院長室

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「明烏」

映画ネタを控えていたけども書かずにいられない、我らが

福田雄一監督最新作!ここ最近は「ブー子」や「女子ーズ」

とあまりにしつこいギャグでどうも笑えなかったのですが、

今回、帰ってきましたよ、福田節が。

 

借金を一気に返済できるお金を手に入れたしがないホストの

ドタバタ劇。喜び勇んで仲間と飲み過ぎて朝目覚めたら、

お金がない。同僚もそんな金知らないと言う。返済までの

リミットはあと12時間!さぁどうしたもんだ!という映画。

基本的にホストクラブの控え室で起きる騒動を描くワン

シチュエーションもの。福田監督は過去にも「大洗にも星は

降るなり」で、同様の設定の作品を手がけていますが、これが

一番力を発揮するんではないかなー。ネタバレになってしまう

ので書けませんが、各方面からお叱りが来ること必至の下ら

ないギャグの連発で、ある登場人物がポケットから取り出す

ものでもう撃沈。腹がよじれるとはこのことだぜ。でも、落語

のネタがベースなだけあってお話も意外としっかりしてます。

 

主演は菅田将暉さん。フィリップやってた頃より格段に上手く

なって、十分主役を張れる役者になりました。城田優さんや

吉岡里帆さんも大健闘。って言うか福田作品に出るとみんな

自然と面白くなるのよね。福田マジック。(^ε^)でもそれは

福田組常連の佐藤二朗さんとムロツヨシさんの強大なバカ力

による。もうこの2人は何かの殿堂入りにしてもいい。何かの。

 

お客さんはお若い女子ばかりで、どうせ菅田くんや城田くん

目当てなんだべ?二朗さん観てチビっちまえ、コノヤローとか

思ってたけど、それがどうして、ちゃーんといいところで爆笑

してくれてました。おじさん反省。惜しむらくはこの地域では

名古屋の109シネマでしか上映していないこと。結構行くの

面倒なのよね。

 

まあでも福田作品はDVDのメイキングがまたすこぶる面白いので

DVDまで待っても可。間違いなく僕はご購入です。(^ ^)

そして朗報。僕がここで猛プッシュしたせいか(多分違う)、稲沢の

ユナイテッドシネマで「セッション」上映決定。木曽川のTOHO

ではもうすぐ終わっちゃうから、見逃していた方は是非。

2015年6月4日 木曜日

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「駆込み女と駆出し男」

最近の洋ちゃんの活躍はめざましい。北海道時代から人気者

だったけど、ここまで全国区になるとは思わなんだ。しかも

やたらめったら露出するのではなく、しっかり作品を選んで

いるところが好ましい。舞台出身ゆえの大袈裟、わざとらしさ、

が鼻につかないでもないけれど、素がああなんだもの、仕方

がない。(笑)

 

さて本作は江戸時代のお話で、事情あって離婚したい女性

の駆け込み寺に、故あって居候することになった主人公の

物語。その寺にも容易く入れるわけではなく、入れたと

しても離婚するまでに相応の苦難が伴うわけなんですが、

そこで生まれる数々のハプニングが楽しい。そもそもこんな

お寺があるの知らんかったし。3人の訳あり女性と、洋ちゃん

扮する駆け出し男のやりとりがメインなんだけど、原作が

しっかりしているからか、“舞台装置”がきめ細かくて、むしろ

そっちの方に感心します。当時の食事風景だったり、風呂屋

の描写、書物の管理、などなど…。安心して観ていられる

良作です。

 

訳あり女性陣は戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名さんが

演じていますが、戸田恵梨香が特によい。ほぼ主人公です。(笑)

若手カメレオン女優の称号を与えよう。いや、褒めてます。

満島さんは役にやや無理があり内山さんは出番が少ないせいで

全部持ってかれてます。対抗馬は女将さん役のキムラ緑子さん

かも?!周辺も堤真一、山崎努、樹木希林など名優がズラリ。

出しゃばらない演技でこちらも安心して観ていられる要因です。

堤真一のなで肩は主張し過ぎの感がありますが。(^ ^;)

 

とまあ、激賞していますが安定感がありすぎて優等生的な

映画であるのも確かです。だから洋ちゃんは出演作に選んだ

のかも知れないけどね。ただ「鉄練り」や「労咳」など当時の

言葉を特に説明なくバンバン入れてくるのにはニヤリとしました。

近年、お笑い番組も字幕で楽しむ時代になっちゃってますから

ねぇ。

 

観客は結構ハイエイジの方が多かったですが、洋ちゃんの

アップでしっかり笑っておられました。いやー、ホント愛されて

ますわ。一部、ドリフのサクラやってたおばちゃんかと疑うほど

に笑っていたご婦人軍団にはやや閉口しましたけども。(^ ^;)

2015年5月28日 木曜日

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「セッション」

偉大なジャズドラマーを目指す音大生と、その教官の魂のぶつかり

合いを描いた映画、と聞くとスクールウォーズのような熱血スポ根

モノを想像し、それをジャズドラマー主役でやるってか?とそんなに

食指が動かないかも知れません。しかーし!これが山下真司のパンチ

以上のメガトン級の傑作だったのです。

 

先に挙げたようにストーリーは超シンプルで鬼教官のシゴキに耐え

ながら才能を開花させていくのを描いているだけですが、このシゴキ

ぶりや主人公の没頭の仕方が「狂気」じみていて拷問映画のようだ、

みたいに捉えられています。が、この映画の本質は純粋さでしょう。

天才とナントカは紙一重と言いますが、純粋さと狂気もまた紙一重

だと思うんですね。そしてこの映画の教官と主人公は極めて純粋なの

です。だから狂気のようにも見えてしまうのでしょうけど、まあ

ゆとり世代には分からん映画でしょうな。(^ ^;)

 

僕も学生時代は部活が武道系だったので、理不尽なシゴキもありまして

そういう経験をしている人の方が入りやすい作品かも知れません。でも

理不尽なシゴキは目標がないから理不尽に感じるだけであって、この

作品の教官と主人公のように確固たる唯一無二の目標がある場合は

不可避な選択になるのです。特に芸術の分野では個性と汎用性の狭間

で思い悩むことが多いでしょうから、このジャズドラマーを主人公に

据えたのはとてもユニークかつ正解だったように思います。…って

調べてみたら監督さんは実際にジャズドラマーを目指していたんだと。

なんだ、やってたんかよ!でも実体験だからあの迫力が出せたので

しょうね。原題は「Whiplash」でこれもまた意味深です。このままで

良かったのに。

 

いやーでも凄い映画だった。エンドロール中ずっと涙が流れた映画は

初めてかも知れぬ。もちろん山下真司的な涙ではなく、どちらかと言う

と極度の緊張から解放された安堵の涙だったかも知れません。あるいは

天文学的確率で出会った可能性を見せてくれた感謝の涙だったかも。

こいつ何言ってんのよ?!と思った方は是非劇場へ。数年前に「日本よ、

これが映画だ!」とかいう酔っ払って作ったような小っ恥ずかしい

キャッチコピーの作品がありましたが、今、しらふで言えます。

「これこそ、映画だ!」

2015年5月14日 木曜日

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「バードマン」

一般的にアカデミー賞受賞作というと、文学的であったり、

壮大な物語であったっり、視覚効果がとんでもなかったり、

と聞く人が納得する理由があるものです。つまり超ド級B級

アクションとか、超クールな低予算ホラーコメディ(笑)

なんていう外角低めな作品はまず選ばれないわけですよ。

本作は堂々たるアカデミー賞受賞作ですが、はっきり言って

後者に分類される異色作です。

 

あまり前情報を入れずに観に行きましたが、そんな仕様なので

僕的にはもの凄い好物でしてとても満足しました。間違っても

「タイタニック」や「アバター」的な作品をイメージして劇場に

行ってはなりませんよ。(^ ^;)ストーリーは至ってシンプルで、

若い頃「バードマン」というヒーローもので名を馳せた俳優が、

再起をかけて舞台の芝居に挑む、というだけです。そこにプライドや、

家族や、さらに演じることの本質などなどが絡むわけですが、

幹となる命題は「何を望むか?」です。

 

こう書くと、なんかどこにでもありそうな映画ですが、言葉で

説明するのが実に難しい作品です。ネタバレになるから、と

いうのもありますが、それは見方によって解釈が変わってしまう

からです。ある人にはすっきりした爽やか成功ストーリーに

見えるかも知れないし、ある人にはとても切ない孤独な話に、

ある人にはブラックコメディに写るでしょう。これこそが

監督の狙いなのかも知れません。最近の映画はあまりにも

「望まれるもの」ばかり作っていないかい?観客もそれに慣ら

されていないかい?と問いかけられているようです。

 

さらに特筆すべきは全編切れ目がないように見える撮影方法です。

いわゆる長回しというやつですが、実際には超絶技巧の編集テク

の賜物だそうです。それでも実際にワンシーンずつは長いそうです。

これによりまさにお芝居を観ているかのようなリアリティを

感じられます。調べてみたら「ゼロ・グラビティ」でも長回し

撮影をやった人でした。これを体感するだけでも価値があります。

BGMもほぼジャズドラムのみという恐るべき仕様。しかしこれも

またとても素敵な効果をもたらしています。それはエンドロールに

まで及ぶという手の込みよう。ここもまた解釈が分かれるところ

です。

 

俳優陣は主演にマイケル・キートン、周囲をエドワード・ノートン、

エマ・ストーンが固めます。みんな過去にヒーローものに出演して

忘れられているという皮肉の効いた配役。(^ ^;)けれども

その演技はとても素晴らしい。作中の台詞も量産される「大作」

映画への皮肉も盛りだくさんで映画好きはクスッとすること

請け合い。撮影方法から、脚本、構成、音楽まで想像以上に練り

込まれた作品です。記録にも記憶にも残る名作です。

2015年4月16日 木曜日

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「アメリカン・スナイパー」

今年は映画レビューは控えめにしようかと考えていた矢先、

これはいけない。あまりにタイムリーな戦争映画、そして

とんでもない傑作映画です。マジか、84歳。

 

愛国心が強く、家族、国民を守るためテロに対して異常な

義憤を抱く戦士の物語。それを実現するだけの身体と狙撃

能力を備えているため、彼は戦地で数々の戦果を挙げ“伝説”

となってゆきます。しかしながら、戦争という非現実は確実

に彼の精神をむしばんでゆく…。ここまでは実際これまでも

題材にされたよくある展開。いわゆる戦争ジャンキーが日常

では受け入れられない切なさを描く類のものです。

 

本作が優れているのは主人公を英雄然としながらも、その

行為に疑問を投げかけているバランス感覚です。徹底的に

外敵と戦う姿は共感を呼びそうですが、ギリギリの所でそれ

を拒みます。特に凄腕ライバルスナイパーの自室に妻子と

おぼしき人物を登場させたのには背筋が凍りました。本作は

実話がベースで、実は主人公はもう亡くなっています。その

死因と無音のエンドロールにまた、背筋が凍ります。ついでに

そんなの関係ねぇ!とばかりに忙しなく席を立つ客や、

「これ故障じゃね?」と宣う客にも背筋が凍りました。(笑)

 

アルカイダやISのザルカウィと言った最近耳に馴染みの

ある単語も頻出して、この映画は極めて現実社会との関連が

深い作品です。ラストシーンは何と実際の映像です。急に劇場

から現実へと投げ出された感覚です。日本人捕虜の殺害、集団的

自衛権、難民受け入れ、などなど今まさに直面している問題

とも地続きだと言っていいでしょう。僕たちは戦争をやめられる

のでしょうか?

 

さておき、主演のブラッドリー・クーパーさんは見事でした。

僕はコメディ作品での彼しか知らないので、だいじょぶ?と

思ってたけど、もの凄い役作りをしたそうで、実際の主人公の

家族や友人からも絶賛されたそうです。そしてやはり、御年

84歳のクリント・イーストウッド監督。歳は関係ないかも

知れませんが、ここまでの完成度の映画を作り上げるのは

相当のエネルギーを要するはずです。彼もまた“伝説”でしょう。

いやはや、ばけもんや。

2015年2月26日 木曜日

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