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漢方薬解説-3 麻黄湯

漢方薬紹介3回目は麻黄湯です。インフルエンザの治療で使用

する機会があるので、比較的有名な処方です。

 

・麻黄湯(マオウトウ 27番)

構成:麻黄5g+桂皮4g+杏仁5g+甘草1.5g

 

非常にシンプルに4つの生薬のみで構成されています。一般に

構成生薬数が少ないほど速効性がありますので、風邪などの急性

疾患に使用する漢方薬は生薬数が少ないことが多いです。

 

葛根湯の中にも配置されていた麻黄+桂皮がメインにあります。

これは体表を温め発汗させて解熱を促す効能があるので、悪寒

発熱かつ汗がない、という病態が対象になりますね。葛根湯に

比べ麻黄、桂皮共に配合量が増えていますから、ここに注力

した処方であることが分かります。発汗過多に対する甘草も

ありますね。杏仁はあんずの種のことで、喉の腫れや咳を

収める効果がありますから、ノド風邪向きの処方というのも

分かります。

 

注意点は麻黄の量が結構多い、ということです。麻黄はエフェ

ドリンという成分が多く、これによって交感神経過緊張を招く

ことがあります。症状では悪心や胃部不快が多いですが、尿が

出にくくなったり、やたらまぶしく感じるようになる、なんて

こともあります。それに対抗する胃腸系の生薬は配置されて

いませんので、副作用が出たら速やかに中止すべき、ある意味

“攻め”の漢方薬です。もちろん常用はしません。

 

インフルエンザの流行期によく使用されますが、決して抗ウィルス

作用があるわけではなく、感染時の症状が麻黄湯の守備範囲に

一致している、というだけです。予防効果もありません。あまり

発熱がなく倦怠感が主のB型では麻黄湯の効果は薄いでしょうね。

逆に症状がマッチさえすればインフルエンザ以外の感染症に

だって効果はあります。

 

ちなみに麻黄湯と桂枝湯を半分ずつ混ぜて、胃腸に配慮できる

ようにし、麻黄量を抑えた処方があります。桂枝湯、麻黄湯

各半分ずつ、と言う意味で「桂麻各半湯(ケイマカクハントウ)」と言い

ます。素直なネーミングですねぇ。(笑)1袋の量も少なく

飲み易いのでウチでは結構使うことが多いです。

2020年1月23日 木曜日

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脳のチカラ

先週末はセンター試験でしたね。患者さん、患者さんの

御家族にも受験者がいましたがどうだったかなー?天候には

恵まれた感じでしたが。僕は飲んでましたが。(^ ^;)

 

もう30年近く前ですが、思い起こせば試験の日はかなり緊張

したし、思ったような結果が出せなかったし、あの時栄養療法を

知っていれば…!とか思わないでもない。もしかしたら働かない

で生きていく方法を発明していたかもなぁ。(笑)

 

緊張するのも実力を出せないのも、結局は脳機能によるもの

ですが、脳を客観的に評価するのは意外と難しいです。画像

検査は形態的な異常を発見する意義が大きいので、機能の

尺度にはなりにくい。セルフチェックするにしても、その判断

をするのも脳ですから脳機能に不調があれば、鈍感になって

放置してしまうかも知れません。

 

学問に限ったことではなく、柔軟な発想ができたり、冷静に

判断ができたり、物事を俯瞰して捉えられたりする能力はとても

魅力がありますよね。性格や先天性のものも当然あるでしょうが、

脳の特性を知れば対策を練ることはできます。「脳は脂肪で

できており、燃費が悪い」です。

 

脳は脂質が大部分を占めている臓器なので、悪い脂質を摂って

いれば当然脳機能にトラブルを生じます。そして燃費が悪いので

短時間しかもたない糖質をメインエネルギーにしているとすぐに

ガス欠になります。ファストフード店のフライドポテトや

夜食にラーメンやチョコ、なんてものを食べていたら長丁場の

試験は戦いきれないでしょう。

 

メインに青魚をしっかり食べて、飲み物にココナッツオイルを

入れる、もちろん空腹状態で糖質を摂らない、これだけでも

脳は喜ぶと思います。まだまだ2次試験があります。能力を

最大限に発揮するために“脳”力を養いましょう!ちなみに睡眠も

しっかりと。僕は大学生の時、気合い入れて遅くまで勉強して

朝起きられず試験をすっぽかしたほどの男ですからね。実感

こもってます。(笑)

2020年1月20日 月曜日

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漢方薬解説-2 葛根湯

漢方薬紹介の2回目です。今回は落語のネタにもなっているほど

有名な葛根湯です。葛根湯を風邪薬として認識していますか?

はたまた肩こりの薬でしょうか?それも生薬の構成から見ると

腑に落ちると思います。

 

・葛根湯(カッコントウ 1番)

構成:

葛根4g+麻黄3g+桂皮2g+芍薬2g+甘草2g+大棗3g+生姜2g

 

上記の通り、葛根湯は7種類の生薬から構成されます。葛根湯の

効果はそれぞれの合算、ではあるのですが桂皮以降の5種類で

桂枝湯(ケイシトウ 45番)という薬になります。これが悪寒の

ある風邪の初期に使われるんですね。配合量は多少違いますが。

 

つまり葛根湯は桂枝湯に葛根と麻黄を加味した薬、と見ること

ができるわけです。麻黄は桂皮と組み合わさることで発汗作用を

強め、桂枝湯の効果を高めます。発汗させることで解熱させます

ので発熱時に使えますね。発汗し過ぎて脱水になることの予防策

として潤す効果のある甘草が配合されています。既に発汗がある

場合には使いにくい、というのも分かります。麻黄を中心に

据えた方剤を「麻黄剤」と呼んだりしますが、大抵は脱水予防

に甘草が併用されています。葛根湯も麻黄剤の一つです。

 

では葛根はどんな効果を持つのかというと、後頚部〜背部の鎮痛

です。これが肩こりに使われる所以です。さらに少量ではあり

ますが芍薬甘草湯(芍薬+甘草 68番)も配合されています

ので、鎮痛効果を高めることになっています。以上を考慮すると、

葛根湯が効く風邪は汗が出ていなくて、発熱悪寒があり、筋肉痛

や頭痛があるタイプ、ということになります。また、咽頭痛や咳の

生薬は配合されていないので、そういう場合は他の漢方薬にするか、

何か追加して対応することになります。どんな風邪でも効くわけ

ではないんですね。

 

ちなみに甘草+大棗+生姜の組合せは消化器系を助ける効果が

あるので、副作用防止の意味で様々な漢方薬に配合されています。

麻黄は過量になると胃部不快が出ることがあるので、葛根湯に

入っているのも頷けます。ちなみにちなみに、この麻黄の副作用

を嫌って桂枝湯に葛根だけ追加した桂枝加葛根湯という薬もあり

ます。これなら安全ではありますが風邪にはあまり効かなくなり

ます。ウチでは採用してませんが。

 

葛根湯の他にも桂枝湯からの派生処方は結構あります。それだけ

昔から重宝された薬だったんでしょうね。

2020年1月16日 木曜日

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体質と言うなかれ

患者さんにとっても我々医療者にとっても「体質」と言う言葉は

非常に便利です。「風邪を引きやすい体質だから」とか「痛みが

取れづらい体質だから」みたいな逃げ道になり得るからです。

 

近年、遺伝子解析技術が進み一般レベルでも検査ができるように

なりました。調べてみると確かに「乳癌になりやすい遺伝子」や

「ビタミンBを利用しにくい遺伝子」などがあることが分かり、

例えば他人よりもビタミンB群を多く使用しなければならない

体質、というのはあります。

 

ただこれも検査をしたから導かれる回答であって、治らないなら

体質のせい、と短絡的に決めるのとは意味が違います。患者さんが

弱気になって言うのは仕方がないことですが、我々が特に根拠も

なく体質のせいにするのは誠実さに欠けるかな、と思うわけです。

 

栄養療法では深い視点で通常では見落とされる病態を拾い上げる

ことができます。僕はここが一番の魅力だと思っていますが、

もしそこに問題があるのであれば、体質ではなく生活習慣かもよ?

と言えるわけですから、治療に希望が待てますよね。多くは

食生活に起因するので、治療提案が受け入れられるかは別問題

ですが。(^ ^;)

 

かく言う僕も栄養療法を知る前はひどい食事パターンだったので

患者さんの気持ちも分かります。僕は「治す側」だったのでより

真剣に取り組めただけかも知れません。ただ自身が患者経験あり、

というのも栄養療法の特徴です。僕だけでなく、栄養療法実践Dr.

の多くは自身も治療経験があるものです。栄養療法を通じて、

“共感できる体質”になったかも。(笑)

2020年1月13日 月曜日

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漢方薬解説-1 芍薬甘草湯

最近の院長室が栄養療法に偏りつつあるのを少し反省して、

今年は漢方薬にもっと言及していこうと思います。かねてから

言っている通り漢方薬は生薬の集合体で、それぞれの生薬の

効果効能の合算がその漢方薬の効き所となります。つまり構成

する生薬の特徴を知ることが、漢方の効かせやすさに直結

するわけです。

 

まず今回は初回ということで一番シンプルな芍薬甘草湯を取り

上げてみます。カッコ内の番号は医療用エキス剤の番号です。

 

・芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ 68番)

構成:芍薬6g+甘草6g

 

ご存知、こむら返りの特効薬と言われている漢方薬です。その

名の通り構成生薬は芍薬と甘草のみ、という最もシンプルな

漢方薬です。こむら返りのみならず、筋肉のけいれんを止める

のに長けているので、寝違いやぎっくり腰、しゃっくりや

生理痛なんかにもよく使用されます。

 

ただ、この筋肉に対する効果を有するのは芍薬であって甘草

ではないんですね。ではなぜ甘草が入っているのか?がこの

漢方薬のポイントになります。甘草は咽頭痛の薬として使われて

きましたが、同時に身体を潤す効果があります。ゆえに

芍薬甘草湯には「身体を潤しながら筋肉の緊張を取る」という

処方意図があるのが分かります。ということは脱水に伴う筋肉

の痛みに有効、となります。運動後のこむら返りとか透析後の

痛みが最も良い適応になるわけですね。同時に甘草が過量に

なると潤しすぎることになり、むくみや高血圧といった副作用

が出るわけです。

 

高齢者は生理的に脱水傾向にあるので芍薬甘草湯がよく効く

場合は多いのですが、予防効果までは無いし、むくみや高血圧

の可能性があるので基本的には常用する薬ではありません。

 

このように漢方薬の効果も副作用も、構成生薬を知ることで

より明確になります。全部の漢方薬を紹介するのは無理ですが

(なんせ140種類以上ある ^ ^;)、使用頻度の高いものを

こんな風に紹介していこうと思います。

2020年1月9日 木曜日

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