院長室

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「夢売るふたり」

ひそかに今年最も期待していた映画「夢売るふたり」を観てきました。

何がそんなに期待させちゃうかっていうと、ひとえに監督の西川美和氏

のセンスにただならぬものを感じるからです。実は僕と同い年で、全ての

作品が自身のオリジナル脚本であることも好感が持てます。女性であり

ながら男兄弟の深層心理を描いた「ゆれる」はもう本当にすごい作品でした。

もともと寡作で、今作でまだ4作目なのですが、どれもが日本人特独の

心理を見事に描いています。

 

今作は真面目に働いていた夫婦が店を火事で無くしてしまったことから

結婚詐欺に走るというストーリーで、かつR15指定納得のエグい濡れ場も

あるため、受け入れられない人も多いと思います。とは言え、どれも

しっかり意味のあるシーンで、本当に上手いなと思います。観終わった後は

グッタリです。(笑)

 

きっと経験したこともないのに、どうやってこんな演出ができるのか不思議

でしょうがないですが、監督の要求に見事に応えた主演の松たか子もまた

とんでもないです。「告白」の怪演っぷりにも寒気がしましたが、今作の

夫を全力で支える良妻の裏側に潜む闇、なんていう難しい題材を実に見事に

演じています。いやー、すげぇ女優さんだ。周りの役者さん達も総じて上手

でしたが、松さんが凄すぎてややかすみます。

 

この監督の作品はどれも賛否両論で、最大公約数的な作品が嫌いな僕には

もともとマッチしているわけですが(笑)、思うにこれはエンターテインメント

の枠を軽く超越してしまっているからなのかも知れません。観る人に秘部を

さらけ出すような羞恥と嫌悪を感じさせてしまう、というか「そこにメス

入れなくても…」みたいな感情にさせてしまうんでしょうね。ま、そこが

監督が描きたい日本人的感覚でもあると思うのですが。

ともかく、客を選びはしますが僕にはとても満足できる作品でした。

次作はまた3年後かな?(^ ^)

2012年9月20日 木曜日

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「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」

テレビCMで「ハリウッドよ、これも映画だ!」なんて宣伝していた

時点でかなりハラハラしていたんですが(笑)、まあなんとか観れる

作品でした。

 

とにかく前作がひどすぎたので、せめて最終回くらいはきれいに、潔く(?)

終わってくれと願っていましたが、着地は成功と見ていいでしょう。

劇場版の回を重ねる毎にいたずらにスケールを大きくしてしまった感のある

このシリーズですが、当初からの「個人vs組織」というテーマに絞ったのが

良かったと思います。加えて官僚組織の隠蔽体質にも焦点を当てたところは

皮肉が効いててよかったです。青島刑事も室井管理官もすみれさんもはっきり

言ってもう見飽きてるので(^ ^;)新鮮さはこれっぽっちもないのですが、

それでも過去の映像をふんだんに使ったオープニングはトリハダもんです。

エンターテインメントとしてなら十分に楽しめる作品です。

 

ただ、テーマの掘り下げはどうだったかと言うと、これは物足りない。劇場版

第2作で「リーダーはおらず個人の判断で動く組織」と対決し典型的な

トップダウン組織である警察に波紋を広げたのですが、そこからは何も進歩

していない、というか気持ちよくスルーしてしまっているのが残念。結局

また私怨をからめてテーマをナアナアにしてしまう愚を犯しているのです。

小栗旬はいい役者だし、内田有紀はかわいいし(ドサクサ ^ ^)、俳優陣は

頑張っているだけに、この脚本はチトもったいない。最後なんだしもう少し

青島刑事にハジけさせて欲しかったなぁ。事件のオチでは別な人がハジけてた

けど。

 

何年かしたら、あっさりスピンオフ作品とかで復活しそうですが、キャラ的にも

テーマ的にも限界感がありました。けれどもコミカルかつシリアスで疾走感の

あるこの作品は、邦画界に多大な影響を与えたことは間違いありません。

あのテーマ曲が流れると無条件でワクワクします。もう条件反射。(笑)

今作、細部は驚くほど雑ですが、最後の青島と室井のやりとりは感慨深いもんが

あります。なんせ15年ですもんね。

あ、ちなみに僕は織田裕二ファンです。念のため。

 

あと、これだけは注意。CMではあたかも青島が拳銃で撃たれたような描写が

ありますが、全然違います。ああいうズルい宣伝法はカンベンして欲しいです。

2012年9月13日 木曜日

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「桐島、部活やめるってよ」

人類の起源を追って地球外生命体と遭遇したり、超人達が

力を合わせて侵略者から地球を守るといった映画とは真逆の

超スモールなスケールの映画ですが、なかなかどうして

デキはかなりのものでした。

 

神木隆之介君が出演しているせいか、高校が舞台であるせいか、

若い女の子が多く、ちびっ子に囲まれて観た「のび太と鉄人兵団」

以来の居心地の悪さを感じながらの鑑賞でしたが(笑)、まあ

内容はタイトル以上のことは起こりません。成績優秀、スポーツ

万能、カリスマ的存在の桐島君が突然姿を見せなくなり、音信

不通になる数日間の様子を描いただけです。

 

でも高校という、小さいながらも数々の「掟」がある社会では

このカリスマの損失は様々な影響を及ぼすわけです。一種の階級

制度みたいなものを赤裸々に表現しています。鑑賞したら誰しも

自分の高校時代に思いをはせ、懐かしさやら恥ずかしやらの何とも

言えない感覚を味わうこと請け合いです。説明を省き、同じ場面を

違う登場人物からの視点で何度も描く手法で、全く飽きさせませんし

非常に無駄のないセンスフルな作品です。俳優陣もみんな上手かった。

将来の邦画界を背負う人達なんでしょうな。

 

つまるところ、鑑賞に来ていた少女達には全く不向きな、オトナ

向けの映画です。上映終了後、「はあ?よくわかんなーい!」とか

言ってた女の子たちに「ワケわかんねーだろ!(by ゴー☆ジャス)」

と(心の中で)つぶやきニヤリとして帰ってきましたトサ。

2012年8月30日 木曜日

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「おおかみこどもの雨と雪」

まさかの2回連続映画レビューですが、それも致し方ないほどの傑作映画

でした。テレビCMを見ると「好きになった人は狼男でした。」なんて

言ってるのでファンタジーかと思っている人、損してます!批評サイト

なんかで「幼女に猫耳で萌え狙いのあざとさ」なんて書かれてるので敬遠

してる人、損してます!

 

確かに狼男が実在することが前提になっていますのでファンタジーでは

ありますし、かわいい子供がちっちゃいオオカミに変身するのは萌え

たりもするでしょう。(僕には分かりませんが ^ ^;)

しかしこのアニメはそんな些細で品のない寸評なんて消し飛ばすほどの

破壊力を秘めています。内容は一言で言えば「母と子供の成長記」で

しょうか。

 

よくある題材のように思えますが、表現の仕方が押しつけがましくなく、

また極力説明を排除することにより詩的な雰囲気を醸し出しています。

そしてこのアニメの自然のみずみずしいこと。人間と自然をとても

愛おしく描けていることに感嘆します。終始主人公達との距離感を保って

いるのも素晴らしい。この手のテーマだとついつい主人公の口を借りて、

必要以上に愛を叫ぶ(笑)ものですが、そういう興ざめをさせていない

ところに好感が持てるんですよね。

母役の声優は宮崎あおいさんでしたが、やはりこの人は上手い。間違い

なくこの映画の完成度を上げていました。

 

はっきり言って全然子供向けではありませんが、でも子供にはアンパンマン

よりこちらを見て欲しいですね。(笑)

「ダークナイト ライジング」と今作で、早くも今年度の洋画邦画No.1が

出そろってしまった感があります。「踊る大捜査線〜FINAL」はダメでしょう。

観るけど。(^皿^)

 

いやしかし、宮崎駿監督の後継者はもしかしたらこの細田守監督かも…!

吾朗さんでなく。(悲)

 

2012年8月9日 木曜日

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「ダークナイト ライジング」

そもそも僕はバットマンのファンでもないし、クリストファー・ノーラン

監督のファンでもなく、単に主演のクリスチャン・ベイルが好きだから

このノーラン監督による「新バットマン3部作」を観ることにしたんです

よね。いや〜、最初の「バットマン ビギンズ」から観てて本当に良かった。(笑)

 

正直「ビギンズ」はそれほど面白くなかったんですが、2作目「ダークナイト」

で大化けします。なぜ「バットマン」ではなく「ダークナイト」という題名

になったのかを考えると、大変に深く考えさせられる傑作でした。敵役の

故ヒース・レジャーも神がかり的でしたけど。

 

で、今作。前作が傑作で、しかも今回で完結となると、これまた期待と不安

で異常なプレッシャーなわけですよ。(って僕が作ったワケじゃないけども。)

「上映時間の長い映画に良作なし」が持論の僕にとっては、165分は不安

材料でしたがこれは全くの杞憂に終わりました。良質の映画が2本分つまって

いるといった感じです。(苦しい言い訳? ^ ^;)

 

世論に訴えかけるようなスケールの前作に比べると、私憤に終始する今作は

前作に劣ると見る向きもあるようですが、きちんと “ダークナイト” の人生を

終わらせて、しかも最後にサプライズも用意するという離れ業を成し遂げた

今作は僕にとっては前作以上の満足感です。映像も大変な情報量で、今シリーズ

常連のゲイリー・オールドマンやマイケル・ケインの好演も光り、紛う事なき

傑作です。アン・ハサウェイ演じるキャット・ウーマンにも惚れちまうって

もんですよ。(ええっ!?)

 

観終わった直後に「もう1回観たい!」って思える数少ない映画です。ちなみに

会員更新して「次回1000円チケット」をもらったから本当に観に行くと思う。(笑)

「ビギンズ」「ダークナイト」未見の方は、オリンピックを犠牲にしてでも

鑑賞してから本作を観てください!(^ ^)

2012年8月6日 月曜日

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