4回目にしてもうマニアックな処方になりますが(^ ^;)、実は
ウチでは頻用している漢方薬です。関節痛や筋肉痛に有効だから
です。
・麻杏薏甘湯(マキョウヨクカントウ 78番)
構成:麻黄4g+杏仁3g+薏苡仁10g+甘草2g
お気づきの方もいるかも知れませんが、この漢方薬の名前は
構成する生薬4つの頭文字を並べたものです。そして前回紹介
した麻黄湯とは近似処方なんです。麻黄湯は麻黄+杏仁+桂皮
+甘草でしたから、桂皮が薏苡仁になっているだけなんですね。
生薬が一つ変わっただけで、風邪薬が鎮痛薬になるのですから
不思議です。というのも麻黄+桂皮では解熱作用がありますが、
麻黄+薏苡仁となると鎮痛作用が強くなるからです。このように
組合せで効能が変化するのも漢方薬の特徴です。ちなみに桂皮は
ないものの咽頭痛を抑える杏仁は入っているので78番が風邪
に使えないわけではありません。悪寒発熱と共に筋肉痛があれば
むしろ麻黄湯より良いかも知れません。
同様の構成の漢方薬がまだあります。
・麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ 55番)
構成:麻黄4g+杏仁4g+甘草2g+石膏10g
これも生薬の頭文字を並べた命名で麻黄湯の桂皮が石膏になった
だけです。しかし麻黄+石膏は水分を引き込む作用があるので
むくみが得意な薬に変わります。喘息に使用されることの多い
漢方薬なんですが、それは喘息発作時気道粘膜がむくむことが
あるからです。石膏は冷やす効果が強いので、麻黄同様、あまり
常用することはありません。冷やすことを利用して皮膚炎や
関節炎に使用することもあります。
この55番に桑白皮(ソウハクヒ)という生薬を足すと五虎湯
(ゴコトウ 95番)という薬になります。桑白皮も鎮咳の生薬
なので、より呼吸器症状の強い方向けになります。95番も
麻黄湯近似処方であることが分かりますね。麻黄は組合せに
よって効能が変化するので応用範囲が広いですが、副作用も
結構あるので過量は禁物です。関節痛と咳があるから78番+
55番で!なんてやると麻黄を8gも摂ることになるので危険
です。それを防ぐためにも生薬構成を知ることが大事なんです。