十全大補湯と補中益気湯が参耆剤の双璧であると紹介しました。
胃腸の機能を回復させることは “気” の増幅に繋がるので、漢方
医学ではとても重要な位置づけとなっており、この2剤以外
にも保険で使用できるものが数種あります。若干マニアックに
なるので、人参と黄耆の配合量だけ記載します。
・清暑益気湯(セイショエッキトウ 136番)
…人参3.5g+黄耆3g
・加味帰脾湯(カミキヒトウ 137番)
…人参3g+黄耆3g
・清心蓮子飲(セイシンレンシイン 111番)
…人参3g+黄耆2g
・半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ 37番)
…人参1.5g+黄耆1.5g
補中益気湯が人参4g+黄耆4g、十全大補湯が人参3g+黄耆3g
ですから上2剤は参耆剤として引けを取らない効能を持つこと
なりますね。136番は夏バテに、137番は不眠に、なんて
紹介されますが、胃腸機能低下が条件です。下2剤はそれぞれ
頻尿、頭痛に使用されます。参耆剤としての効果は落ちますが、
配合意図を知っておくべきです。
我々が使用する保険漢方エキス剤は便利である反面「不要な
生薬を抜けない」という弱点があります。本来漢方は必要生薬
を足していく方式ですが、既にできてしまったエキス剤からは
引くことができません。上記4剤も人参+黄耆以外の生薬が
不要、もしくは邪魔になることもあるので、使いやすくはない
のです。
よし、じゃあ作っちゃお!ってことで、極力不要な生薬を含ま
ない合方なんてのを紹介しましょう。
・六君子湯(リックンシトウ 43番)
構成:人参+茯苓+半夏+陳皮+蒼朮+大棗+甘草+生姜
・防已黄耆湯(ボウイオウギトウ 20番)
構成:黄耆+防已+蒼朮+大棗+甘草+生姜
43番は以前紹介しました。人参は4gです。20番は黄耆が
5g配合されている上に、蒼朮以下は43番と共通なので、合方
しても実質生薬が2つ追加になるだけです。それでいて参耆剤
としては最強クラスになるのです。消化器系に特化した合方と
言えますね。イエーイ。
これはほんの1例ですが、生薬構成を知るとこういう芸当も
普通にできるようになります。面白いですね。面白いですね?!
強要。(笑)