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9割以上に基礎疾患

新型コロナウィルスで残念ながら亡くなった方のうち、実に

9割以上に基礎疾患があったというデータがあります。つまり

ウィルスに感染しても健康な人に生命の危険はない、という

ことです。

 

これはとても重要で、過剰な自粛や行動制限に歯止めを

かける要素になると思います。日本のみならず、全世界の

生命の上に成り立ったデータなので、これを活用すること

が弔いにもなると考えます。

 

さてしかし、ここで引っかかるのが「基礎疾患」です。一般

には糖尿病や高血圧症などの生活習慣病、加えて閉塞性肺

疾患や免疫不全に起因する疾患を念頭に置くようですが、

それだけで良いでしょうか?栄養療法の枠組みでは、健診や

人間ドックでは診断の基準がゆるく、A判定とされている人

でも血糖の乱高下やミネラル不足による不調が隠れている、

と警鐘を鳴らします。耳タコですね。(^ ^;)

 

また極度の肥満や喫煙習慣がある方も死亡リスクが高い傾向

があるようで、これらについても「基礎疾患持ち」として

扱う方が良いようです。つまり、基礎疾患として診断名が

ついていなくても安心してはいけない、ということです。

 

全く自覚症状がない方は「健康」と判断しても良いと思い

ますが、やはりA判定とされていても不調を感じるようで

あれば、栄養療法的な視点で検索することをお勧めします。

それで異常があっても「基礎疾患」とは言われませんが、

健康とは判断せず、食事等を見直すべきでしょう。

 

無症状の人にPCR検査をして陽性者を感染者扱いすること

にそもそも問題があるとは思いますが、これを機に自身の

健康状態を把握する、というのもまた多くの犠牲への誠意

になるのではないでしょうか。

2020年9月3日 木曜日

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漢方薬解説-23 黄連解毒湯

漢方薬は身体を温める効果を持つものが多く、これが西洋薬と

比較した時の大きな違いの一つでしょう。しかし、逆に冷やさ

なければいけない病態も、もちろん存在します。

 

・黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ 15番)

構成:黄連2g+黄芩3g+黄柏1.5g+山梔子2g

 

生薬4種のみのシンプルな構成ですが、これら全てが「冷やす」

効能を持ちます。正確には内部の熱(裏熱と言います)をさばく

のが得意で、即ち胃腸炎が最も良い適応ですが、皮膚の熱や

頭部の熱などにも効果があります。

 

よく応用されるのが、ほてりを伴うイライラや、熱感のある

鼻出血です。更年期症候群で頻用される加味逍遙散(24番)

に山梔子(サンシシ)が配合されていますが、これはほてりと

イライラを取る目的、ということですね。

 

4種とも同じような効能ですが、黄連(オウレン)と黄芩(オウゴン)

は特に併用されることが多く、この2つを主役にした薬を

芩連(ゴンレン)剤と呼んだりします。探すと結構ありますよ。

 

ここで注意すべきは15番はひたすら冷やす薬なので、副作用

として冷えてしまう可能性があります。もちろん元々冷え症の

方には使いづらい薬です。さらに冷やすと同時に「乾かす」作用

まであるため、例えば脱水症でほてりがある場合には禁忌です。

 

そこで15番の弱点を補う目的で四物湯(シモツトウ 71番)と

合体させた薬があります。それが温清飲(ウンセイイン 57番)です。

71番は血流を改善し、組織を修復させる作用がありますが、

配合される地黄(ジオウ)が潤す効能を持つので15番の副作用

を軽減できるわけです。

 

例えばアトピー性皮膚炎で、局所はかゆみも赤みもひどいけど、

冷え症であったり、皮膚がガサガサで乾燥傾向だったりした場合

15番は使いづらくなります。しかし57番なら15番の良い

ところを残しつつ組織も修復し、かつ副作用も抑えられるので、

意外と使用場面が多いです。この57番にさらに生薬を追加した

荊芥連翹湯(ケイガイレンギョウトウ 50番)、柴胡清肝湯(サイコセイカントウ

80番)なんて薬もあります。

 

とても有用そうな薬ですが、難点が一つ。芩連剤はチョー苦い

んです。(^ ^;)苦味そのものが熱をさます効果があるので

当たり前と言えば当たり前なんですが、何も言わずに出すと

嫌われて来院しなくなることもあるので(笑)、処方する際

には「こいつぁ苦いぜ!」と言うようにしています。

2020年8月31日 月曜日

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うつは栄養不足?

「抑うつ」と「うつ病」は厳密には違いますが、客観的に

診断するのが難しいので線引きは曖昧です。現在、長引く

自粛や蔓延する煽り報道で気分的な落ち込みを感じる方が

増えている印象です。経済の損失だけでなく、うつ症状も

コロナ禍の一つではないかと思います。

 

さて、うつ症状と栄養不足との関連は溝口徹先生の代表作、

うつは食べ物が原因だった」に詳しいですが、要は脳内の

ドーパミンやセロトニンといった感情を左右するホルモンの

合成低下は栄養不足からくるよ、ということです。それらを

合成できない、もしくは需要に追いつかない状態になると

うつ症状が出るわけですな。

 

この代謝には様々な栄養素が関与しますが、中でも特に重要

なのがビタミンB群です。ホルモン合成全てのルートに関与

すると言っても過言ではありません。ビタミンB群は8種類

あり厳密には全種が同等に必要と言うわけではないのですが、

相互に活性化し合って働くので、まとめて扱うのが基本です。

 

ビタミンB群は豚肉に多く含まれるので、なるべく多めに

摂るよう指導したりしますが、食材だけでは不十分だったり

腸内環境が悪く吸収効率が悪そうであれば積極的にサプリ

メントを使用します。いや、サプリメント飲んでるんだけど

あまり効果を感じないなー、という場合はビタミンB群の

消費亢進を考慮しなければなりません。

 

ビタミンB群は糖代謝で大量に消費されてしまうので、糖質

過剰な食事をしていると無駄に使われてしまいます。高価な

サプリが糖と共に消えていくのです。(泣)それだけでなく

糖過剰により血糖乱高下が引き起こされれば、アドレナリン

過剰やコルチゾール不足を招いて直接的に精神的症状を出す

ので、ビタミンB群温存と血糖安定の2つの意味で糖質制限が

必要になります。

 

ビタミンB群以外にもマグネシウムや鉄も重要だし、そもそも

ビタミンB群不足にさらに原因があったりするので、一筋縄

ではいかない場合もありますが、少なくとも気分の落ち込

を感じたら、イキナリ抗うつ剤!ではなく食事を見直して

みて欲しいです。外出を恐れて冷凍食品ばかりになっていま

せんか?ストレスを感じて甘味をやけ食い(^ ^;)していま

せんか?それらは全てうつ症状に繋がります。

2020年8月27日 木曜日

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バテ対策

「バテる」の語源って「果てる」なんだってね。知らなんだ。

夏バテは「夏場に果てる」ってことですな。何かカッコええ。

 

冗談はさておき、脱水や熱中症とまでは言わないけど何となく

だるい、とか食欲が今ひとつ、なんて時に「夏バテかも」と

考えたりしますね。こういう状態になると普段よりもパフォー

マンスが落ちるわけで、つまり “エネルギー不足” とイコール

と見てよいでしょう。

 

普段からマグネシウムを中心としたミネラル補給の重要性を

強調していますが、ミネラルは単独ではエネルギーに変換され

ません。個々の作用はあるものの、エネルギー合成においては

主役ではないのです。主役はあくまで「3大栄養素」と言わ

れる糖質、タンパク質、脂質です。

 

バテるということは、この3大栄養素からのエネルギー変換

効率が落ちているのではないか、という視点が必要になります。

その視点で言うと、タンパク質は基本的に糖質に変換されて

からエネルギーになりますから、糖質か脂質からの変換に

問題は無いか、と診断していくわけですね。

 

糖質と脂質の大きな違いは、効率と貯蔵です。糖質に比べ

脂質の方がエネルギー変換効率が良く、多く貯蔵できるので

完全に脂質が有利です。夏バテ対策には脂質が良いことに

なりますね。ただ、脂質は糖質に比べ変換効率は良いものの

ミトコンドリアに取りこまれる際にカルニチンという物質が

必要になるのが弱点です。カルニチンは体内で合成される

タンパク質の一つですから、タンパク質代謝が悪い人は結局

脂質代謝も落ちることになります。

 

ここで救世主になるのが、カルニチンを必要としない中鎖

脂肪酸(MCT)です。カルニチン不要のため、脂質の中でも

突出してエネルギー変換効率が良いのです。そしてMCTを

多く含むのがココナッツオイルでしたね。ミネラルや水分の

補給は基本ですが、夏バテ対策にココナッツオイル(もしくは

MCTオイル)も有用であることが分かると思います。

2020年8月24日 月曜日

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漢方薬解説-22 大建中湯

漢方医学では体幹部を上・中・下と3つに区切り、それぞれ

上焦、中焦、下焦、と表現します。中焦はだいたい横隔膜から

ヘソくらいまでのことで、機能的には消化吸収能を指します。

なので、処方名に「中」という漢字があれば胃腸に効く薬なの

かな、とアタリを付けることができます。補中益気湯とかね。

 

・大建中湯(ダイケンチュウトウ 100番)

構成:人参3g+乾姜5g+山椒2g

 

とてもシンプルな構成ですね。「中を大きく建て直す」という

名称からも分かる通り、胃腸機能改善に特化しています。構成

生薬すべてが温める効能を持つので、冷えがあることが使用の

前提となります。冷えて便秘する、とか冷えて腹痛、とか。

 

実はこの漢方薬、外科領域で頻用されています。特に開腹術後

の腸管麻痺に。開腹術後は腸の動きが低下するので、いきなり

食事を再開できないのですが、100番を使用すると復帰が

早いんですね。この理由はまさに開腹術では腸が冷えるから、

です。100番で強力に腸を温めることで腸管麻痺を改善させて

いるわけです。山椒(サンショウ)のせいで少しピリッとした味が

しますが、副作用もなく速効性がある使いやすい漢方薬です。

 

小柴胡湯と大柴胡湯があったように、こんな処方もあります。

 

・小建中湯(ショウケンチュウトウ 99番)

構成:桂皮4g+芍薬6g+甘草2g+大棗4g+生姜1g+膠飴10g

 

名前はソックリでも構成は全く違いますね。そしてよく見ると

この構成は桂枝湯(45番)です。桂枝湯の芍薬を増量した

のが桂枝加芍薬湯(60番)で、さらに膠飴(コウイ)を足した

のがこの99番、という見方ができます。膠飴はその名の通り

飴(あめ)で味は甘く、気を静める作用があります。

 

飲み易く、気を静めるので昔から小児の夜泣きなどに頻用

されてきましたが、あくまで「建中湯」なので消化器系に

作用するのが本態です。膠飴以外は60番ですから、特に

腹痛によく効きます。

 

さて、100番と99番を合体させると「中建中湯」という

名前になります。冗談みたいなホントの話。(笑)保険薬

にはないですが使う場面は結構あったりします。ちなみに

以前紹介した人参湯(32番)は別名、理中湯(リチュウトウ)と

言います。お腹を整える、という意味でしょうか。お腹を

建てたり整えたり、と漢方は「中」をとても重要視して

いますね。

2020年8月20日 木曜日

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