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漢方薬解説-27 その他の補腎剤

前回、頻用処方の一つである八味地黄丸(7番)を紹介

しました。アンチエイジングの漢方薬、ではなく正確には

体内に水分を留める作用を有する薬であるともお伝えしま

した。この7番を代表するカテゴリーが「補腎剤」で、

まだ2種存在します。

 

・六味丸(ロクミガン 87番)

構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮

 

・牛車腎気丸(ゴシャジンキガン 107番)

構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮

+桂皮+附子+牛膝+車前子

 

今回分かり易くするためそれぞれのグラム数は省略して

います。構成を7番と比べてみると違いが一目瞭然です。

 

・八味地黄丸(ハチミジオウガン 7番)

構成:地黄+山薬+山茱萸+茯苓+沢瀉+牡丹皮

+桂皮+附子

 

87番は7番から桂皮と附子を抜いたもの、107番は

逆に7番に牛膝(ゴシツ)と車前子(シャゼンシ)を足したもの、

なんですね。そりゃ、同じグループになりますわな。

 

桂皮と附子はどちらも温める効果がありますから、それら

を抜いている87番は「水分が不足し冷えがない病態」に

適応となることが分かります。水分が足りないと身体を

冷ますことができなくなるので、逆にほてりを感じたり

します。いわゆる熱中症のような状態です。

 

107番に追加された牛膝と車前子はどちらも下肢の

むくみや血流を改善する効能があるので、7番の適応で

下肢に不調を感じる人向け、となります。整形外科領域

では腰部脊柱管狭窄症によく使用されますが、もちろん

7番の適応であることが大前提です。

 

ちなみに107番の命名は牛膝と車前子の頭文字を

7番の別名である腎気丸の前にくっつけただけです。

87番は7番から2つ生薬を引いているので正確には

六味地黄丸と言います。附子は温めるだけでなく鎮痛

効果もあるので、7番と107番は冷えると痛みが

出る場合にも良いですが、そもそも配合量が少ないので

冬場ではさらに附子だけ追加して処方することも多い

です。

 

以前、参耆剤というカテゴリーも紹介しましたが、

漢方薬を整理して理解する際には、カテゴリーごと

に特徴を覚えることも有用です。

2020年10月15日 木曜日

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腸内カンジダと栄養

前回はピロリ菌感染と栄養障害の関連について紹介しました。

ピロリ菌感染により胃酸機能が低下すると、タンパク質分解と

ミネラル吸収能低下が起きるという内容でしたが、のみならず

外界からの雑菌を殺す能力が低下し、結果として腸内細菌叢の

乱れを招くので間接的に腸内環境悪化も招いてしまいます。

 

今回は直接的に腸内環境悪化を来すカンジダ菌と栄養障害に

ついて紹介しましょう。カンジダは日和見菌のカテゴリーで

我々全員の腸内に存在する常在菌です。ですが、増殖すると

途端に有害な存在となってしまいます。

 

増殖により菌糸形態となり、腸粘膜に根ざして破壊していき

ます。すると腸粘膜機能が低下し未消化タンパク質や有害

な物質が素通りして体内に侵入してしまいます。この結果、

体内では異物の取り締まりが激化し過剰な免疫反応が起き

ます。これがいわゆるアレルギー反応ですね。

 

もしも加えてピロリ菌が陽性であれば、腸内には未消化の

タンパク質が増えますから、よりアレルギー症状は多彩で

重症化するでしょう。ピロリとカンジダのタッグは最凶

なんです。(^ ^;)

 

またカンジダはアラビノースという物質を産生しますが、

これを人体は糖と認識してしまうので、インスリン分泌が

誘発され血糖乱高下が起きます。つまり厳格に糖質制限を

していてもカンジダのせいでうまく行かなくなるわけです。

さらにシュウ酸合成の亢進も起きますが、これは直接的に

脳機能にトラブルを引き起こすので、気分の変動や抑うつ

もカンジダ由来だったりします。

 

カンジダの増殖は血液検査では分からないこと、そして

ピロリ菌ほど治療方法が確立していないことが厄介です。

増殖が確認されれば優先的に治療すべきですが、カンジダ

は常在菌なので「根絶すること」を目的とするのではなく

「優勢にしないこと」がキモとなります。では、カンジダ

が増える環境とは何でしょう?それが糖過剰なのです。特に

甘味や精製炭水化物が要注意です。あとは善玉菌を増やして

カンジダを劣勢に仕向ける、というのが常套手段です。

 

静菌ハーブなんかも有用ですが、カンジダとの戦いは長期

に及ぶことが多いので、検査と治療のトータルコストを

考慮して組み合わせることも極めて重要です。腸内環境って

何となく難しいイメージがありますが、何をおいても

まずピロリとカンジダです。

2020年10月12日 月曜日

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ピロリ菌と栄養

栄養療法は「栄養素の過不足を分析し意図的に操作・改善

する治療法」と定義できます。例えば血液検査をして鉄が不足

していることが分かり、症状が相関するので鉄を多く摂るため

の食事を指導する、食事では足りない場合はサプリメントを

使用する、ということです。

 

ウチでも多くの方が実践されていますが、一番重要なのは、

その過不足の原因です。食事制限やサプリメント摂取は必ず

しも根本治療になるとは限りません。その背景に大きな障害

があれば当然そここそが治療の本丸となります。栄養の過不足

の裏に隠れている病態を何回かに分けて紹介しましょう。

 

まず重要かつメジャーなのがピロリ菌感染です。ピロリ菌は

胃内で増殖し、胃癌や十二指腸潰瘍の原因となる菌ですが、

胃酸を薄める能力があるがゆえに胃内に定着することができ

ます。つまりピロリ菌陽性=胃酸が薄いということです。

 

胃酸が薄いとどうなるでしょう?実は栄養の吸収に甚大な

影響を及ぼします。それがタンパク質とミネラル全般です。

タンパク質は分子が大きいので、そのままのサイズでは腸から

吸収できません。それを咀嚼、唾液、胃酸、消化酵素の作用

を経て吸収可能サイズになります。ということはピロリ菌陽性

下ではタンパク質の分解が進まず、結果としてタンパク質不足

のデータとなります。さらに吸収されなかったタンパク質は

腸内悪玉菌のエサとなり得るので、腸内環境悪化のオマケ

まで付いてきます。

 

また鉄や亜鉛、マグネシウムなどのミネラル類は胃酸の作用で

イオン化されることにより吸収しやすくなりますから、これも

タンパク質同様、ピロリ菌陽性下では吸収阻害が起こることに

なります。タンパク質不足やミネラル不足は栄養療法を実践

していると高頻度で遭遇しますが、単純にそれらを補給すれば

いいとは言えないのです。

 

ピロリ菌は井戸水の飲用で感染すると言われ、現代では少ない

ように思われますが、経口感染するため祖父母や両親から

子供に感染することもあり、団塊の世代が一番多いものの

全世代に陽性者はいます。検査は色々な手段がありますが、

ウチの場合は血液検査を採用しています。胃の内視鏡を実施

する場合は同時にやると保険内で検査できますので、近々に

予定されている方は一考すると良いでしょう。

 

また、ピロリ菌の診断基準は数年前に改訂され厳しくなった

ので、数年前に陰性と判断されていても現在の基準では陽性と

なることがありますから注意が必要です。栄養療法的分析で

タンパク質やミネラルの不足が疑われる場合、ピロリ菌感染

は見逃してはいけない病態です。

2020年10月8日 木曜日

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漢方薬解説-26 八味地黄丸

漢方薬が宣伝される際に「高齢の方にも安全です」みたいな

言われ方をすることがあり、今回紹介する漢方薬も高齢者に

頻繁に処方されます。さらに、特に症状が無くても「アンチ

エイジングの漢方薬」、ってまた聞こえの良い売り文句も

散見されます。ホントか?!

 

・八味地黄丸(ハチミジオウガン 7番)

構成:地黄6g+山薬3g+山茱萸3g

+茯苓3g+沢瀉3g+牡丹皮2.5g

+桂皮1g+附子0.5g

 

その名の通り8種類の生薬で構成され、地黄(ジオウ)が主役

の薬です。上段の3種、地黄+山薬(サンヤク)+山茱萸(サンシュユ)

はどれも体内に水分を保持する効能があり、つまり体内の水分

不足の方に適応となります。我々の体は加齢によって生理的に

タンパク質不足になり、その結果脱水傾向になります。この

慢性脱水に対し上記3種が有用なので、あたかも若返り薬の

ように言われるのです。

 

ただこれは古来言われてきたことでもあり、現代人が曲解

しているというわけではありません。漢方理論の中では、

「腎」は生まれ持った生命力、という意味で7番にはその

「腎」を補強する効能があるとされてきました。この効能を

持つカテゴリーを補腎剤と言いますが、7番はその代表で

あり「腎気丸」という別名を持つ所以です。

 

まあでも現代医学に照らし合わせれば、若返り薬なんて

ものはあるはずもなく、また水分保持が主たる効能なので

あれば抗加齢というよりは、加齢による症状を緩和する、

という程度に捉えた方が正確でしょう。拡大解釈して処方

するのは避けるべきですが、何より7番の主成分である

地黄は実は最も副作用報告の多い生薬でもあるのです。

一番多いのは悪心です。

 

高齢の方は既に胃腸症状があったり、もとより消化能力が

落ちていたりするので、盲目的に7番を満量処方すると

意外と不調を訴えるケースがあるので注意が必要なのです。

ただ適応がバッチリ合うと思いもよらない効果があったり

するのもしばしば経験します。まあ最初の問診不足だったり

もするんですけど。(^ ^;)

 

7番の残りの生薬では附子(ブシ)が目を引きます。これは

温めながら鎮痛する効果を持つので、脱水傾向で腰痛持ち、

風呂に入ると楽、なんて場合も重宝します。こういう

ケースも高齢者に多いですが、もちろん若い方でもOK

です。その他の補腎剤も重要なので次回紹介します。

2020年10月5日 月曜日

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なぜワクチンをしないか

今月からインフルエンザワクチンの接種が始まりますね。例に

よって当院では施行しません。すんません。m(_ _)m

 

決してワクチンを否定しているわけではないのですが、やらない

理由を一言で言えば「確実性に乏しいから」です。ワクチンの

作用は抗体産生を促して感染を防ぐことです。抗体はタンパク質

ですから、タンパク質代謝が落ちていれば抗体産生に影響が

出てもおかしくないですし、ワクチン接種そのもので不調に

なる方も少なからずみえます。

 

病原体にもよりますが、有効率は50〜70%程度という報告

もあるので、ワクチンはやるとしても補助的な対策なのかな、

と思っています。特にインフルエンザは毎年株が変異するので

それを予想してワクチンを作るのはほとんど博打みたいな

もの、とも言えます。実際にワクチン打ったけど罹患したぞ、

という声も聞きますよね。

 

またワクチンを打つと、それでもう安心しちゃって基本的な

対策を怠るという傾向も散見します。やはり手洗いやうがい、

現状であればさらに至近距離で話す際のマスクは大前提の対策

となるでしょう。これらを疎かにしてはいけません。まあ今年

は例年に比べ皆さん徹底しているので、インフルエンザ患者数

は少なくなるのでは、と予見されていますが。

 

ワクチンの在庫数によって、接種回数が変わる傾向があるのも

不信感を抱きます。今年は品薄が予想されるから、高齢者でも

1回でいいです、なんてことになると今までは何だったのよ?!

って思うし。(^ ^;)

 

一人が抗体を有することで周囲に拡散させない、という効果は

あるのでワクチンを打つな、なんて言う気はありませんが、

栄養療法をやっている手前、他に有効な手段があるのならそちら

をお勧めしている次第です。あとワクチン業務に忙殺されて

本来の診療がままならなくなるのも嫌だし。

 

そんなわけで、今年も御理解御協力を頂ければ幸いです。

2020年10月1日 木曜日

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