院長室

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「サバイバル・ファミリー」

ある日突然、電気もガスも使えなくなったらどうなるか?を

リアルに描いたポリティカルコメディー。「ウォーターボーイズ」

などでおなじみの矢口史靖監督最新作です。

 

矢口監督は「WOOD JOB!」や「ロボジー」など斬新な視点で

日本人社会を描く手腕が素晴らしいのですが、今作はこれまでとは

少し違って、原発事故を経験した日本人にとっては結構身近な

題材であるため、一歩間違うとほぼパニック映画になってしまう。

そのため無理にコメディ寄りにしている感はあり、心から笑え

ない部分はあります。

 

しかしながら、脱原発や自然賛歌を声高に主張しないところが

この監督らしく好感を覚えます。むしろ重きを置くのは「家族の

再生」です。利便になり過ぎた文明を槍玉に挙げるのではなく、

文明に溺れた現代人の弱さを描くことで、人間賛歌へと昇華させて

います。この辺りがとてもうまい。脚本の巧さでは三谷幸喜さん

が挙げられますが、平均点では矢口監督の方が上かも知れません。

 

主演ファミリーを父:小日向文世さん、母:深津絵里さん、

息子:泉澤祐希さん、娘:葵わかなさんが演じます。特に

深津さんが良い。かわいい。個人的な趣味ではなく。(笑)

彼女はここ数作で一皮むけたと言うか、とても巧みな女優さん

になった感じがします。彼女基準で観る作品を決めてもいい

レベルです。いや、個人的趣味ではなく。

 

ともすればホラーになりそうな所をコメディーとして成り立た

せているところが本作の眉目です。怖さと共にほっこりさせる

なんてなかなかの離れ業です。矢口作品万歳です。それはさて

おき久々に観た大地康雄さん、良かったなぁ〜。

2017年2月16日 木曜日

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「ザ・コンサルタント」

いいねぇ。実にいいねぇ。地味な会計士という表の顔を持ち

つつ、実は裏社会と繋がる腕利きの暗殺者。しかも重度の

自閉症を克服しきれていないコミュニケーション障害者でも

あるという、いわゆるアンチ・ヒーローが活躍するサスペンス・

アクションです。

 

主演はベン・アフレックさん。最近は俳優業だけでなく監督

など制作にも携わるマルチな彼ですが、主人公の設定にマッチ

した外見と動きで、ハマリ役と言えます。例えばトム・クルーズ

さんには華があり過ぎてこの役はこなせないでしょう。まあ、

スパイもアウトローも実はハマってないんですが。(^ ^;)

でも、そんなトム様が好きだ。…いや、失礼、脱線。

 

アクション映画ではありますが、前半パートはむしろサスペンス

重視で主人公の凄さは実感できませんが、それが後半に行くに

つれてドンドンと無敵っぷりが披露される快感ったらない。

上手に過去シーンを挿入することで、事件だけでなく物語自体の

謎も明かされるという凝った脚本にも脱帽です。事件の核になる

部分や、主人公のバックボーンなど分かりにくい点もありますが、

それを補って余りある工夫が施されているのであまり気になり

ませんでした。

 

周囲もJ.K.シモンズさんやアナ・ケンドリックさんなど名優が

固めますので、満足度高し。こりゃ続編もあるかな?あとは

お決まりの変な邦題。原題は「The Accountant」(会計士)で、

このままでは伝わらないし、かと言って「会計士」ってのも

さらに「?」だし(笑)、苦心はよく分かります。日本では

「経営コンサルタント」くらいしか耳に馴染みがないから選択

されたんだろうね。まあこれは仕方あるまい。許す。何様?

 

あまり派手に宣伝されていませんが、「イコライザー」や

「ジョン・ウィック」がお好きな方は十分に楽しめるでしょう。

オススメです。

2017年1月26日 木曜日

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「ドント・ブリーズ/アンダーワールド ブラッドウォーズ」

新年1発目の映画鑑賞は「ドント・ブリーズ」。昨年末に公開されて

いましたが、近隣での公開を待って鑑賞。今作も内容を極力伏せて

公開し、口コミ評判によって劇場が増えるという「この世界の片隅で」

方式のようです。それだけ面白いということですが、思いっきり

ネタバレも公開されちゃってるので、もしも鑑賞する場合は情報を

シャットダウンして行ってね。

 

ストーリーは上記理由からもちろん詳細は明かせませんが、ジャンル

としてはホラーです。でもゾンビだの悪霊だの、ではなくサスペンス

色が強い現代劇です。盲目の独居老人宅に強盗に入ったはいいが、

その老人が退役軍人でめっちゃ強く、果てにその家からの脱出劇に

変わっていく、というもの。雰囲気は傑作ホラー「ソウ」に似てます。

 

とにかくアイディア満載で、若干心臓に悪い描写もありますが、

きっちり極上エンタテインメントに仕上げています。コンパクトな

上演時間もマル。何度か書いてますが、僕の考えるベストラップは

100分。本作はなんと88分です。それでいてこの情報量は凄い。

「ソウ」は想定外の人気ゆえどんどん続編が作製されましたが、実は

本作も既に続編制作が決定している点でも似ています。正直、

それはやめておけ、と言いたいですが。

 

そしてもう既に今回で5作目という「アンダーワールド」の新作。

吸血鬼と狼男の果てなき戦いを描くスタイリッシュアクション、

と聞くだけで今でもテンションダダ上がりですが(笑)、さすがに

もう厳しい。と言うか4作目観てないし。(ええっ)

 

実際、第1作からして「マトリックス」と「ヴァンヘルシング」を

足して3で割った(笑)みたいな内容なので、カルトな層のみに

受けていて、今作も一見さんお断り的な進行です。ではその敷居の

高さに見合ったデキかと言うと、もうちゃんちゃらおかしい、

突っ込むのも面倒くさい内容。出涸らしもここまでくると新しい

食材なんじゃないかと思うくらいで、一体誰が喜ぶんだろう。

挙げ句、また続編を臭わすラスト。いや、やめておけ。(2回目)

 

ここまで引っ張って来られたのも、主演のケイト・ベッキンセールさん

の美貌のおかげなのですが、なんせ設定が老けないヴァンパイヤ

ですから、さすがのケイトさんでも加齢変化、もしくは無理な若作り

が痛々しくもあります。いつもより全体に暗いシーンが多いのは

そのせいか?(笑)

 

まあシリーズ未見で本作に突撃する無鉄砲野郎はいないと思いますが

まあ、やめておけ。(3回目 笑)

2017年1月12日 木曜日

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「ジャック・リーチャー/この世界の片隅に」

「アウト・ロー」のまさかの続編、「ジャック・リーチャー」

です。主演のトム・クルーズさんが相変わらず54歳とは思え

ない奮闘を見せます。まあ、トム様かっこええ!しかも今作は

ティーンな女子に振り回されて萌える!以上!な映画です。(^ ^;)

 

僕みたいに家訓でトム様映画を観ることを義務づけられてでも

いない限り(ウソ)必見ではないですが、80年代を彷彿と

させるご都合主義的な安心してワクワクできる(?)アクション

映画をお求めの方はにマッチするでしょう。しかしさすがに、

無謀なカーチェイスで民間人を危険にさらすとか、窃盗した

カードで飛行機のチケット買うとか、ミスを反省せずとっつかまる

ヒロインとか、ちょいと見過ごせない部分も多し。僕がオトナ

になったのだろうか。けど続編出たらまた観ます。家訓だし。(笑)

 

そして終戦間際の広島を舞台に描かれるアニメ「この世界の

片隅に」。またこれとんでもない傑作です。もう今年何回も

言ってるので価値が薄れてきた感がありますが、数年に1度

クラスの傑作が毎月出現しているのですから、ホント今年は

異常気象ですよ。

 

本作はごく平凡な女性が嫁いだ先で戦争が激化し、日常を侵襲

していく様を描いているのですが、そのディテールが凄い。

当時にタイムスリップでもしたかのような臨場感です。戦争映画は

もちろん反戦がテーマなんですが、この映画はありきたりの日常

を軸足に戦争をどこか遠く描くことで、残酷さをより強烈に

映し出します。

 

ほのぼのとした主人公を能年玲奈改め、のんさんが演じています

が、これがまた見事にハマっていて素敵。もっと脚光を浴びて

いいのに、芸能界って怖いね。でもじわじわ評判が広がれば、

自ずと彼女への評価も上がることでしょう。是非観てください。

日本人のみならず全ての人の心に響くことでしょう。難点は

惜しみなく広島弁なところ。(笑)方言をなるべくそのままに

するのが片淵須直監督の持ち味らしいですが、理解が追いつかない

場面もあるかも知れません。原作は数年前に連載されていた

漫画なんですが、速攻 amazon さんにお願いした次第です。(^ ^)

2016年11月17日 木曜日

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「湯を沸かすほどの熱い愛/PK」

僕は鑑賞した映画は劇場、DVD問わずリストにして評価

している(え?暗い?)のですが、年末にはそれを見直して

年間ベスト3を決定していたりします。(え?暗い?笑)

いや、もう今年はそれ無理。傑作が多すぎる。

 

「湯を沸かすほどの熱い愛」は末期癌で余命数ヶ月を宣告

された主婦の死までの生き様を描いたヒューマンドラマ。

寸評を見ると「最期までにやっておきたいことをパワフルに

こなしていく様に感動」などとありますが、そんな優等生な

映画では全くありません。所々にエッジの効いた爆弾を仕込ま

せた羊の皮を被った狼的作品です。

 

セリフや演出などの総合的な完成度で言えば「永い言い訳」

の方が遥かに上なのですが、パンチ力は断然こちら。主演の

宮沢りえさんはキャリアハイの演技ではなかろうか。しかし

そのさらに上を行くのは娘役の杉咲花さんでしょう。CMで

ぐっさんとむっしゃむっしゃ回鍋肉食べてるコですよ。実際は

19歳らしいので子役とは言えないですが、問答無用に

上手かった。素晴らしい。

 

監督脚本は中野量太さん。本格的な監督は今作が初なんだと。

恐らくラストシーンのためにタイトルからキャラ設定まで全て

作ったんだろう、と思われる。脱帽です。これまた必見作です。

涙腺大決壊映画でもあるので、鑑賞には気をつけて。(^ ^)

 

そして「PK」。密かに一番期待していた作品です。「きっと

うまくいく」の監督と主演が再タッグ、ということで何も前情報

を入れずに鑑賞。いきなり主人公が宇宙人でびっくらこきましたが、

これは展開上必然なのが分かります。インド映画なので、長尺で

お決まりのダンスシーンもあるのですが、今作はそれらは随分

抑えられて、ハリウッド的に寄せている印象です。しかし

アーミル・カーンさんの身体は相変わらず異常。51歳だそう

ですが、20代でも通用しちゃうでしょう。

 

今回扱うテーマはズバリ「宗教」。しかもかなり挑戦的です。

コメディータッチでいてその実、テーマは超社会的です。こんなん

よく上映できたな、と思ったら一部の地域では禁止になった

そうな。そりゃそうさね。ある意味この作品も羊の皮狼です。(造語)

 

ハリウッドに寄せたとは言え、ボリウッドであることは変わりなく

好みはかなり分かれるとは思いますが、テロが顕在化している

現代にあって、この作品の訴えは全世界に響くことでしょう。

紛れもなく傑作です。上映館数が少ないのが痛いところです。

 

淀川長治さんや水野晴郎さんが生きていたら、今年の映画界の

盛況ぶりに入れ歯を飛ばして(未確認)喜んだことでしょう。

いやぁ、ホントに映画って素晴らしいですね、さよなら、さよなら。

2016年11月4日 金曜日

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