栄養療法をやっていると薬は使用しない、と思われることがあり
ますが、それは誤解です。知らないうちに “自然派ドクター” と
評されたこともありましたが(^ ^;)、普通に薬使ってます。
重要なのは、それが適切なのかということと、減らす手段を
持っているか、ということだと思います。薬は苦痛を取り除く
意味では素敵なものです。それが「飲まないと不安で」とか
「効果分からんけど飲んどく」となると過剰投与になる恐れ
が出てきます。薬は効果がなければ単なる異物なので、飲む
べきではありません。要はメリットとデメリットのバランスを
常に気にするってことです。
また仮にメリットがあったとしても、中止したら症状が元に
戻ってしまった、なんてことはしばしばあります。なので、
薬物治療と並行して薬物療法から離脱するための治療をする
のが理想となります。これが医療者側、患者側ともに蔑ろに
なると薬物一辺倒の治療となり、副作用の問題が表出するの
です。薬はそれそのものが悪いのではなく、使い方を含めた
戦略性の無さが問題なんです。
では減薬や休薬をスムーズに行うための治療法とは何か、僕の
場合はそれが食事指導を含めた栄養療法というわけです。
かねてから「専門家になりたくない」と言って物議を醸し…
てはいませんが(笑)、栄養療法に凝り固まって症状緩和を
疎かにすれば患者さんは無用に苦しむだけです。専門家として
道を極めるのももちろん価値がありますが、偏らず状況に
合わせて優先度の高いものを提案する、という姿勢がないと
本末転倒になってしまう恐れがあります。栄養療法だってどう
いう目的でどういう戦略で行うか、がなければ大抵は続き
ません。「専門家」の負の側面とも言えます。
まあそんなわけで治療法にはそれぞれに特徴が有り、長所も
短所も併せ持っています。治療のゴール設定によってもそれは
変化し得るでしょう。個人的には職人的な専門家にも憧れます
が、今は俯瞰できる戦略家でいたいと思います。