院長室

« 2月 2024 11月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

「ANNA」/「ランボー ラストブラッド」

映画レビューファンの皆様、お待っとさんでした。やっと映画館

も解禁され、公開延期になっていた作品が見られるようになって

きました。早速いきましょう。

 

まずは久々リュック・ベッソン監督のアクション映画「ANNA」

です。美貌の女性暗殺者がキレキレの活躍を見せるという、もう

一つのジャンルにしてもいいんじゃね?と思えるくらい、つまり

勝ち目の薄い戦いを挑んできたわけですが、まあそこそこ良かった。

このジャンル(?)は徹底的にリアルで攻めるか、異能を咬ませて

ぶっ飛ばせるか、で分かれるところですが、今作は前者。前者の

場合、主演女優のアクションに説得力があるかがキモになるん

ですが、その辺が意外と良かったのですよ。

 

その大役を務めたのがサッシャ・ルスさん。モデル出身だけあって

スタイルは文句ナシ、長い手足を活かして派手にアクションを

こなすし、これまた意外に演技もお上手。この女優さんを堪能

するためだけに観てもよいレベルです。反面、男性陣の演出が

ポンコツでキリアン・マーフィーさんら名優の無駄遣いに感じる。

まあそれこそ近年のリュック・ベッソンテイストなんですが。

 

欲張ってドンデン返し風味を加味しているところが評価を分ける

かも知れません。純粋にアクションとリュック・ベッソン(笑)

を楽しみたい人にはこのひとひねりは余分かも。ひねりを排除

したとしても「レオン」や「ニキータ」に並ぶ作品ではないです

けど。自粛明けの助走にはいいんでないかな。(笑)

 

そして色んな意味で不安だった「ランボー ラスト・ブラッド」。

ランボーの第5作目です。何が不安だったかというと既に4作目

で完結した、風になっていたから。しかもそれなりに納得する着地

だったので、まさか続編はないだろうと思っていたんですね。しかも

副題の「ラスト・ブラッド」は第1作の「ファースト・ブラッド」に

対応するもので、完全に今回での完結を示唆してるやん!4作目

はまさかの無視なの?!ってなったわけでやす。

 

で、期待と不安が入り交じる中で鑑賞しましたが、結論から言うと

ジェイソン・ステイサム案件でした。え?分かりにくい?(^ ^;)

これ、ランボーでやる意味ある?!ってこと。ステイサム氏あたり

がやるヤツやん、と。あ、僕はステイサム好きです。

 

ランボー作品の軸は戦争では英雄視されたのに、戦後は一転

邪魔者扱いされるという悲哀と孤独です。まあ早々に第2作から

そのテイストは薄まったわけですが(笑)、今回完結編なのに

そのテーマがほぼない。折角見つけた心安らかな生活をブチ

壊されてサツガイしまくる異常にタフな爺さん、というスジ。

 

申し訳程度に戦争のトラウマを匂わせたり、グリーンベレーの

テクを駆使して数多のトラップを仕掛けたり、というのはまあ

ランボーだんだけど、それ以外があまりに雑すぎて途中でシラける

可能性があります。犯罪者の巣窟で銃に囲まれながら「娘を返せ!」

って、そりゃ無理っしょ。メキシコ国境を車でぶち破るなんて

単なる犯罪っしょ。…ってツッコミが入りまくります。まあ

ランボー好き以外が観る可能性は低いと思いますが、ランボー好き

だからこそ首を捻る、という映画でもあります。自粛明けの助走…

にもツライかな。(^ ^;)

 

どちらもオールドタイプなアクション映画で、何かぶちぶち文句

言ってますが、映画館で観られたのは素直に良かったです。残念

ながら新作の撮影が滞っているので、しばらくは新作上映数が

少ないままでしょうけど、それでもつい興奮してこういう駄文を

書いちゃうオジサンが居るわけで、業界挙げてこの苦難を乗り

切って欲しいです。(^ ^)

2020年7月6日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ

漢方薬解説-18 十全大補湯

今回も大変メジャーな処方の紹介です。最近では抗癌剤の

副作用に対して使用されたりとか、西洋医学の現場でも

積極使用されている漢方薬です。

 

・十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ 48番)

構成:人参3g+蒼朮3g+茯苓3g+甘草1.5g

+当帰3g+川芎3g+芍薬3g+地黄3g

+桂皮3g+黄耆3g

 

変なところで改行されている時は…お分かりですね?(^ ^)

そう、「十全」と言うだけあって10種の生薬から構成

されていますが、よく見ると実はこれまで紹介してきた

処方を合わせたものなんです。上段は四君子湯(75番)、

中段は四物湯(71番)です。75番は消化吸収を助け

元気を出させる薬で、71番は血を作り、血流改善に働く

薬でした。

 

つまり48番は消化器系と循環器系を守備範囲とする薬、

ということになります。食欲低下や疲れ、皮膚の乾燥、

冷えなどが適応になります。ちなみに中段までの構成を

八珍湯(ハッチントウ)と言います。保険薬にはないですが。

で、さらに下段の2つの生薬が追加されているので48番

は八珍湯加桂皮黄耆とも表現できますね。

 

その桂皮(ケイヒ)と黄耆(オウギ)ですが、それぞれは加温

作用と水分調節作用を有しますが、人参+黄耆はとても

相性が良く、人参の効果を高めます。この2つの生薬が

配合されている処方を一文字ずつ取って “参耆(ジンギ)剤”

と呼んだりします。48番は参耆剤の代表選手です。

 

桂皮が配合されることにより、苓桂朮甘湯(39番)が

内包されます。芍薬甘草湯(68番)もありますね。また、

完全ではないですが当帰芍薬散(23番)も入っています

ので、48番はめまいや筋肉の張り、むくみにも効果が

あります。一応地黄が配合されているので、胃腸に配慮は

必要です。

 

過不足なく広く効果範囲を得る美しい配合だと思いますが、

決して抗癌作用があるわけではないので、癌に48番!

とか、48番で免疫アップ!というのは拡大解釈です。

 

ちなみに十全大補湯の読み方ですが、“ダイホ” ではなく

“タイホ” ですのでご注意を。知らずに誤読するとちょいと

恥ずかしいよ。

2020年7月2日 木曜日

カテゴリー 院長室

タグ

脱水を見抜くには

屋内でも脱水や熱中症になり得る、というのは随分一般化

してきた感があります。屋外の炎天下じゃなきゃ大丈夫、

なんて認識は危ないですからね。また、対策としてこまめな

水分補給や塩分摂取の重要性を説くのも以前より広まった
ように思います。

 

では、そもそも脱水や熱中症の徴候とは何でしょうか?これ

を知っておかないとせっかく処置方法を知っていても後手に

回ることになってしまいます。

 

一番分かり易いのは口の渇きですね。ただ高齢者では口渇を

感じづらくなっていたりするので、尿の色が濃いとか便が

いつもより硬いなんてのをチェック項目にすると良いです。

むくみは一見すると脱水とは真逆のように感じますが、血管

の中の水分が外部に移動しているわけで、むしろ血管内は

水分不足=脱水になっていることがあります。むくみがある

から脱水ではない、というわけではないんですね。

 

あと、特に理由のない倦怠感や食欲低下も結構頻度が高い

症状です。そして筋肉の痙攣。頻度が高いのはふくらはぎや

足のゆびですが、肩コリや腰痛の悪化、筋肉痛が改善しない

というのも同系列の症状です。これらは水分不足に加えて

ミネラル喪失も併存しているサインだったりします。必ず

ミネラル補給も同時にすべきです。

 

定期的に血液検査をされている方は、ビタミンB群不足との

関連も留意してください。ビタミンB群が明らかに不足

しているのにタンパク質不足が見られない場合、脱水を

疑います。ビタミンB群はタンパク質合成に必須ですから、

不足すれば即ちタンパク質不足に繋がります。なのに

タンパク質正常ならば逆におかしいと見るべきなんですね。

さらに亜鉛やマグネシウムなどの不足所見が見られれば

ミネラル不足も併存している証拠になります。

 

脱水・熱中症はコロナウィルスとは違って充分に対策が

できるものですから、徴候を知り正しく対策しましょう!

2020年6月29日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ

蹴るのではなく残す

足が原因となる諸症状があり、足のアーチ構造がとても重要

な役割を果たす、というお話をすると、次によく聞かれるのが

どんな歩き方が良いのか?という点です。

 

アーチ構造が良くなるとクッション性が増すので、自然と良い

歩き方になるものではありますが、アーチ構造改善は一朝一夕

には達成できないのでもちろん歩き方は大切です。また、悪い

歩き方をしていれば余計な負担が増えるので、アーチ構造障害

とは別に悪影響もあります。

 

さて、歩き方に関しては実に色々な意見があります。例えば

踵から着地するのか、爪先から着地するのか、などの着地論に

始まり手を振って歩くのか、手を振らない“なんば歩き”が良い

のかとか、肩幅で歩くのか、一直線上を歩くのか…etc.

 

どの論にもそれぞれの理があるのは確かです。でも逆にそれは

芯の通った理論がないから百花繚乱になってしまう、とも言え

ます。こういう時はどれが正しいのか、よりも何を優先に

考えるか、がポイントです。もちろん治療の一環でやること

ですから、自覚症状の改善が最優先であることは当然ですが、

次に来るのはやりやすさ、です。何故なら歩くことは呼吸と

同じくらい無意識にやっていることだからです。

 

もし完璧な理論であっても、その手順が10個もあって煩雑

ならば到底日常生活には落とし込めません。あれこれ考え

ながら歩くなんてできないですよね。ですから、僕的には

歩行の際に気を付けることは一つだけ!にするのが最適だと

思います。

 

で、やっとこさ結論ですが(笑)、良い歩き方を達成する

ためには「足の親ゆびを残すこと」としたいです。これは

地面を蹴るということではなく、あくまで最後まで残す、

離さないということです。これの最大のメリットは足首の

力が抜けることです。足首に力が入った状態で歩くと疲れ

やすいですし、すねの前面に負担がかかります。これが

巡り巡って良い歩行を妨げます。

 

詳細なメカニズムは割愛しますが、アーチの再構築と共に

足首の力を抜く=親ゆびを残すという意識で歩くのが簡単

かつ効果的です。

2020年6月25日 木曜日

カテゴリー 院長室

タグ

漢方薬解説-17 六君子湯

人参湯、四君子湯と来れば次はこの処方、六君子湯です。こちら

の方がはるかにメジャーですね。その構成を見てみましょう。

 

・六君子湯(リックンシトウ 43番)

構成:人参4g+蒼朮4g+茯苓4g+甘草1g+大棗2g+生姜0.5g

+陳皮2g+半夏4g

 

上の段が四君子湯ですので、六君子湯は四君子湯に陳皮(チンピ)

と半夏(ハンゲ)を追加した処方となります。四君子湯加陳皮半夏

とネーミングしなかったのは陳皮も半夏も君子並みの素敵な生薬

だったんでしょう。知らんけど。この手法は抑肝散でも見られ

ましたね。陳皮、半夏ともに嘔気嘔吐を抑える生薬ですので、

これらを加えて胃腸機能を回復させるという方法は常套だった

のかも知れません。

 

四君子湯はそもそも胃腸の薬でしたから43番はさらにそれを

強化していることになります。陳皮と半夏は痰がらみの咳にも

効果があるので、消化器系と呼吸器系の症状が併存する場合は

尚よい選択になります。注意点は半夏に乾燥作用があること。

副作用がなく効果が高いのが君子たる所以でしたが、半夏だけは

注意が必要です。口渇や舌の乾燥がある場合、基本的には適応外

です。こんな処方があります。

 

・小半夏加茯苓湯(ショウハンゲカブクリョウトウ 21番)

構成:半夏6g+生姜1.5g+茯苓5g

 

妊婦のつわりによく用いられてきた処方ですが、よく見ると3種

の生薬全て43番に入っているものです。用量はこちらの方が多い

ので、嘔気嘔吐に特化した薬と言えるでしょう。また、こんな処方

もあります。

 

・二陳湯(ニチントウ 81番)

構成:半夏5g+生姜1g+茯苓5g+陳皮4g+甘草1g

 

21番に陳皮と甘草を追加していますが、これまた5種全てが

43番に配合されています。当然これも嘔気嘔吐の薬です。じゃあ

21番も81番もいらなくね?と思われがちですが、まあ僕もそう

思います。(オイ)言い換えれば43番は21番も81番も内包した

人参を主薬とした処方、となり、重宝される理由が分かります。

疲れて食欲がなく悪心があったり咳が続く、と来れば43番が

第1選択でしょう。もちろん口渇には注意です。

 

余談ですが、43番は海外でも臨床研究されている国際的にも

認知度の高い漢方薬です。そこでも高い安全性が報告されている

ので、安心して使用できます。さらに余談ですが、以前43番の

プロモーションで「りっくん」なるゆるキャラ(?)が作られ

ました。よく見ると顔が胃袋の形をしているというキモ…シュール

な造形で一部のニッチな界隈で人気を博したとかしないとか…。

2020年6月22日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ