院長室

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「ダンケルク」/「三度目の殺人」

和洋の旬の監督による最新作が偶然にも同時期に公開されたので

夏休みの鬱憤を晴らすがごとく早速鑑賞してきました。

 

まずはクリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」。第2次

世界大戦時にあった英国軍の実際の撤退劇を描いた作品です。

ダンケルクという町に追い詰められた英仏連合軍の兵を軍民協力

して40万人という途方もない人数を引き上げさせた史実を描いて

いますが、とにかく分かりづらい。そもそもこの作戦のことなんて

初耳だし、登場人物もほとんど説明じみたセリフを発しない。説明

セリフの多い映画には辟易しますが、今作はまた極端なんす。(^ ^;)

 

しかしながら、これまでのノーラン作品同様、映像はとんでもなく

臨場感たっぷりでまさにそこに居るかのような錯覚を覚えます。

さらに史実ゆえに結末も分かってしまっているため、脚本が凝りに

凝っています。陸、海、空の3場面をうまく絡めながら並行して

描きます。これらのため100分程度の尺ながら、もの凄い緊張感

の連続です。個人的には「ダークナイト」シリーズや「インターステラー」

の方が好みですが、こんな挑戦をし続ける姿勢には脱帽です。

 

そして和の方は是枝裕和監督による「三度目の殺人」。ある殺人

事件の容疑者とその弁護人、家族を描いたサスペンス…かと思って

いたら裏切られます。殺人を自供している容疑者、その罪を軽くする

ことだけが仕事だと自負する弁護士、被害者の真実を言えない家族…

これは綺麗事では済まされない現代社会への諦観と嘲笑を描いた

法廷を舞台に借りた社会映画です。

 

はっきり言って答えは提示されません。観客はモヤモヤした展開に

いらだつでしょうし、度々挿入される暗喩にもしかしたら不快を

感じるかも知れません。でもそれが狙いでしょうし、それでも

惹きつけるキャストの演技が素晴らしいです。特に主演の福山雅治さん

は、確実に一皮むけた感があります。

 

同監督の「そして父になる」でも良い演技をしていましたが、

本当に父となって(笑)肩肘張った感じが抜けて、むしろ迫力が

増しました。役所広司さんとの2人だけのやりとりは鳥肌モンです。

こちらも「ダンケルク」に劣らず挑戦的な作品で鑑賞後結構ぐったり

しますが、ノーラン作品に肩を並べられることは誇って良いと思います。

「三度目」の意味をあれこれ思索するのも楽しい。

 

偶然にも同じような質の和洋の作品が、同時期に封切りされた

ことが誰かの作為ならこれこそミステリィですが、とにかくどちらも

観ている間中ヒリヒリとさせられて本当に気分が悪くなるような、

まさにこれぞ映画、を実感しました。

2017年9月14日 木曜日

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「ベイビー・ドライバー」/「ザ・マミー」

夏休み時期は上映ラインナップ的にも映画館の混雑具合的にも鑑賞

活動が低下するのですが、「ベイビー・ドライバー」は今年観た中

でも1、2を争う傑作でした。

 

強盗の「逃がし屋」を稼業とする若い主人公の物語なんですが、

その超人的な能力が音楽を聴いている時だけ発揮される、という

面白い設定のため、この映画はアクション映画でありながら

さながらミュージカルのように軽快でもあります。でもしっかり

カーアクションは骨太だし、クライムムービーとしての緊張感も

かなりのもの。1本にどんだけ詰め込むのよ、的なお得な作品

です。

 

僕はほぼ洋楽を聴かないので、この映画を100%楽しめていない

だろうことがとても悔しいですが、それでも演出も脚本も巧妙

なのでとても満足しました。主人公はアンセル・エルゴートさん、

ヒロインにリリー・ジェームズさんと、あどけなさの抜けきらない

若手を起用しつつ、強盗犯にケビン・スペイシーさん、ジェイミー・

フォックスさんという技巧派名優を起用するというのも上手い。

アクションと洋楽好きはとにかく観て損ナシ!惜しむらくは上映館

が少なすぎるところか。

 

そして我らがトム・クルーズ兄貴の「ザ・マミー」ね。これは

実は「ダーク・ユニバース」というシリーズもののの第1弾でして、

製作サイドは結構力入ってます。この「ダーク・ユニバース」は

「アベンジャーズ」や「ジャスティス・リーグ」みたいなヒーロー

ごっちゃまぜ企画のモンスター版。今作にはゾンビとジキル博士が

出てきましたが、今後も透明人間やらフランケンやら、半魚人やら

が出るそうな。

 

で、この試みは第1作目にして既に失敗模様で、トム様にこんな

役やらせんなよ!と思わせてしまうような薄味、御都合主義的な

演出。そもそもモンスター競演映画にニーズがあるのかという、

マーケティングから見直さないといけないと思う。日本にはもう

「怪物くん」という金字塔があるわけだし。あ、大野君主演の

ヤツじゃないよ。(笑)

 

まあトム様ファンは観てもいいけど、逆にトム様ファン以外には

あまり勧めるポイントはないかな。内容もほぼ「ハムナプトラ」

やしね。「ダーク・ユニバース」が「黒歴史」にならんことを

祈る。

2017年8月31日 木曜日

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「ジョン・ウィック2」/「銀魂」

夏休みは映画館も混雑するので、ノルマ作品はサッサと観てしまう

のが吉ですが、今回紹介するのはあくまでも僕のノルマであって決して

オススメ作品ではないことは断っておきたい。

 

まずはキアヌ・リーブス主演の殺し屋アクション映画の第2弾。前作は

足を洗った暗殺者が妻の遺した犬を殺されたことにブチ切れてサツガイ

しまくる(だけ)というイカした作品でした。アクションシーンはカッコ

いいものの、全てが場当たり的でとても伝説のヒットマンに見えない

ところが泣き所で、続編ではその辺の改善を強く望む!とここでだけ

叫んでおきましたが、さてどうなったでしょう?

 

ええと、前作よりもヒドなっとるがな!(笑)今度は妻との思い出の

家を爆破されたことを発端に事件に巻き込まれるのですが、清々しい

ほどに前作の反省はナシ。多分第3弾もあるんでしょうけど、変える

気ないだろうな、これは。相変わらずアクションシーンは凝っていて、

それ自体は大変おもしろいのですが、場当たり的な展開に加えて主人公

の不死身度がさらにアップしており、撃たれても刺されても、石段から

豪快に転げ落ちても「ハアハア」言うだけで強さは変わらず。さながら

テレビゲームの主人公です。

 

もうほぼギャグすれすれですが、ローレンス・フィッシュバーンさんとの

共演は震えたし、敵ヒットマン役のルビー・ローズさんはトリプルXの

時同様に素敵。次回は是非ヒューゴ・ウィーヴィングさんと戦って欲しい。

えっ?こんだけ言っといて次回も観るの?!もちろん!(笑)

 

さてもう一つのノルマ、我らが福田雄一監督の「銀魂」です。よせば

いいのにまたしても漫画の実写化。(^ ^;)しかも超有名作品でかつ

原作もパクリ横行の問題作ときたもんだ。ただシュールギャグが多い

ので福田組とは相性は良いと踏んでおりました。個人的には佐藤二朗さん

が観られればいいので、出来不出来を問う気はあまりなかったり。

 

でもね、意外とちゃんとまとまっていて面白かった。少なくとも

「変態仮面2」よりははるかにマシ。見た目もストーリーも原作に

かなり忠実で、忙しないテンポながらも「銀魂」の象徴的な主要

エピソードはかなり網羅してるので満足感高し。個人的にはマダオが

いないのが寂しかったですが、原作さながらのテレビ業界いじりは

大したもの。よくGOサインでたな、というギャグばかり。

 

さらには恒例の女優変顔芸(?)の餌食になった橋本環奈さんは見事

期待に応えており、MVPを選ぶとすれば彼女かな。そんな制度ないが。

主要キャラは小栗旬、堂本剛、岡田将生で殺陣は大したことないの

ですが、その辺りは派手なVFXでカバーしてます。キャストを見ても

今回は結構制作資金があったのだなぁ。まあいつもの福田組メンツでは

ありますが。(笑)特に六角精児さんが出るシーンは必見。全く

ストーリーに関係ないけど。

 

原作を知らない人には不向きですが、福田ファンかつ銀魂を知る人

であれば、結構マストな作品かも知れません。スピンオフ作品でき

ないかなぁ。

2017年7月20日 木曜日

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「TAP」/「ハクソー・リッジ」

スターが必ずしも名監督になるわけではない、というのは映画界でも

プロ野球界でも言えることですが、今回は日米の名優が監督した作品が

偶然にも同時期に公開されたので比べてみました。

 

まず日本。水谷豊さんが40年も温めていたネタを、満を持して作製

したという「TAP-THE LAST SHOW」。人気絶頂のタップダンサー

が事故を契機にどん底を味わうが、親友の誘いから才能ある若者を

プロデュースして最後のショーを手がける、という、まあ何というか

40年温めていただけあって40年前にやっておけば良かったんじゃ?

と思わせるようなストーリー。(^ ^;)

 

古いものが悪いなんてことはないんだけど、さすがにもう少し現代に

寄せないと現実味がなくなってしまう。ダンスシーンがメインなので、

本作はホンモノのダンサーが俳優をしてる都合上、演技には目をつぶってね、

その代わり周りを実力派俳優が固めるから、という布陣なわけですが

個人的にはその周辺俳優さんの大袈裟で古くさい演技がむしろ邪魔

だったかな。決してダンサー達は下手ではなかった。和製「セッション」

なんて紹介されてたりするけど、それは恥ずかしいから言わない方が

いいでしょう。

 

結構なディスりようですが(笑)、ラストのダンスシーンは圧巻です。

ホンモノ達のめくるめく情熱的なタップダンスは驚きと感動に満ち

ています。このシーンに説得力を持たせるために強引な演出を重ねた

のだな、と最後にやっと少し同情できました。映画としての完成度は

低いですが、水谷豊さんの情熱は感じられる一品です。

 

対して「ハクソー・リッジ」はメル・ギブソンさん監督の実話ベース

の戦争映画です。監督業が初めての水谷さんと比べるのは酷ですが、

相当な傑作です。主人公は絶対に武器を持たないという信念のもと、

衛生兵として75人もの負傷者を救った実在の人物。劇中、上官や

同僚に「武器を持たず、愛する者が攻撃されたらどうするんだ?」と

再三責められます。まさに日本における自衛隊に突きつけられる疑問

に重なります。

 

この問いに明確な答はありませんが、戦争映画史上でも屈指の戦闘

シーンがその答を示唆しているようにも思えます。とにかく、凄まじい。

スプラッタやホラー顔負けの戦場の現実を首根っこをつかまれて

見せつけられます。そしてこの戦場の現場が沖縄なんですね。なにか

監督の秘めたメッセージを感じずにはいられません。

 

表面的には実在した英雄の伝記というテイですが、その実、大変に

強烈な現代の我々が置かれた国際的問題への提言のような映画です。

いやあ、すげーもん観た。狂気最高潮で最終兵器な彼(笑)がよもや

こんな映画を作るとはねぇ。恐れ入りました。

2017年7月6日 木曜日

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「22年目の告白−私が殺人犯です」

藤原竜也さんの大袈裟な演技がどうも肌に合わないことが多い

ので、大して関心もなかった作品なんですが、入江悠監督、

伊藤英明出演、ってのを聞いてつい劇場へ行ってしまった次第です。

 

いや、オモロイよ、これ。22年前の連続絞殺事件の犯人が

時効を経てしばらくしてから自ら犯人と名乗り出て、あまつさえ

事件についての手記を出版するという衝撃的な幕開けで始まります。

その劇場型犯人を演じるのが藤原さんなので、むしろ大袈裟加減

がピッタリ。(笑)犯人を追い詰めておきながら逮捕できなかった

傷心の刑事を伊藤さんが演じます。

 

韓国映画のリメイクらしいですが内容は大幅に変更されていて

ほぼ別物と言っていいくらいだそうで、その変更点がとても良かった

ようです。本作はクライマックスに進むにつれてツッコミ所も多く

なるので、韓国版を推す声も聞かれますが、でも純粋にミステリー

として面白かったです。

 

まあミステリーなので多くは語れませんが、奇才と言われながら

最近迷走していた感のある入江悠監督の面目躍如となるのではない

でしょうか。終盤の “4つ巴” の場面の緊張感ったらない。この

シーンだけでも観る価値があります。伊藤英明さんの泣き芸(?)

は天下一品だと思っているので、それが観られたのも嬉しい。

 

特に終盤はもう少し工夫の余地があったように思いますが、それでも

エンタメ度は高いです。観る予定じゃなかったから余計に掘り出し物

感を感じてますが(笑)、SNSなどのネタバレに遭遇しないうちに

どうぞ。

2017年6月15日 木曜日

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