院長室

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「モヒカン故郷に帰る」

「ヤンキー母校に帰る」のもじりかと思ったら全然

違ってた。うだつの上がらない若者が彼女の妊娠を

機に結婚を決意し、報告のため故郷の瀬戸内海の島に

帰ったら父が末期の癌だった、というお話。

 

これだけ見るとすごく重い映画みたいですが、ところが

どっこい爆笑必至のギャグ満載映画です。デスメタル

バンドのボーカルだけど自己主張のないぼんくら

主人公を松田龍平さん、軽くて薄い彼女を前田敦子さん、

父親が柄本明さんで母親がもたいまさこさん。なんか

この布陣がすごいのですよ。あっちゃんのバカっぷりが

ややわざとらしいですが、皆さん素晴らしい。特に

もたいさんが良い。

 

ややもするとお涙頂戴な展開になりがちな題材にギャグを

てんこ盛りにするだけでも面白いですが、しっかりホロリ

ともさせます。しかもそれが王道でないところがまた

すごい。俳優陣も上手いが脚本演出も1級品です。最大の

見せ場である父親の臨終シーンにすごい仕掛けがあります。

こんなん観たことねぇ。ああ、言いたい。(笑)

 

全体的にはゆるゆると展開しますが、だからこそ効くギャグ

の数々。その影に隠れてしっかり描出される日本の田舎町の

リアル。最後までふざけたエンディング曲。(笑)極めて

完成度の高い映画です。グレイト!(yazawa風←ややネタバレ^ ^;)

2016年4月25日 月曜日

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「ルーム」

えっ?「腸ケア」じゃないんかい?!すんません、天の

邪鬼で。なかなかの作品だったもんで。しかも次回の

答え言っちゃってるし。(^ ^;)

 

ある部屋で暮らす若い母と幼児。とても幸せそうですが、

何か違和感が。実は7年前に誘拐されてそのまま監禁された

少女が犯人に産まされた子供と暮らしているのです。当然

母親は脱出を望んでいますが、子供にとってはこの部屋が

「すべて」なので…というお話。

 

すわ、凝ったワンシチュエーションスリラーか、と思い

きや意外とあっさり脱出に成功します。実はこの映画は

サスペンス要素はツリで、本題はその後の生活にあるの

です。部屋が「すべて」だった子供の変化、犯罪者の

子供として見る祖父の眼、そして事件後のインタビュー

からあることに気付いてしまう母親。など、異常に濃い

人間模様が展開されます。

 

爽快感や押し寄せる感動がある作品ではありませんが、

とてもよく練られていて、自分がもしそれぞれの立場

だったらどうか、と深く考えさせられます。登場人物が

少ない分、それぞれの演技が重要になりますが皆さん

とてもお上手。最重要人物の子役が上手すぎてむしろ

リアリティを欠くのが難点と言えば難点ですが、でも

素晴らしい。

 

マーベルヒーローや人気漫画頼みの昨今、こういった

類のクセのある力作が増えると嬉しいです。

 

2016年4月14日 木曜日

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「あやしい彼女」

いや、おもしろいよコレ。73歳のちゃきちゃき婆ちゃんが

20歳に若返ってしまうというファンタジーコメディ。そんな

ジャンルも観るのデス。

 

女手ひとつで娘を育て上げ、周囲からは距離を置かれる悪態

ぶり、でも気概は人一倍高貴な元気印の婆ちゃんがひょんな

ことでぴちぴちギャル(死語)になっちゃったことで巻き起こす

騒動がとても小気味よくて楽しい。この手の作品にツッコミを

入れるのはナンセンスですが、その分強力な魅力や迫力が

要求されるジャンルでもあります。ファンタジーのくせに妙に

説明セリフが続いたり、役者がハマっていなければ急に冷め

ちゃうんですよね。

 

この作品においての魅力は、何と言っても若返った婆ちゃんを

演じる多部未華子さん。なんかめっちゃかわいい。今風でない

顔立ちが功を奏して、違和感なく物語に引き込みます。そして

迫力は歌。多部ちゃん、うまいやん。過去を思い出しながらの

歌唱シーンは圧巻です。この演技の説得力を出させているのは

リアル婆ちゃん(?)を演じる倍賞美津子さんのおかげなわけ

ですが、にしても多部さんに依るところが大きい作品です。

 

また要潤さん、小林聡美さん、志賀廣太郎さん、といった

実力派俳優陣も出過ぎず、ハシャギ過ぎず、ちょうど良い演技

で心地よかったです。その勢いで主題歌の「帰り道」もつい

過剰評価してしまうほど。(^ ^;)

 

監督は水田伸生さん。「謝罪の王様」での悪ノリを反省した

のか(笑)、バランスの良いコメディ作品に仕上がっております。

韓国映画のリメイクなのでオリジナルでないところは残念無念

ですが、心の洗濯になる素敵な映画です。

2016年4月4日 月曜日

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「ヘイトフル・エイト」

タランティーノ監督最新作。吹雪の山荘に閉じ込め

られたワケあり8人が織りなすミステリー、みたいな

触れ込みですが、そこはそれ、タランティーノですもの、

な作品(笑)デス。

 

確かにこれまでとちょっと違ってミステリー色は濃い

です。会話が多いのが彼の作品の特徴ですが、今回は

意外と無駄な(^ ^;)台詞は少なく、伏線になるように

練られています。お?!成長したじゃん、と思うと

見事にヤられます。ネタバレ厳禁の作品なので言え

ませんが、まあ見事にやりたいことやってます。ゾンビ

が出てこないだけで、結局あとはいつも通りという

安定感(?)。

 

R18指定なのですが、それ以上に単純に不快な描写が

多いです。クールな知能戦のミステリー、だけは期待

してはなりませぬ。本当はその裏切られ感も計算されて

いる脚本でしょうから、こうレビューしちゃうのも

反則なんでしょうけど、でも折角の映画鑑賞の時間、

不愉快になりに行く必要もないしね。なんと3時間

近くあるのよ、今作。タランティーノ好きには苦になる

どころか微笑ましい時間なんですが、まあ常軌を逸して

いますからね、彼は。こう言われて好奇心に勝てない人

は向いてます。(笑)

 

主演のサミュエル・L・ジャクソンさんやカート・ラッセル

さんは流石の演技です。みんなヒゲ面で見分けが付かない

と思いきや、胸焼けするくらい個性が濃いので問題なし。

紅一点のジェニファー・ジェイソン・リーさんはアカデミー

賞の助演女優賞にノミネートされてましたが、まあ

差別用語連発のこの作品が公の場で賞賛されるような

ことはないでしょうな。

 

と散々ネガティブキャンペーンを張ったようですが(笑)

いつもながら監督のオリジナリティは賞賛に値します。

オメーも映画好きなんだな、というのが痛いほど分かる。

実際に調べてみると今作の作製にも緻密な調査と、撮影や

音楽へのこだわりと、ファンサービスに溢れています。

名優といわれる人達がこぞって出演したがるのも分かり

ますね。最近は洋画は続編やリメイク、邦画は人気漫画の

映画化、と「私、失敗するのコワイですから!」と

言わんばかりの風潮が流れていますが、こういう破天荒な

独自路線こそむしろ映画界を発展させるものと思います。

 

全く万人受けしないどころか積極的に勧めたくない作品

ですが、でも映画って本来こういうモンだぜ、と再確認

できるのは貴重です。おすぎでした。

 

2016年3月3日 木曜日

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「オデッセイ」

火星探査中の事故で、一人不毛の惑星に取り残された

宇宙飛行士のサバイバルと救出作戦を描く物語。かなり

前から宣伝されていて、主演マット・デイモン、監督

リドリー・スコット、ということで逆に警戒して

いましたが(笑)、紛う事なき傑作でした。

 

生存確率が極限に低い状況の中で、物語は努めて明るく

進行します。この対比バランスが心地よい。小賢しい

悪役や頭の固い上司など邪魔くさい定番キャラは存在せず

スピーディーに展開しますし、何よりBGMの選曲がイイ。

妙に明るい70年代ディスコソングが随所に挿入されますが

不似合いかと言うと、全然そんなことなくてむしろ歌詞の

マッチングに驚かされます。特に故デヴィッド・ボウイの

「STARMAN」が良い。ちなみに布袋寅泰もカバーして

たりしますが。

 

宇宙ものは小難しい専門用語が出てきたり、現実離れした

トンデモ演出だったり、結構取っつきにくいジャンルでも

あるのですが、全てほどよいバランスで驚くほど間口の広い

作品になっています。僕みたいな天の邪鬼にはその辺りが

ちょっと物足りないのですが(笑)、それでも150分

近い長い上演時間が全く苦にならない。これも一重に

「孤独」「静寂」「恐怖」「死」「未知」という陰の

イメージに「仲間」「生」「歌」「希望」「ユーモア」と

いう陽のイメージをうまく対比させるセンスのなせる業です。

 

主演のマット・デイモンさんはさすがの演技。そろそろ

ジェイソン・ボーンは卒業したらいいのに、と思ったら続編

鋭意制作中ですと。どう頑張ってもイーサン・ハントには

なれないぜ?!艦長役のジェシカ・チャスティンさんとは

なにげにまた宇宙もので共演です。

 

「ゼロ・グラビティ」「インター・ステラー」と来て本作。

ここ最近の宇宙ものはハズレなし。これらを気に入った方は

是非「月に囚われた男」を観て頂きたい。監督さんは

デヴィッド・ボウイの息子だったりします。

 

 

2016年2月11日 木曜日

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