院長室

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「アクアマン」/「ファーストマン」

似たタイトルですが、180度真逆な上に1光年くらいかけ

離れた対照的な作品でした。

 

まずはDCコミックのキャラの実写化である「アクアマン」ですが、

アトランティス王国の女王と人間の間に産まれたアクアマンが海の

覇権をかけて異母弟と争う、というもう設定だけでお腹いっぱい

になりそうな作品です。

 

で、実際に胸焼けと口内炎を併発しそうな内容で(笑)、細かい

ことはいいから派手なアクションで気持ち良くなってね!と

いう映画。が、このアクションがよくできていて飽きさせない

工夫がてんこ盛りです。カメラワークが大変おもしろい。単に

バトルするだけでなくアイテムを求めて冒険したり、怪獣が

出てきたり、とまあ楽しい。

 

出演陣も無駄に(?)豪華で脇役にニコール・キッドマン、ウィレム・デフォー、

ドルフ・ラングレン、と別の映画が1本作れそうな勢いです。個人的

にはあまり好きなタイプのアクション映画ではないですが、

爽快感は保証できます。

 

そして「ファーストマン」は月面に人類史上初めて降り立ったアームストロング

船長の伝記映画です。超有名な史実をどう娯楽作品に仕上げるか、

が見所になるわけですが、デミアン・チャゼル監督、見事にやってのけ

ました。

 

飛行機やロケットに乗るシーンは徹底して主人公視点になって

いるので、とんでもない緊張感です。閉所恐怖症の人には辛い

レベルですね。反面、現状どういう状態なのかが分かりづらい

ので、イマイチ乗り切れないのもありますが。

 

この未見性に満ちた緊張感と共に軸になるのが、死生観、です。

脳腫瘍で幼くして亡くなった娘、宇宙に挑戦する中で命を落とす

仲間、そして自分もまた生きて帰ることが困難なミッションに

挑む。それは命をかけることなのか?死に場を探していないか?

自己中心的な考えなのか?セリフは少なめの作品ですが、雄弁に

語りかけてきます。偉大な成功の裏には多くの悲劇もまたある

んですな。

 

主人公をライアン・ゴズリングさんが演じますが、この映画は監督さん

の作家性が売りなので、ここに共感できないと退屈に感じるかも

知れないです。「アクアマン」の間口の広さとはここでも対照的。(^ ^;)

 

共に結構長尺の映画ですが、全く違う所が疲れます。どちらの

疲労感を心地よく感じるでしょうか?

 

2019年2月21日 木曜日

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「こんな夜更けにバナナかよ」/「クリード2」

お待たせしました、本年1発目の映画レビューです。別に待たれていない

可能性大ですが、めげずに今年も素敵な映画を紹介しまっせ!

 

まずは我らが大泉洋ちゃん主演の「こんな夜更けにバナナかよ」です。

幼少時に筋ジストロフィーという難病に罹患し余命いくばくもない中、

宣告よりもはるかに長く、そして太く生きた鹿野靖明さんとその

ボランティア達を描いた作品です。実在の人物を演じる難しさなんて

吹き飛ばす洋ちゃんの好演と悩めるボランティア役の高畑充希さんが

素晴らしい。

 

洋ちゃん作品では毎回のように「どんな役をやっても大泉洋すぎる」

という批判(?)を浴びますが、一方でこの役は天性の明るさを持つ

洋ちゃんじゃないとできなかったように思います。まあ洋ちゃんシンパの

僕が言ってもダメですけども。ただ、ワガママで気難しい、という演出

は物足りなかったかな。少なからず介護やボラの現場を知っているので

劇中の鹿野さんは特別偏屈な人には見えなかった。むしろめっちゃいい人。

人間のリアルを描いていたという点では昨年末にヒットした「ボヘミアン・

ラプソディ」の方が上ですね。

 

そしてまさかの続編「クリード2」。前作はアポロ・クリードの息子が

ロッキー・バルボアをセコンドにつけてチャンピオンを目指すという

ファンは失禁必至涙濁流の大傑作でしたので、正直この続編は不安でした。

しかも今度は「ロッキー4」でアポロを殺し、ロッキーに敗れたイワン・

ドラゴの息子と戦うってんだから、それは蛇足じゃね?と感じてました。

 

いやいや、ザ・杞憂!今回は続編でありつつ実は「ロッキー4」のリブート

でもあります。プロットもそのまま、ちょっと意味不明な特訓(笑)も

確信犯でしょう。それでいて「ソ連から来た化け物にやられた親友の

敵討ち」でしかなかった「4」を見事に昇華させています。アポロの息子に

戦う意味を問いかけ、そしてさらに老いてなお悩み続けるロッキー自身

への解も用意されています。ドラゴ親子を単なる悪者にしなかったのも

素敵。今作のキモはスタローンさんが脚本に関わっていることでしょう。

 

しかし前作もそうでしたが「ロッキーのテーマ」の出しどころがニクイ。

泣くに決まってんじゃん、そんなの。そしてブリジット・ニールセンさん

が出るとは!しかも結構大事な役どころ!私生活では54歳で出産!

これこそ蛇足!さらになんと「ランボー5」も撮影済みらしいし、3月

には「大脱出2」公開、そして「エクスペンダブルズ4」への出演表明と

スタローン師の活躍にワクワクが止まりませぬ。素敵。(^ ^)

 

2019年1月24日 木曜日

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「教誨師」/「若おかみは小学生!」

今回はややマニアックな2作品。ただマニアックと侮るなかれ、

今年の邦画を代表する映画になるかも知れませぬ。

 

まずは「教誨師」。「きょうかいし」と読みます。今年2月に急逝

した大杉漣さん主演の映画です。奇しくも遺作となりました。教誨

とは受刑者に罪と向き合うために教え諭すことで、それを行う人の

ことを教誨師と言うのだそうです。何らかの宗教者であることが多く、

今作ではキリスト教の教誨師を大杉さんが演じています。

 

大杉さんの遺作とは言っても偶然そうなっただけで、製作サイドと

しても参加していたご本人は3部作で作製するつもりもあったよう

です。そして、それくらい、濃い、です。遺作補正がかかって鑑賞

する人も多いかも知れませんが、そうでなくても傑作だと思います。

罪に対する罰、死刑制度、生へ執着、宗教の意義、など実に多くの

問題提起をしているにも関わらず、煩くない。殺風景な舞台なので

却って演技が濃密に感じられ主演の大杉さんだけでなく皆さんが

素晴らしい。この際、遺作補正であってもいいから口コミで広がって

多くの方に観て欲しい作品です。

 

そして「カメラを止めるな!」第2弾の呼び声高い、口コミで評価

が拡散しているアニメ映画「若おかみは小学生!」です。もう既に

上映館が減っていますが、実は一旦上演頻度が減って人気と共に復活

した希有な例でもあります。

 

不慮の事故で両親を亡くした主人公の少女が実家の温泉旅館の女将と

なる成長物語ですが、絵柄がかわいすぎるしタイトルが口に出しづらい

くらい軽いし(笑)、挙げ句幽霊が出てくるし(しかも極めて重要)で

まあ確かにあまり観ようとは思いませんわ。いやしかし。これまた

様々な問題を内包しており、かつ完成度がびっくりするほど高い。

幽霊の役目や、登場人物の必然性、そして小道具の正確さなど脚本

演出のウデに唸りました。

 

元は令状ヒロ子さん原作の児童書なので、まあ絵柄は仕方ないですよ。

それを脚本・吉田玲子さん、監督・高坂希太郎が見事に昇華させました。

最近歳のせいで涙腺がゆるいのか、涙なしでは観られませんでした。(泣)

あまりに邪気がなさ過ぎるのも難点と言えば難点ですが、真正面から

「死」を扱った誠実な作品だと思います。

 

今回は実写とアニメ、静と動、老と若、など偶然にも対比的な2作品

ですが、偶然にもテーマは「死」です。大杉さんが死して「死」の傑作

を遺したのは奇跡と言えるかも知れないですね。色んな意味で感動です。

2018年10月25日 木曜日

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「銀魂2/イコライザー2」

常々、続編映画は好まないと公言している僕ですが、1作目が面白いと

そりゃあ観たくなるのが人情ってもんでさ、ダンナ。今回は両方とも

続編でさぁ、文句あっか。

 

銀魂1作目で、スピンオフができたらいいなぁ、なんて言っていたら

まさかの続編。悪ふざけが過ぎる原作と悪ふざけがしたくて堪らない

監督のタッグですから、今回も相性バッチリ。とは言え銀さんの

超人っぷりがひどいので前作ほどの完成度は望めません。ギャグ作品

のシリアス、シリアス作品のギャグ、ってかなり難しいバランス感覚

を要求されますが、その辺りは百戦錬磨(?)の福田監督なので、

ほぼギャグです。(笑)

 

まあ第1作を観た人しか観ないでしょうから、それを見越して制作側

もハードル上げてきてますが、ギャグパートはモロ銀魂です。(嬉)

意外と劇場は混んでて、隣付近になぜか品の良い老夫婦がお座りに。

ええと、コレ銀魂っすよ?うん○とかキモい女装とか、ヲタクにしか

分からないネタとか出てきますよ?って銀魂風にツッコミされたい銀魂

上級者さんですか?もしかして?とかすげー気になってあまり集中できん

かった。取り締まられてもおかしくない内容だから、まさか映倫の検閲?

客も同罪になるの?とか。(笑)

 

原作は最終回詐欺の罪を犯したみたいですから(笑)、余計に映画も

注目される、という作者殺しっぷりがまた銀魂テイスト。もう続編は

いいから、二朗さん出ずっぱりのこってりしたスピンオフ作ってください。

 

そしてこちらもまさかの続編「イコライザー2」。前作が好評だった

せいもあり随分前から企画されてたそうで。教えてよぅ。元々はアメリカ

のテレビシリーズで、一言で言えば米国版必殺仕置き人です。それを

デンゼル・ワシントンさんが好演しています。

 

無敵のタフガイアクションではなく、その場にある物を利用して

スタイリッシュにキメるクール系アクションなんですが、その特徴は

今作ではなりを潜めてしまい、若干軸がぶれている感はあります。

それでも製作にも名を連ねるデンゼルさんの人柄か、今作でも若者

への愛が溢れており、アクション以外にもしっかり見所があります。

 

前作もラストバトルは大変凝っていましたが、今作も面白い工夫が

ありました。総じて、残念ながら前作越えとは思いませんが、意外と

また続編が?結構デンゼルさんはハマリ役かも。

 

そしてまたまさかの続編、「ボーダーライン」!誰が観るねん?!

…すいません、僕、観る。だってデル・トロ観たいもん。もう続編

うんぬんは言ってはいけませんな。(^ ^;)

 

2018年10月11日 木曜日

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「インクレディブル・ファミリー」/「カメラを止めるな!」

映画ネタの連投失礼します。お盆だし。暑いし。いや、今回の2作

は早く紹介しとかないと皆さんが損するかも知れないし!と思うし。

 

まずはまさかの14年ぶりの続編「インクレディブル・ファミリー」。いや、

素晴らしい。14年経ってますが作中は前作から3ヶ月後とのこと。

ヒーロー活動が禁じられている中で、犯罪や事故に対して黙って

いられない主人公一家の活躍を描きます。

 

今作はお父さんのMr.インクレディブルはむしろ脇役で、メインは奥さん

のイラスティガールと子供たち。なので原題は「Incredibles 2」なのですが

この邦題は妥当かな。前作未見でも分かる親切設計ですが、前作

との対比も面白いでの観ておいた方がいいでしょう。

 

内容は痛快爽快で、特にアニメーションの技術進歩が圧倒的です。

監督は前作に引き続きブラッド・バードさんですが、実は

「M:I ゴーストプロトコル」の監督さんでもあるので、アクションはお手の物。

というかM:Iと妙に似ていたり。先日最新作を観たばかりだから

余計にそう感じるのかな。(^ ^;)でもカッチョイイから全然OK。

無条件に楽しカッコイイ傑作です。お願いだから字幕上映を増やして。

 

さて問題はこちらです。今や各メディアでも取り上げられ社会現象と

なりつつある邦画「カメラを止めるな!」。いや、スバラシイ。無名の

俳優さん、本作が長編デビューの監督さん、クラウドファンディングで

資金集めするほどの低予算、とヒットが約束され資金も技術も最高峰

でスタッフもエリート揃いの「インクレディブル・ファミリー」とはある意味

対照的です。

 

でも匹敵するくらいに面白い。センスとアイディアでここまで面白く

なるなんて、同業の方は悔しさと共に俄然やる気が湧くのではないで

しょうか。ネタバレ厳禁と言われていますが、それを言う時点で

何か仕掛けがあることを臭わせるわけで、完全なネタバレ防止には

ならないのですが、でも極力情報を入れずに鑑賞すべきことは

確かです。

 

物語はゾンビ映画を撮っていたら本物のゾンビに襲われた、という

話を作製しましょう、という入れ子構造なのですが、これまでも

そういった凝った作品はあったものの、本作ほど緻密でかつ映画愛に

溢れた作品は初めてです。社会現象になるのも頷けます。

 

ネタバレ厳禁と謳われる作品はその性質上、往々にして “一発屋”

なのですが、本作の凄い所は伏線張りまくりで2回目もすんごい

観たくなると言うゾンビ性(?笑)にあります。事実リピーターも

多いようです。話題性に乗って8月下旬からは稲沢のユナイテッドシネマ

でも上映されるようなので、是非このスバラシイ映画を「体験」

してください。

2018年8月13日 月曜日

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