院長室

« 2月 2024 11月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

腸内カンジダと栄養

前回はピロリ菌感染と栄養障害の関連について紹介しました。

ピロリ菌感染により胃酸機能が低下すると、タンパク質分解と

ミネラル吸収能低下が起きるという内容でしたが、のみならず

外界からの雑菌を殺す能力が低下し、結果として腸内細菌叢の

乱れを招くので間接的に腸内環境悪化も招いてしまいます。

 

今回は直接的に腸内環境悪化を来すカンジダ菌と栄養障害に

ついて紹介しましょう。カンジダは日和見菌のカテゴリーで

我々全員の腸内に存在する常在菌です。ですが、増殖すると

途端に有害な存在となってしまいます。

 

増殖により菌糸形態となり、腸粘膜に根ざして破壊していき

ます。すると腸粘膜機能が低下し未消化タンパク質や有害

な物質が素通りして体内に侵入してしまいます。この結果、

体内では異物の取り締まりが激化し過剰な免疫反応が起き

ます。これがいわゆるアレルギー反応ですね。

 

もしも加えてピロリ菌が陽性であれば、腸内には未消化の

タンパク質が増えますから、よりアレルギー症状は多彩で

重症化するでしょう。ピロリとカンジダのタッグは最凶

なんです。(^ ^;)

 

またカンジダはアラビノースという物質を産生しますが、

これを人体は糖と認識してしまうので、インスリン分泌が

誘発され血糖乱高下が起きます。つまり厳格に糖質制限を

していてもカンジダのせいでうまく行かなくなるわけです。

さらにシュウ酸合成の亢進も起きますが、これは直接的に

脳機能にトラブルを引き起こすので、気分の変動や抑うつ

もカンジダ由来だったりします。

 

カンジダの増殖は血液検査では分からないこと、そして

ピロリ菌ほど治療方法が確立していないことが厄介です。

増殖が確認されれば優先的に治療すべきですが、カンジダ

は常在菌なので「根絶すること」を目的とするのではなく

「優勢にしないこと」がキモとなります。では、カンジダ

が増える環境とは何でしょう?それが糖過剰なのです。特に

甘味や精製炭水化物が要注意です。あとは善玉菌を増やして

カンジダを劣勢に仕向ける、というのが常套手段です。

 

静菌ハーブなんかも有用ですが、カンジダとの戦いは長期

に及ぶことが多いので、検査と治療のトータルコストを

考慮して組み合わせることも極めて重要です。腸内環境って

何となく難しいイメージがありますが、何をおいても

まずピロリとカンジダです。

2020年10月12日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ

ピロリ菌と栄養

栄養療法は「栄養素の過不足を分析し意図的に操作・改善

する治療法」と定義できます。例えば血液検査をして鉄が不足

していることが分かり、症状が相関するので鉄を多く摂るため

の食事を指導する、食事では足りない場合はサプリメントを

使用する、ということです。

 

ウチでも多くの方が実践されていますが、一番重要なのは、

その過不足の原因です。食事制限やサプリメント摂取は必ず

しも根本治療になるとは限りません。その背景に大きな障害

があれば当然そここそが治療の本丸となります。栄養の過不足

の裏に隠れている病態を何回かに分けて紹介しましょう。

 

まず重要かつメジャーなのがピロリ菌感染です。ピロリ菌は

胃内で増殖し、胃癌や十二指腸潰瘍の原因となる菌ですが、

胃酸を薄める能力があるがゆえに胃内に定着することができ

ます。つまりピロリ菌陽性=胃酸が薄いということです。

 

胃酸が薄いとどうなるでしょう?実は栄養の吸収に甚大な

影響を及ぼします。それがタンパク質とミネラル全般です。

タンパク質は分子が大きいので、そのままのサイズでは腸から

吸収できません。それを咀嚼、唾液、胃酸、消化酵素の作用

を経て吸収可能サイズになります。ということはピロリ菌陽性

下ではタンパク質の分解が進まず、結果としてタンパク質不足

のデータとなります。さらに吸収されなかったタンパク質は

腸内悪玉菌のエサとなり得るので、腸内環境悪化のオマケ

まで付いてきます。

 

また鉄や亜鉛、マグネシウムなどのミネラル類は胃酸の作用で

イオン化されることにより吸収しやすくなりますから、これも

タンパク質同様、ピロリ菌陽性下では吸収阻害が起こることに

なります。タンパク質不足やミネラル不足は栄養療法を実践

していると高頻度で遭遇しますが、単純にそれらを補給すれば

いいとは言えないのです。

 

ピロリ菌は井戸水の飲用で感染すると言われ、現代では少ない

ように思われますが、経口感染するため祖父母や両親から

子供に感染することもあり、団塊の世代が一番多いものの

全世代に陽性者はいます。検査は色々な手段がありますが、

ウチの場合は血液検査を採用しています。胃の内視鏡を実施

する場合は同時にやると保険内で検査できますので、近々に

予定されている方は一考すると良いでしょう。

 

また、ピロリ菌の診断基準は数年前に改訂され厳しくなった

ので、数年前に陰性と判断されていても現在の基準では陽性と

なることがありますから注意が必要です。栄養療法的分析で

タンパク質やミネラルの不足が疑われる場合、ピロリ菌感染

は見逃してはいけない病態です。

2020年10月8日 木曜日

カテゴリー 院長室

タグ

漢方薬解説-26 八味地黄丸

漢方薬が宣伝される際に「高齢の方にも安全です」みたいな

言われ方をすることがあり、今回紹介する漢方薬も高齢者に

頻繁に処方されます。さらに、特に症状が無くても「アンチ

エイジングの漢方薬」、ってまた聞こえの良い売り文句も

散見されます。ホントか?!

 

・八味地黄丸(ハチミジオウガン 7番)

構成:地黄6g+山薬3g+山茱萸3g

+茯苓3g+沢瀉3g+牡丹皮2.5g

+桂皮1g+附子0.5g

 

その名の通り8種類の生薬で構成され、地黄(ジオウ)が主役

の薬です。上段の3種、地黄+山薬(サンヤク)+山茱萸(サンシュユ)

はどれも体内に水分を保持する効能があり、つまり体内の水分

不足の方に適応となります。我々の体は加齢によって生理的に

タンパク質不足になり、その結果脱水傾向になります。この

慢性脱水に対し上記3種が有用なので、あたかも若返り薬の

ように言われるのです。

 

ただこれは古来言われてきたことでもあり、現代人が曲解

しているというわけではありません。漢方理論の中では、

「腎」は生まれ持った生命力、という意味で7番にはその

「腎」を補強する効能があるとされてきました。この効能を

持つカテゴリーを補腎剤と言いますが、7番はその代表で

あり「腎気丸」という別名を持つ所以です。

 

まあでも現代医学に照らし合わせれば、若返り薬なんて

ものはあるはずもなく、また水分保持が主たる効能なので

あれば抗加齢というよりは、加齢による症状を緩和する、

という程度に捉えた方が正確でしょう。拡大解釈して処方

するのは避けるべきですが、何より7番の主成分である

地黄は実は最も副作用報告の多い生薬でもあるのです。

一番多いのは悪心です。

 

高齢の方は既に胃腸症状があったり、もとより消化能力が

落ちていたりするので、盲目的に7番を満量処方すると

意外と不調を訴えるケースがあるので注意が必要なのです。

ただ適応がバッチリ合うと思いもよらない効果があったり

するのもしばしば経験します。まあ最初の問診不足だったり

もするんですけど。(^ ^;)

 

7番の残りの生薬では附子(ブシ)が目を引きます。これは

温めながら鎮痛する効果を持つので、脱水傾向で腰痛持ち、

風呂に入ると楽、なんて場合も重宝します。こういう

ケースも高齢者に多いですが、もちろん若い方でもOK

です。その他の補腎剤も重要なので次回紹介します。

2020年10月5日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ

なぜワクチンをしないか

今月からインフルエンザワクチンの接種が始まりますね。例に

よって当院では施行しません。すんません。m(_ _)m

 

決してワクチンを否定しているわけではないのですが、やらない

理由を一言で言えば「確実性に乏しいから」です。ワクチンの

作用は抗体産生を促して感染を防ぐことです。抗体はタンパク質

ですから、タンパク質代謝が落ちていれば抗体産生に影響が

出てもおかしくないですし、ワクチン接種そのもので不調に

なる方も少なからずみえます。

 

病原体にもよりますが、有効率は50〜70%程度という報告

もあるので、ワクチンはやるとしても補助的な対策なのかな、

と思っています。特にインフルエンザは毎年株が変異するので

それを予想してワクチンを作るのはほとんど博打みたいな

もの、とも言えます。実際にワクチン打ったけど罹患したぞ、

という声も聞きますよね。

 

またワクチンを打つと、それでもう安心しちゃって基本的な

対策を怠るという傾向も散見します。やはり手洗いやうがい、

現状であればさらに至近距離で話す際のマスクは大前提の対策

となるでしょう。これらを疎かにしてはいけません。まあ今年

は例年に比べ皆さん徹底しているので、インフルエンザ患者数

は少なくなるのでは、と予見されていますが。

 

ワクチンの在庫数によって、接種回数が変わる傾向があるのも

不信感を抱きます。今年は品薄が予想されるから、高齢者でも

1回でいいです、なんてことになると今までは何だったのよ?!

って思うし。(^ ^;)

 

一人が抗体を有することで周囲に拡散させない、という効果は

あるのでワクチンを打つな、なんて言う気はありませんが、

栄養療法をやっている手前、他に有効な手段があるのならそちら

をお勧めしている次第です。あとワクチン業務に忙殺されて

本来の診療がままならなくなるのも嫌だし。

 

そんなわけで、今年も御理解御協力を頂ければ幸いです。

2020年10月1日 木曜日

カテゴリー 院長室

タグ

風邪ひく前に

朝晩、随分涼しくなってきました。最近は春も秋もあっと

いう間に終わるので、1年の中でも貴重な過ごしやすい

日々かも知れないですね。

 

さて、快適とは言え気を付けねばならないのが風邪です。

今罹患すると、もれなくコロナウィルス感染疑いの眼で

見られるので(^ ^;)より注意が必要です。

 

これまで言われてきたように、手洗いや近距離で話す時

のマスクは当然風邪予防にも繋がりますので継続して

欲しいです。これに加えて冷え対策、そして栄養の対策

をすることが重要です。

 

寝る時はまだ少し暑いかも知れませんが、タオルケット

や上着をすぐ使えるように布団の脇に置いておく、と

いうのが良いですね。既に少し寒く感じるのであれば、

ネックウォーマーだけでも着けて寝る、のも Good 。

起きた時に喉の乾燥を感じるようであれば、口テープ

をして寝てください。

 

栄養素は何を置いてもまずはビタミンCです。レモン、

ブロッコリー、パプリカは工夫して毎日摂取しましょう。

市販のジュースやタブレットはあまり効果がないと

思った方がいいです。そして亜鉛とビタミンDで粘膜

防御力を高める。亜鉛とビタミンDは血液検査での

評価が可能ですから、未測定の方はやってみると良い

ですね。

 

通常の風邪だけでなく、コロナ、そしてインフルエンザ

と、これから冬に向けて感染症対策がとても重要に

なります。メディアはまた色々と煽るでしょうが(^ ^;)

寒さ対策や栄養対策は全てに共通して効果を発揮する

はずです。なるべく早く始めるのがコツです!

2020年9月28日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ