


そしてまだまだ誤解が多いのが塩に対する意識です。

高血圧症で治療中の方は減塩することが当然と思って

いるようですが、高血圧症すべてが塩で悪化するわけ

ではないですし、この季節は思っている以上に汗で

塩は喪失します。心配せず摂るべきですが、精製

された食塩は他のミネラルが削ぎ落とされているので、

粗塩や岩塩なんかに変えるのが良いと思います。にがり

液でももちろん良いです。あまり摂りすぎに過敏に

ならず、せっせと補給してください。


反面、季節年齢性別に関係なく減らした方が良いのが

喫煙です。僕も昔はスモーカーだったので、タバコが

欲しくなるシチュエーションは理解できます。でも

だからこそ分かるのは、意外と “無駄な1本” もあると

いうこと。時間つぶし的に、口が寂しくて、とついつい

吸ってしまう1本から減らしていけば、何とか減煙

できると思います。


医「タバコ減らしましょう。色々治りにくくなりますよ。」

患「分かってはいるんだけど、なかなか難しいなぁ。」

医「薬だけでは却って副作用も怖いですから。」

患「ええっ!何か予防策はありますか?」

医「いや、だからタバコを…」

患「分かっては…」(略)

これではぐるぐる回ってバターになってしまうので(笑)、

時間もお金も節約できて、身体も元気になる減煙はすぐに

でも始めて欲しいです。

2015年7月13日 月曜日

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癌と闘う②

プロ野球ではスコアラーさんが他球団のデータを集めて

事前に対策を練る、なんてことは今や常識となっていますが、

癌治療においても、闘う前に敵を知ることが極めて重要

です。癌細胞はどんな特徴があるのでしょうか。


まず大前提として癌細胞は我々の細胞から産まれるもので

ある、ということ。細菌やウィルスみたいに体外から侵入

して来るものではありません。なぜ癌細胞が産まれるかと

言うと、細胞分裂の際にDNAのミスプリントが起こるから

です。細胞分裂はDNAを複製して増殖するわけですが、

この時の複製に問題があり不良品ができてしまう、これが

癌細胞です。


当然複製が盛んであればあるほど、ミスプリントの頻度は

上昇するわけで、細胞の入れ替わりの激しい腸管や皮膚に

癌が多いのはこのためです。逆に入れ替わりがあまり起こら

ない心臓なんかは癌が少ない臓器と言えます。


このミスプリントは正常人でも起こり得ます。正常人では

不良品を排除するシステムがあるので、そう簡単に癌には

ならないわけですが、この排除する仕組みが加齢で低下

したり、はたまた酸化ストレスで低下すると癌が生き残り

増殖し始めるのです。


このストレスが厄介者で、若くして発癌する方のほとんどは

ストレスで癌細胞を除去できないのが原因と思われます。

先ほど腸管は癌が多いと書きましたが、大腸癌や胃癌は

よく耳にするけれど、小腸癌って聞いたこと無いですよね。

これは小腸が脳から独立しており、ストレスの影響を受け

にくいからだと考えられます。げに恐ろしきストレスよ。

ギリシア人って癌が少ないのかなぁ。失言。


癌の予防にはストレス対策がとても重要になると言うことが

お分かり頂けると思います。日本人は勤勉で忠実な人種と

言われますが、それが反面、癌発生頻度を上げていると

言えるかも知れません。

2015年7月9日 木曜日

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癌と闘う①

「癌」はとても怖いイメージがあると思いますが、実は

日本人は世界でも癌発生率トップクラスで、生活習慣病と

同じくらい身近な病気であるとも言えます。しかし生活

習慣病と違って癌と診断されれば、即ち「死」が連想され

ます。癌の早期発見が喜ばれるのは、死亡率が低いためです。


発生部位による差もあり、肺癌や膵臓癌は他の癌に比べて

平均余命が短かかったり、前立腺癌や乳癌では再発のない

まま何十年も生活できたりします。ではこれだけ癌が身近な

日本では癌治療が進歩しているかと言うと、全くそうでは

ないのが悲しいところです。


癌の治療と言えば、手術、放射線、抗がん剤です。病状に

よっては全て行うこともあります。そしてこれらでは歯止め

が効かなくなると「仕方がない」と言われ、いわゆる終末

医療を勧められます。それを一種の「終活」と言えば聞こえ

は良いですが、ひたすら副作用の強い抗がん剤を使うとか、

意識朦朧としながら麻薬で痛みをコントロールするとか、

実際に日常生活の質はかなり低下します。


癌は確かに怖い病気ですが、その性格を知って十分な対策を

講じれば、少なくとも薬に頼って生活の質を落とすことはない

と思っています。自由診療でしか認められていない未承認の

薬を保険で使えるように、との運動も見られますが、これも

上記治療の延長でしかないでしょう。


高齢者が増え、癌患者が増えるだろうことは分かりきって

います。また医療保険も危うい現状では、高額な治療は早々に

制限される懸念もあります。そうなる前に「癌」をよく知る

ことが日本の医療の将来に大きく貢献するだろうと思います。

2015年7月6日 月曜日

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