漢方薬は西洋薬にない効果を発揮するところが最大の魅力ですが、
熱中症を改善するものまであるのでしょうか?
実は清暑益気湯(セイショエッキトウ、136番)というなんとも涼しげな
ネーミングの漢方薬があって、実際にこの時期よく処方されます。
ただこの漢方薬は「参耆(ジンギ)剤」と言って、人参(ニンジン)
と黄耆(オウギ)という生薬が基本骨格となる方剤で、基本的には
消化器系を元気にする薬です。
つまり熱中症の中でも食欲不振とか軟便がある場合に使うのが
正しく、ほてりや発熱、こむら返りといった症状がメインの場合
はあまり効きません。「熱中症」という病名のみで判断して処方
すると失敗するわけです。
では上記のような症状がある場合はどうするかと言うと、要は
潤して冷やしたいわけですから、それに対応する生薬を含む方剤
を選ぶことになります。具体的には石膏(セッコウ)、知母(チモ)が
優先度の高い生薬になります。
これらを含むのが白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ、34番)です。
また地黄(ジオウ)、山薬(サンヤク)などは体内に水分を保持する
効果がありますから、これらを含む六味丸(ロクミガン、87番)を
併用することもあります。漢方薬の効能はそれを構成する生薬の
効能の和ですから、病名はひとまず置いておいて病態と症状を
しっかり把握することが処方の際に必須です。
とは言え、漢方薬だけでこの暑さを乗り切れるわけではありません。
むしろ漢方薬は補助として捉え、水分、ミネラル、タンパク質摂取
に務めるのが最重要なのは言うまでもありません。