今回も下剤シリーズです。漢方界では便秘を嫌う、というのは
前回お伝えしましたが、下剤を使用して便通があるのは当たり
前で、その場合、使用しないとまた便秘に戻る、ということ
はよくあります。なるべく下剤成分以外で便秘を解消して
いこう、というのはこれまた漢方ならではの発想です。
・麻子仁丸(マシニンガン 126番)
構成:麻子仁5g+大黄4g+枳実2g+杏仁2g+厚朴2g+芍薬2g
大黄を4g使用していますが芒硝は入っていません。その代わり
麻子仁(マシニン)、杏仁(キョウニン)といった「潤す」作用のある
生薬を配合しているのが特徴です。乾燥傾向になると便は硬く
なるので、これらの生薬が有効な場面が結構あるのです。生理的
に脱水となる高齢者では乾燥による便秘多いので、高齢者向き
の下剤、なんて紹介されますが必ずしもそうではありません。
枳実(キジツ)や芍薬は下腹部の張りを取るので便秘に好都合
です。
さらに漢方らしいのが、
・潤腸湯(ジュンチョウトウ 51番)
構成:麻子仁2g+大黄2g+枳実2g+杏仁2g+厚朴2g
+地黄6g+当帰3g+黄芩2g+桃仁2g+甘草1.5g
です。10種の生薬構成ですが、上段5種はほぼ126番
です。大黄2gですから、さらに下剤成分は少ないですね。
下段は潤す生薬と血流改善生薬なので、乾燥かつ血の巡りの
悪い状態=血虚の方向けの薬というのが分かります。これも
決して高齢者向けというわけではありません。むしろ血虚
になりやすい若い女性に使用する機会が多いです。
ちなみに黄芩(オウゴン)って冷やす生薬じゃね?血虚には
不向きじゃね?と思われた方はスバラシイ。確かに通常
血虚がある場合には冷えを訴えることが多いですが、乾燥
傾向=水分が少ない状態になると適切に身体を冷ますこと
ができなくなり、熱がこもることがあります。これを虚熱
といいますが、51番の黄芩はこの虚熱対応のため配合
されています。また黄芩は乾燥作用もあるのでこれも疑問に
感じるかも知れませんが、他の生薬がほとんど潤すもの
ばかりなので、そのカウンターとして使用されているとも
捉えられます。
ここまで理解できると、その漢方薬にマッチする人が
想像できるので適切に選択できるようになるわけです。