院長室

« 2月 2024 11月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

抵抗性と過剰分泌

これはインスリン分泌において問題となる状態です。インスリンは

人体で唯一の血糖降下作用を有する膵臓のホルモンです。糖尿病には

このホルモンの分泌異常が必ず絡みます。

 

インスリン抵抗性とは、インスリンの効きが悪くなっている状態で

血糖が下がりにくくなるので、高血糖の時間帯が増えます。対して

インスリン過剰分泌では必要以上にインスリンが出るので血糖が

下がり過ぎてしまいます。

 

抵抗性があれば高血糖になるので過剰分泌が誘発されますし、また

過剰分泌で膵臓が疲弊すればインスリンの効きも悪くなります。

抵抗性と過剰分泌は表裏一体と言ってよいでしょう。これらが続く

ことで糖尿病という診断に至りますが、現在の糖尿病診断は血糖値と

HbA1cを主に見るにすぎません。これらの数値が悪くなるのは

抵抗性と過剰分泌が結構進行してからです。つまり早期診断には

そもそも向いていないと言えます。

 

とにかくインスリンを無駄使いしないこと、これが最大かつ最高の

予防と治療です。と言うことはやはり高血糖にならないような食事が

重要となります。そして高血糖になるのは糖質量よりも食べる順番の

方が大きく関与するので、空腹状態での糖質摂取を厳しく指導する

ことになるんですな。精製された糖ならさらに上昇しやすいので

玄米や全粒小麦などの未精製炭水化物に変えることも言います。

 

最近ではインスリンの反対の作用をするグルカゴンの過剰がそもそも

悪い、という論もあります。グルカゴン過剰により高血糖になり、

それに反応してインスリン過剰になる、ということです。グルカゴン

過剰の原因には酪酸不足が指摘されています。酪酸は腸内善玉菌に

より産生されるので、ここで腸内環境が関わってくるわけです。

そこで酪酸の原料となる水溶性食物繊維を含む海藻類を常食する

ことが追加治療となるのです。

 

まあ結局いつも言っていることなんですが(笑)、糖の問題は

血圧や脂質、アレルギーや脳機能、痛みや冷え、成長にも老化にも

関係するので耳にダイオウイカができるほど言いまっせ。(^皿^)

2019年11月18日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ

ステロイドの是非

ステロイド剤、という名称は何となく耳にしたことがある、もしくは

実際に使用したことがある、いや現在進行形でお世話になっている、

と様々でしょうけど結構浸透しているものと思います。

 

例えばアトピー性皮膚炎の塗り薬、喘息発作時の吸入薬、リウマチ

などの炎症コントロールに使う内服薬、とほぼ全科に亘り使用されて

います。時に生命の危機を救う効果があるので、西洋医学的には

無くてはならない薬であることに異論はありません。

 

ステロイド剤の本名(?)は「合成副腎皮質ホルモン剤」で、我々

が自身の副腎で合成可能なホルモンの代替品です。つまりステロイド

がよく効く、ということは即ち副腎が弱っている、ということでも

あるわけですね。ステロイドを使用し続ければ自身の合成能力が低下

することがあるので注意が必要なのです。

 

ではステロイドは危険だからダメなのか、いやいや症状緩和に有効

だから使うべきなのか、という是非論は無意味です。上記のような

効果を利用しないのは勿体ないので、副作用に気を付けて使えば

いいだけの話です。

 

その前提で、重要なのは「減らす手段を持っているか?」ということ

です。それがないから是非論に陥る、といっても過言ではないかも

知れません。医療者側からすればステロイドを使う代わりに並行して

それ以外の方法を提案できるか、ということです。

 

ウチの場合はそれが漢方薬だったり、食事指導だったりするわけ

ですが、何かしら別アプローチがなければやはり持続使用による

副作用のリスクが上がります。治療はすべからく「ツール」ですから

その長所短所を知って使わないとしっぺ返しを食うんですな。

ステロイドで言えば「幅広く使え速効性もあるが、長期使用に

向いていない」という性格です。「チョー効く薬」「なんかヤベー薬」

という認識ではいけませぬ。

2019年11月14日 木曜日

カテゴリー 院長室

タグ

それ、胃酸過多?

これから忘年会シーズンが始まり、TVでも「食べ過ぎ、飲み過ぎに

○○!」とか「飲む前に飲む」的なCMが多く流れます。あるいは、

胸焼け、げっぷなどに飲む薬も多数紹介されます。

 

こういう症状があると、患者さんも我々もつい「胃酸過多」だから

「胃酸を抑える薬」で対処しようとします。実はコレ、結構危険な

方法です。

 

逆流性食道炎という診断名を耳にすることがあると思いますが、

これは本来食道→胃→十二指腸と流れていくべき食物が逆流し

胃酸の影響で食道に炎症が起きる病態です。胸焼けやげっぷ、悪心

といった症状が出て上記の制酸剤が処方されます。最近は市販薬も

ありますね。でもこの薬はその名の通り胃酸を抑えるだけで逆流を

治しているわけではありません。その場しのぎ的に使用するのは

構いませんが、常用するとむしろ低胃酸による副作用が出ます。

 

ではなぜ逆流を起こすかというと、様々な原因があるものの、

一番多いのは「胃壁の過伸展」です。食道から胃に食べ物が入って

くると胃の入り口部分はキュッと締まって逆流防止をし胃の中で

消化が始まります。胃が大きく伸ばされると、この入り口部分が

緩んでしまうんです。これが逆流を起こすわけです。

 

では胃が引き延ばされる原因は?そう、過食と早食いです。また

脂肪が多い食材でこの反応が起きる人もいるので、高脂肪食も

原因となります。まさに生活習慣が原因ですね。日本人はそもそも

胃酸分泌が少ない民族なので胃酸過多は起きづらく、あくまで

逆流現象による諸症状と捉えなければ不要な薬を飲み続けること

になりかねません。

 

ちなみに制酸剤で低胃酸になるとタンパク質分解が抑制され

胃の中に食物が停留しますので、結果的に胃壁は伸展されやはり

逆流が起き得ます。本末転倒ですね。「ゆっくり食べて腹八分目」

が治療です。

2019年11月11日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ

今のうちにしもやけ

朝晩は随分と冷えてきました。毎年、手や足のしもやけ、アカギレに

悩まされる方もいるのではないでしょうか。なってしまえば漢方薬や

湿潤療法で対処しますが、できれば予防をしたいところです。

 

しもやけは血流障害が原因です。手足の先やかかとは血管が細く、

動脈と静脈の折り返し地点なので血液が停滞しやすく、生理的に

血流障害が出やすい部位なんです。寒くなると血管が収縮するので

しもやけが発症するわけですね。

 

と言うことは寒くなった時にいかに血流を維持できるか、が重要に

なります。指先をマッサージするのも効果はありますが、狙いは

もっと上流部分です。手なら前腕と脇の下、足ならふくらはぎと

そけい部、がポイントとなります。血液が心臓へ戻る経路をしっかり

確保する、という考え方です。

 

手の場合は、前腕をモミモミし、脇の下に指を入れて肩を後ろに回し

ます。グーパーグーパーしながらやるとさらに効果的です。足の場合

はふくらはぎをモミモミし、そけい部を伸ばします。足は手よりも

重力の影響で血液が戻りづらいですから入念に。爪先立ち運動も

並行してやってください。言葉では伝わりづらいので(^ ^;)不明な

点は診察の時にでも聞いて下さいね。

 

アカギレは乾燥にも大きく影響されるので、ワセリンを薄く塗り込んで

おくと良いでしょう。炊事の前や寝る前、など先んじて塗っておく

のがコツです。

 

ちなみに交感神経緊張状態では血管は収縮しますから、副交感神経

優位な生活を送ることも大事です。つまりちゃんとリラックスする

ことです。睡眠不足やイライラでも血流は悪化するわけですね。

また血糖乱高下は交感神経緊張を招きますし、喫煙も血管を収縮

させます。体操だけでなくもちろん生活習慣改善も重要です。

2019年11月7日 木曜日

カテゴリー 院長室

タグ

「低」脂血症

血糖値が乱高下し様々な不調を来す病態=低血糖症は以前に比べ認知

されてきた印象があります。高血糖ばかりが槍玉に挙げられていると

見逃されるので、とても意義深いことです。

 

一方で、脂質代謝に関してはまだまだ旧態依然とした認識であると

言わざるを得ない現状です。つまりコレステロールや中性脂肪の高値

ばかりが注目され、低いことはノーケア、むしろ良いことだと捉えられて

います。高脂血症という言葉はあっても低脂血症なんて言葉はないです

よね。(^ ^;)

 

コレステロールに関しては何度か紹介していますが、副腎ホルモンや

性ホルモン、ビタミンDの原料になり、かつ細胞膜の形態安定に必須

なので低値は結構な不調を招きます。また食材中のコレステロールとは

ほぼ無関係なので、肉や卵を食べ過ぎて上昇することはないですし、

逆にせっせと食べても低値が改善するわけでもありません。

 

日本で採用している検査基準値が異常に厳しすぎるというのも過剰に

高脂血症の患者さんを産む原因になっていると言えます。少なくとも

更年期周辺の女性は生理的変化として上昇するので、それを無視した

診断は危険だと思います。

 

中性脂肪に関しては糖質過剰と密接に関係するので、高値の時には

しっかり対処しなければいけませんが、低値を無視していいわけでは

ありません。脂質の測定はそれを運搬する結合タンパクを測定する

ことで脂質量としているので、あまりに低値の場合はタンパク不足が

ある、と読む必要があるのです。

 

いずれにしても、あまりに低値が無視されている現状は知っておくべき

でしょう。脂質に限りませんが、参考基準値の下限が設定されていない

(0〜となっている)場合、その会社は低値を無視しているということ

です。それでA判定であっても、栄養療法的には問題視しなければ

いけない場合が結構あります。健康診断でA判定でも不調がある場合は

是非ご相談下さい。

2019年10月31日 木曜日

カテゴリー 院長室

タグ