ひそかに今年最も期待していた映画「夢売るふたり」を観てきました。
何がそんなに期待させちゃうかっていうと、ひとえに監督の西川美和氏
のセンスにただならぬものを感じるからです。実は僕と同い年で、全ての
作品が自身のオリジナル脚本であることも好感が持てます。女性であり
ながら男兄弟の深層心理を描いた「ゆれる」はもう本当にすごい作品でした。
もともと寡作で、今作でまだ4作目なのですが、どれもが日本人特独の
心理を見事に描いています。
今作は真面目に働いていた夫婦が店を火事で無くしてしまったことから
結婚詐欺に走るというストーリーで、かつR15指定納得のエグい濡れ場も
あるため、受け入れられない人も多いと思います。とは言え、どれも
しっかり意味のあるシーンで、本当に上手いなと思います。観終わった後は
グッタリです。(笑)
きっと経験したこともないのに、どうやってこんな演出ができるのか不思議
でしょうがないですが、監督の要求に見事に応えた主演の松たか子もまた
とんでもないです。「告白」の怪演っぷりにも寒気がしましたが、今作の
夫を全力で支える良妻の裏側に潜む闇、なんていう難しい題材を実に見事に
演じています。いやー、すげぇ女優さんだ。周りの役者さん達も総じて上手
でしたが、松さんが凄すぎてややかすみます。
この監督の作品はどれも賛否両論で、最大公約数的な作品が嫌いな僕には
もともとマッチしているわけですが(笑)、思うにこれはエンターテインメント
の枠を軽く超越してしまっているからなのかも知れません。観る人に秘部を
さらけ出すような羞恥と嫌悪を感じさせてしまう、というか「そこにメス
入れなくても…」みたいな感情にさせてしまうんでしょうね。ま、そこが
監督が描きたい日本人的感覚でもあると思うのですが。
ともかく、客を選びはしますが僕にはとても満足できる作品でした。
次作はまた3年後かな?(^ ^)