最近の院長室が栄養療法に偏りつつあるのを少し反省して、
今年は漢方薬にもっと言及していこうと思います。かねてから
言っている通り漢方薬は生薬の集合体で、それぞれの生薬の
効果効能の合算がその漢方薬の効き所となります。つまり構成
する生薬の特徴を知ることが、漢方の効かせやすさに直結
するわけです。
まず今回は初回ということで一番シンプルな芍薬甘草湯を取り
上げてみます。カッコ内の番号は医療用エキス剤の番号です。
・芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ 68番)
構成:芍薬6g+甘草6g
ご存知、こむら返りの特効薬と言われている漢方薬です。その
名の通り構成生薬は芍薬と甘草のみ、という最もシンプルな
漢方薬です。こむら返りのみならず、筋肉のけいれんを止める
のに長けているので、寝違いやぎっくり腰、しゃっくりや
生理痛なんかにもよく使用されます。
ただ、この筋肉に対する効果を有するのは芍薬であって甘草
ではないんですね。ではなぜ甘草が入っているのか?がこの
漢方薬のポイントになります。甘草は咽頭痛の薬として使われて
きましたが、同時に身体を潤す効果があります。ゆえに
芍薬甘草湯には「身体を潤しながら筋肉の緊張を取る」という
処方意図があるのが分かります。ということは脱水に伴う筋肉
の痛みに有効、となります。運動後のこむら返りとか透析後の
痛みが最も良い適応になるわけですね。同時に甘草が過量に
なると潤しすぎることになり、むくみや高血圧といった副作用
が出るわけです。
高齢者は生理的に脱水傾向にあるので芍薬甘草湯がよく効く
場合は多いのですが、予防効果までは無いし、むくみや高血圧
の可能性があるので基本的には常用する薬ではありません。
このように漢方薬の効果も副作用も、構成生薬を知ることで
より明確になります。全部の漢方薬を紹介するのは無理ですが
(なんせ140種類以上ある ^ ^;)、使用頻度の高いものを
こんな風に紹介していこうと思います。