ある日突然、電気もガスも使えなくなったらどうなるか?を
リアルに描いたポリティカルコメディー。「ウォーターボーイズ」
などでおなじみの矢口史靖監督最新作です。
矢口監督は「WOOD JOB!」や「ロボジー」など斬新な視点で
日本人社会を描く手腕が素晴らしいのですが、今作はこれまでとは
少し違って、原発事故を経験した日本人にとっては結構身近な
題材であるため、一歩間違うとほぼパニック映画になってしまう。
そのため無理にコメディ寄りにしている感はあり、心から笑え
ない部分はあります。
しかしながら、脱原発や自然賛歌を声高に主張しないところが
この監督らしく好感を覚えます。むしろ重きを置くのは「家族の
再生」です。利便になり過ぎた文明を槍玉に挙げるのではなく、
文明に溺れた現代人の弱さを描くことで、人間賛歌へと昇華させて
います。この辺りがとてもうまい。脚本の巧さでは三谷幸喜さん
が挙げられますが、平均点では矢口監督の方が上かも知れません。
主演ファミリーを父:小日向文世さん、母:深津絵里さん、
息子:泉澤祐希さん、娘:葵わかなさんが演じます。特に
深津さんが良い。かわいい。個人的な趣味ではなく。(笑)
彼女はここ数作で一皮むけたと言うか、とても巧みな女優さん
になった感じがします。彼女基準で観る作品を決めてもいい
レベルです。いや、個人的趣味ではなく。
ともすればホラーになりそうな所をコメディーとして成り立た
せているところが本作の眉目です。怖さと共にほっこりさせる
なんてなかなかの離れ業です。矢口作品万歳です。それはさて
おき久々に観た大地康雄さん、良かったなぁ〜。