院長室

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「シン・ゴジラ」

庵野、やりやがった。(敬称略)2年前のギャレス・エドワーズ

版はゴジラの怪獣映画的側面を突き詰めていて、賛否はありました

が僕は大好きでした。そして今作、エヴァンゲリオンの庵野秀明

さんが総監督を務める日本発のゴジラ最新作は、ゴジラの社会的

側面を強烈に押し出した傑作となりました。

 

まあゴジラはファン層が幅広いので、やはり今作も賛否があると

思いますが、子供向けでないポリティカルな作品に仕上がって

いる点で、初代作品へのオマージュが強い作風であることが

特徴です。「ゴジラvs〜」シリーズを期待して行ってはイケマセン。

 

特にゴジラを無慈悲な破壊者として描いている部分やそれに

直面する市民の描き方から、明らかに東日本大震災を意識して

いて、さらにはそれに対応した政府や官僚達への痛烈な批判

にもなっています。はっきり言って、これがメインです。

だからこそ、今作は日本人の心に刺さりますし、庵野監督が

敢えてゴジラに手を出した理由にもなっているのかと思います。

 

社会映画色が強いですが、怪獣映画としても十分見所は多く、

ゴジラが本領発揮するシーンには口ポッカーンになること

請け合い。(笑)ゴジラそのものの造形も登場から最後まで、

驚かされ続けます。そして随所にエヴァを意識させる演出があったり、

古き良き東宝映画的演出があったりと、庵野監督にしては観衆

寄りのサービスが目立ちます。でもこれも社会的要素に偏りがちな

内容のバランサーになっていて、とても賢いと感じました。

 

宣伝方法も秘密保持が徹底していて、昨今目立つCMでの重大

ネタバレ事案にならなくて本当に良かった。俳優陣もチョイキャラ

まで有名俳優が起用されているので、それを探すマニアックな楽しみ

にも対応してくれます。ひとつ難点を挙げれば、石原さとみさん役

のキャラですかね。ルーです。大柴です。いや、それを演じきってる

彼女は素晴らしいんですが。(^ ^;)

 

いや、派手で軽くて観終わった後マッハで忘れる感動を押し売り

するSF超大作的ハリウッド映画の対極に位置する、あらゆる

意味で純和風な力作です。

2016年8月4日 木曜日

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「ボーダーライン/サウスポー」

今回は硬派な2本を紹介。

 

「ボーダーライン」はメキシコを舞台とした麻薬に絡んだ

犯罪映画。町並みが似ていて、人物名が分かりづらく、展開が

早いので、結構ついていくだけでやっとですが、その緊張感

はハンパない。暗視スコープをつけて敵地に侵入するシーンは

圧巻です。息止まりそう。結構エグイ表現もあってそちら方面

でも息が止まりそうになります。(^ ^;)

 

特筆すべきは俳優陣。久々登場のベニチオ・デル・トロさん

は、そのシブさにもうクラクラです。ジョシュ・ブローリンさん

もカッチョ良い。最近よく見かけるエミリー・ブラントさん

も良かった。味のある美人さんですな。邦題についていつも

文句垂れてますが、今回に限ってはこの邦題で良かったです。

これを意図して仕掛けたとしたら、この宣伝マンは有能ですわ。

 

そして「サウスポー」。成功と奈落、そして再出発を描いた

ボクシング映画。主演のジェイク・ギレンホールさんのキレキレ

ボディもレイチェル・マクアダムスさんの可憐な人妻具合も

とても良いのですが、何と言ってもこのジャンルは「ロッキー」

という不滅の名作がありますし、昨年末に「クリード」という

大傑作まで作製されてしまっているので、どうしても2番煎じ

になってしまう。

 

逆に比較されることに開き直ったのか、オマージュに思える

シーンもちらほら。意図してやったのなら、というか確信犯

だろうな。(笑)全体的に安っぽい作りになってしまっては

いますが、真正面から「ロッキー」にぶつかっていく姿勢を

評価したいところです。この映画では子役が結構重要ですが、

日米の子役の質の差に愕然とさせられるくらい上手です。

日本はまだ「大人の描く子役像」を良しとしている傾向があり

ますからねぇ。子役が下手なのではなくオトナが原因なんだと

思います。

 

さてこの2作、共通点はな〜んだ?

答は…もう公開が終わってしまったこと!(ええっ)すごい

良い映画なのに超速で終了してしまいました。収入があまり

見込めないとこうなる運命ですが、それだけで質の良い映画が

淘汰されるのは惜しいですね。名駅にできる新しいシネコン

に期待です。

2016年6月30日 木曜日

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「デッドプール/エクス・マキナ」

どちらもR15指定なのでよい子のみんなは観られないよ!

 

まずは「デッドプール」。マーベルヒーローの脇役ですが、

この度堂々の主役に。自身の病がきっかけで不死身になって

しまったというオバカ設定でかつシンプルな勧善懲悪モノ、

というシンプルさ。そしてセリフは超下品。これだけ聞くと

大して興味も湧かないかも知れませんが、いやはやどうして

めっちゃオモロイ。

 

と言うのも、映像の見せ方の工夫が素晴らしく、また他の

作品をイジりまくったり、自分をディスったり、観客に

語りかけたり(これをメタフィクションと言う)、まあ

派手にやりたい放題で爽快なんです。全編にわたる下ネタ

や、お下劣言動も主人公が純粋なのであまり嫌悪感はあり

ません。女性は引くかも知れませんが。(^ ^;)「マト

リックス」に比肩…とまでは言いませんが、次作も期待

してしまう良作です。

 

そして「エクス・マキナ」。これは問題作です。ある研究者

が開発したAIを搭載したロボットのテスト、という設定で

ほぼ密室劇かつ登場人物は4人、でもとってもスリリングな

センス効きまくりの作品。AIものは一つのカテゴリになる

くらい古来数々の名作があるので、どこに新鮮味を持って

くるのか興味がありましたが、一つは視覚効果。この部門で

アカデミー賞を受賞したのも頷けます。

 

そしてもう一つは「性」でしょうか。ここがR指定になる要素

かも知れないですが、でもだからこそ若者にも観て欲しいな

と思います。AIものは人間の存在、意識が俎上に上るので、

どうしても哲学的な流れになってしまいますが、ここに「性」

を持ってくるのは必然でしょう。新進気鋭の女優さんのヌード

が拝めるぞい!なんていうゲスい大人の目線ではなく(笑)、

純粋な若者の感性でこれを観て欲しい。そして衝撃を受けて

欲しい。もしかすると覚醒者が出るかも?!難点は上映館が

少なすぎること。観に行こうと思うと軽く半日つぶれます。

 

第3者の厳格公正な視点で見ても違法ではないが不適切な

表現だらけなので(←言ってみたかっただけ)、R指定は

仕方のない2作ですが、それだけドンガった作品でもあり

ます。観る価値アリです。

2016年6月16日 木曜日

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「神様メール/殿、利息でござる」

またしても2本立てレビュー、失礼します。なんせ今月は

必修作品(笑)が多いので時間割が大変なんですよ。

 

さて、1本目「神様メール」。ベルギーの作品ですが、

これはぶっ飛んでて面白い。全知全能の創造主である神が

性格の悪い小汚いオッサンで人類に嫌がらせばかりしてて、

それを見かねた10歳の娘が地上に降りて導こうとする、

というお話。もう設定だけで笑えますが、決してコメディ

ではなく、テーマはズバリ「生と死」です。ヘンテコな

設定は深淵なテーマをライトに見せるための舞台装置

なのかも知れません。随所に「?」な部分もありますが、

キワモノっぽく見えて実は素敵な映画です。

 

ただ公式サイトの解説は結構本編の内容とズレてて、誤解を

産むかも知れないです。邦題もおかしいし。決して「神様

から素敵なメールが届いて人生が変わった。」的な映画では

ないのでご注意を。しかし、この映画が「マッドマックス

怒りのデスロード」の興行収益を抜くベルギーのお国柄が

素敵。尊敬に値する。

 

そして我らが日本の映画、「殿、利息でござる」。貧困に

あえぐ村民が領主に銭を貸す、という大胆な発想で存亡の

危機を免れる、という実話ベースの作品です。主演の阿部

サダヲさんはじめ、瑛太さん、きたろうさん、妻夫木聡さん

皆さんとてもお上手。特に当時の生活の演出はリアリティー

があって秀逸。これを体感するだけでも価値があるというもの。

 

しかしながら、完全に宣伝方法を間違ってしまっているのが

もったいない。あたかもギャグ映画のようなCMが流れて

いましたが、ユーモラスに描いているだけでギャグはありま

せん。またCMで超重要人物を出しちゃってる最悪ぶり。

アノ人が出てくるのを知っちゃってるので、ラストのカタルシス

が台無しです。お話自体は忍耐がメインなので地味なんです。

でも「地味な苦労話です!」では観てもらえないので(笑)

苦肉の策なのかも知れませんが、若干詐欺っぽいですわ。

 

2本とも前情報がアテにならないという共通項がありますが、

幸せを感じられる作品、というのも共通しています。是非どうぞ。

2016年6月2日 木曜日

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「変態仮面2 /ズートピア」

全国の福田雄一ファンが歓喜した変態仮面続編制作の報。

ついに公開となりました。そもそも、僕も前作を友人に

教えてもらったことから福田教(?)に入信した者です

ので、続編嫌い気質ではありますがとても興奮して待って

おりました。

 

いやー、やっちゃったね。「薔薇色のブー子」レベルに

やっちゃったね。もちろん期待が高すぎたってのもある

けど、なんかそれ以前。全体的に守りなんですよ。前作は、

「えっ?!コレを映画化?!」「主人公クリソツ」

「脇役パワーすげー!」など度肝抜かれっぱなしでしたが

今回は脚本に無理がありすぎるし、演出も雑だし、何より

前作に頼りすぎ。

 

では俳優陣は素敵だったかというと、これまた物足りず。

鈴木亮平さんはカメレオンっぷりを発揮してるけど、

初参戦の柳楽優弥さん、水崎綾女さん、前作からの

ヒロイン清水富美加さんなどどうも皆楽しんでいない。

福田教信者にはありえない佐藤二朗抜きで孤軍奮闘の

ムロツヨシさんも空回り気味でさ。やはり福田作品は

脇役の「変態度」がキモですよ。「変態仙人」と

「鬼モード」には笑ったけど、前作ほどの衝撃はなく。

結局「大洗」や「明烏」などシナリオ勝負の作品の方が

面白いという結果です。「ヨシヒコ」の第3弾に期待。

 

対してディズニー最新作「ズートピア」は傑作レベル。

東海地方では吹き替えしかないので観る予定ではなかった

のですが、どうしても口直しがしたく鑑賞。結果大正解。

見逃さなくて良かった〜。映像、脚本、演出すべてが完璧。

意外とミステリー要素が強かったり、テンポも良く、

全年齢対応でも大人寄りというディズニーでは珍しい作風

です。自信の裏返しの余裕なのかね。あまりに完璧だと

逆に白けてしまう天の邪鬼な僕の性格上(笑)満点では

ないのですが、近年のディズニー映画では突出している

デキだと思います。劇中に出てくるニンジン型のボイス

レコーダーがしっかり商品化されてて笑った。ポチりそう

になったけど自制した。高いよ。

2016年5月19日 木曜日

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