院長室

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バテ対策

「バテる」の語源って「果てる」なんだってね。知らなんだ。

夏バテは「夏場に果てる」ってことですな。何かカッコええ。

 

冗談はさておき、脱水や熱中症とまでは言わないけど何となく

だるい、とか食欲が今ひとつ、なんて時に「夏バテかも」と

考えたりしますね。こういう状態になると普段よりもパフォー

マンスが落ちるわけで、つまり “エネルギー不足” とイコール

と見てよいでしょう。

 

普段からマグネシウムを中心としたミネラル補給の重要性を

強調していますが、ミネラルは単独ではエネルギーに変換され

ません。個々の作用はあるものの、エネルギー合成においては

主役ではないのです。主役はあくまで「3大栄養素」と言わ

れる糖質、タンパク質、脂質です。

 

バテるということは、この3大栄養素からのエネルギー変換

効率が落ちているのではないか、という視点が必要になります。

その視点で言うと、タンパク質は基本的に糖質に変換されて

からエネルギーになりますから、糖質か脂質からの変換に

問題は無いか、と診断していくわけですね。

 

糖質と脂質の大きな違いは、効率と貯蔵です。糖質に比べ

脂質の方がエネルギー変換効率が良く、多く貯蔵できるので

完全に脂質が有利です。夏バテ対策には脂質が良いことに

なりますね。ただ、脂質は糖質に比べ変換効率は良いものの

ミトコンドリアに取りこまれる際にカルニチンという物質が

必要になるのが弱点です。カルニチンは体内で合成される

タンパク質の一つですから、タンパク質代謝が悪い人は結局

脂質代謝も落ちることになります。

 

ここで救世主になるのが、カルニチンを必要としない中鎖

脂肪酸(MCT)です。カルニチン不要のため、脂質の中でも

突出してエネルギー変換効率が良いのです。そしてMCTを

多く含むのがココナッツオイルでしたね。ミネラルや水分の

補給は基本ですが、夏バテ対策にココナッツオイル(もしくは

MCTオイル)も有用であることが分かると思います。

2020年8月24日 月曜日

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止めてはいけない下痢もある

暦では秋を迎えましたが、まだまだ厳しい暑さが続きますね(+_+)

一日中エアコンの中、という人もいるでしょう。

今は熱中症や脱水が怖いですから、エアコンは欠かせませんね。

 

来院された年配の方が、急に下痢になって2日でおさまった。と報告してくれました。

食欲あるし腹痛もないし、あれは何だったのかな?と不思議がっていました。

 

この症状を東洋医学的に考えてみます。

 

この方は暑いのが苦手で、一日中エアコンの中で過ごしていました。

暑いと汗をかいて放熱しますが、エアコンの中にいると毛穴が開かないため放熱することができず、体内に熱がこもります。

下痢は、このこもった熱を排出するために起こる反応の一つなんですね。

他にも、咳や排尿などもこもった熱を逃がすための反応です。

 

このような反応が出ている時に、下痢止めやせき止め薬を飲んでしまうと熱を排出することができず、他の熱の症状(めまい、ほてり、かゆみなど)を招くことがあります。

 

だらだらと汗をかき過ぎるのは良くありませんが、ある程度汗をかいて放熱することも必要です。

朝や夕方など少し涼しい時に、散歩など活動的なことをするのがおすすめです。

それはムリ!という方は、時々窓を開けて温かい空気を入れましょう。自然と毛穴が開いて放熱してくれます。

2020年8月22日 土曜日

カテゴリー はりの部屋

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漢方薬解説-22 大建中湯

漢方医学では体幹部を上・中・下と3つに区切り、それぞれ

上焦、中焦、下焦、と表現します。中焦はだいたい横隔膜から

ヘソくらいまでのことで、機能的には消化吸収能を指します。

なので、処方名に「中」という漢字があれば胃腸に効く薬なの

かな、とアタリを付けることができます。補中益気湯とかね。

 

・大建中湯(ダイケンチュウトウ 100番)

構成:人参3g+乾姜5g+山椒2g

 

とてもシンプルな構成ですね。「中を大きく建て直す」という

名称からも分かる通り、胃腸機能改善に特化しています。構成

生薬すべてが温める効能を持つので、冷えがあることが使用の

前提となります。冷えて便秘する、とか冷えて腹痛、とか。

 

実はこの漢方薬、外科領域で頻用されています。特に開腹術後

の腸管麻痺に。開腹術後は腸の動きが低下するので、いきなり

食事を再開できないのですが、100番を使用すると復帰が

早いんですね。この理由はまさに開腹術では腸が冷えるから、

です。100番で強力に腸を温めることで腸管麻痺を改善させて

いるわけです。山椒(サンショウ)のせいで少しピリッとした味が

しますが、副作用もなく速効性がある使いやすい漢方薬です。

 

小柴胡湯と大柴胡湯があったように、こんな処方もあります。

 

・小建中湯(ショウケンチュウトウ 99番)

構成:桂皮4g+芍薬6g+甘草2g+大棗4g+生姜1g+膠飴10g

 

名前はソックリでも構成は全く違いますね。そしてよく見ると

この構成は桂枝湯(45番)です。桂枝湯の芍薬を増量した

のが桂枝加芍薬湯(60番)で、さらに膠飴(コウイ)を足した

のがこの99番、という見方ができます。膠飴はその名の通り

飴(あめ)で味は甘く、気を静める作用があります。

 

飲み易く、気を静めるので昔から小児の夜泣きなどに頻用

されてきましたが、あくまで「建中湯」なので消化器系に

作用するのが本態です。膠飴以外は60番ですから、特に

腹痛によく効きます。

 

さて、100番と99番を合体させると「中建中湯」という

名前になります。冗談みたいなホントの話。(笑)保険薬

にはないですが使う場面は結構あったりします。ちなみに

以前紹介した人参湯(32番)は別名、理中湯(リチュウトウ)と

言います。お腹を整える、という意味でしょうか。お腹を

建てたり整えたり、と漢方は「中」をとても重要視して

いますね。

2020年8月20日 木曜日

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タンパク質復習

脱水症は水分とミネラルの喪失によるものですが、それらをただ

補給するだけでは再発の可能性があります。つまり根本は他にある

場合があるのです。

 

それがタンパク質の不足でした。タンパク質は肉、魚、卵、大豆

などが補給源ですが、タンパク質不足になると血管内に水分を保つ

能力が低下するので季節に関係なく脱水傾向となります。では上記

のものを毎日摂っていれば、あるいはプロテインを摂取すれば解決

するかと言うと、必ずしもそうではありません。

 

タンパク質は分子が大きいので、そのままでは腸粘膜を通過でき

ません。咀嚼、胃酸、消化酵素の働きでアミノ酸レベルの小さな

分子にして初めて体内に吸収されます。そして肝臓でタンパク質

に再合成されることで有効となります。この再合成に必須なのが

ビタミンB群でした。なので、サプリメントを選ぶ時はいきなり

プロテインを選択するのではなく、アミノ酸+ビタミンB群とする

と効率的です。

 

もともと消化に難がある方は、これに加えて消化酵素を使用したり

ピロリ菌が陽性であれば胃酸機能が低下するので除菌が必要になり

ます。もちろん早食いは厳禁です。ビタミンDや亜鉛不足も吸収に

影響しますので、不足していれば追加すべきでしょう。

 

こういう栄養的弱点がなければ、食材の組み合わせで勝負でき

ますが、誰しも脂っこいメニューばかりでは夏場はしんどいもの。

かと言って麺類を増やせば解決になりません。こういう時に頼り

になるのが味噌汁です。具材を好きに組み合わせることができます

からね。ミネラル補給のためにワカメを軸にし、豆腐や鰹節で

タンパク質トッピング。半熟卵、なんてのもいいですな。(^ ^)

屋外での作業がある場合は、ここにぬちまーすを振っておくと

尚よろしい。

 

ちなみに吸収されなかったタンパク質は腸内で悪玉菌増殖の原因

になってしまうので、闇雲なプロテイン摂取は戒めるべきです。

そう考えると、腸の不健全さが脱水の根本原因とも言えますね。

2020年8月17日 月曜日

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感染症のはなし

連日、新型コロナウィルスのニュースばかりでいささか食傷気味

ですが(^ ^;)、中には本当に必要な情報なの?と疑問に思うもの
もあります。

 

新型コロナは確かに厄介ですが、3〜4月の “得体の知れないヤツ”

という認識とは随分違ってきたと思います。最大の違いは、現在

重症者も死者も増えていないということ。これをどう解釈するかは

今後の対策に極めて重要です。

 

世界を見てみても欧州では日本同様、死者も重症者も減っています。

オーストラリアは一旦収まった感染が再び蔓延し、死者も増加して

いるのでまさに第2波が来ていると見ていいでしょう。連日報道

される日本の “感染者数” はPCR検査陽性者の数であって、正確

には感染者ではないので注意が必要です。重症者は増えていない

ので、第2波ではないと思います。

 

死者増加時のデータから、発症から死亡まではおよそ2週間という

ことが分かっていますので、1ヶ月以上死者が増えていないので

あれば、少なくとも現在、感染自体は収束傾向と見ていいのでは

ないでしょうか。医療の逼迫、なんて報道もありますがこれも

3〜4月の頃のそれとは全く意味合いが違います。当初はICUが

足りない、機器が足りない、ガウンがない、人手がない、という、

つまりコロナ以外の診療が不能になってしまうことを “医療崩壊の

危機” と言っていました。この度は、軽症者と無症状者の収容施設

が不足している、という意味の医療逼迫です。

 

これは新型コロナを指定感染症にしてしまったがため、PCR陽性者

は症状に関係なく一定の隔離を要することになっているからです。

よって現在コロナ以外の診療に大きな影響はありません。「感染

が拡大し、再度、医療逼迫が起こりつつあります。」という報道

はウソではありませんが、随分と情報が不足している感じですね。

 

とは言え、軽視していいわけではありません。まだ未知な部分が

あるのは確かです。各地でクラスターが発生しているのも事実です。

やはり個人レベルで対策することは必要です。どの程度の対策が

必要か、は今後の情報によって変化するのは当然です。また全ての

活動を停止するのは大ナタを使って蚊を殺すようなもので愚策だと

思います。手でパチンとやればいいんです。(笑)

 

今月の健康教室はたまたま「身近な感染症」というテーマで、当初

は風邪や膀胱炎、帯状疱疹、そして腸内環境もね!なんて内容を

用意していましたが、コロナも身近になってしまったので(^ ^;)

上記のような話も盛り込もうと思っています。密を避けるため、

参加人数はいつもより少なく設定していますが、興味のある方は

是非御参加ください。

2020年8月13日 木曜日

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