漢方薬紹介の2回目です。今回は落語のネタにもなっているほど
有名な葛根湯です。葛根湯を風邪薬として認識していますか?
はたまた肩こりの薬でしょうか?それも生薬の構成から見ると
腑に落ちると思います。
・葛根湯(カッコントウ 1番)
構成:
葛根4g+麻黄3g+桂皮2g+芍薬2g+甘草2g+大棗3g+生姜2g
上記の通り、葛根湯は7種類の生薬から構成されます。葛根湯の
効果はそれぞれの合算、ではあるのですが桂皮以降の5種類で
桂枝湯(ケイシトウ 45番)という薬になります。これが悪寒の
ある風邪の初期に使われるんですね。配合量は多少違いますが。
つまり葛根湯は桂枝湯に葛根と麻黄を加味した薬、と見ること
ができるわけです。麻黄は桂皮と組み合わさることで発汗作用を
強め、桂枝湯の効果を高めます。発汗させることで解熱させます
ので発熱時に使えますね。発汗し過ぎて脱水になることの予防策
として潤す効果のある甘草が配合されています。既に発汗がある
場合には使いにくい、というのも分かります。麻黄を中心に
据えた方剤を「麻黄剤」と呼んだりしますが、大抵は脱水予防
に甘草が併用されています。葛根湯も麻黄剤の一つです。
では葛根はどんな効果を持つのかというと、後頚部〜背部の鎮痛
です。これが肩こりに使われる所以です。さらに少量ではあり
ますが芍薬甘草湯(芍薬+甘草 68番)も配合されています
ので、鎮痛効果を高めることになっています。以上を考慮すると、
葛根湯が効く風邪は汗が出ていなくて、発熱悪寒があり、筋肉痛
や頭痛があるタイプ、ということになります。また、咽頭痛や咳の
生薬は配合されていないので、そういう場合は他の漢方薬にするか、
何か追加して対応することになります。どんな風邪でも効くわけ
ではないんですね。
ちなみに甘草+大棗+生姜の組合せは消化器系を助ける効果が
あるので、副作用防止の意味で様々な漢方薬に配合されています。
麻黄は過量になると胃部不快が出ることがあるので、葛根湯に
入っているのも頷けます。ちなみにちなみに、この麻黄の副作用
を嫌って桂枝湯に葛根だけ追加した桂枝加葛根湯という薬もあり
ます。これなら安全ではありますが風邪にはあまり効かなくなり
ます。ウチでは採用してませんが。
葛根湯の他にも桂枝湯からの派生処方は結構あります。それだけ
昔から重宝された薬だったんでしょうね。