院長室

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重金属と栄養

栄養療法の邪魔者シリーズ(?)も今回が最後です。最後

のオオモノ、それが重金属です。

 

具体的には水銀や鉛などの蓄積を指します。水銀や鉛という

と工業排出物などによる公害を連想するかも知れません。

ゆえに自身にはあまり関係のないものだと思いがちです。

でも実は意外とこれらの害があり、特に栄養療法では代謝

を狂わせる原因となっています。

 

代謝とはある物質が別の物質に変化して利用されること

ですが、その過程で有用物だけでは無く有害物も出て

しまうので、解毒して排泄する仕組みも人体には備わって

います。大きな枠組みではこの解毒も含めて代謝と呼び

ます。その代謝にビタミンやミネラルが大きく関わるわけ

ですね。代謝は非常に細かくかつ複雑に仕組まれており、

あたかも大小様々な歯車が緻密に噛み合わさって作動して

いるかの様です。有害重金属はこの緻密な歯車に挟まって

動きを止めてしまい障害を引き起こす、というイメージ

です。邪魔くさいヤツですねー。

 

重金属障害の厄介なところは、それを確認できる検査が

少ない、という点です。血液検査では全く分かりません。

そこで、毛髪検査や特殊な尿検査などからその手掛かりを

つかもうとするのですが、コストの割りには正確性が

低かったりと、まだ信頼性のおける診断方法が確立して

いません。同時に治療法としてキレーション療法という

ものがあるのですが、これもコスト、副作用などの面

から個人的にはあまりオススメできないのが実情です。

 

診断も治療もあやふやなら、そもそも重金属障害なんて

無いんじゃないの?!というスルドイ突っ込みがありそう

ですが、実は目視で重金属障害を疑える病態があります。

それが歯科アマルガムです。これは平たく言えば「歯の

詰めもの」です。この詰めものに水銀が使用されている

場合があり、これを除去することで体調が良くなる場合

があるんです。さすがにウチでは判断も治療もできません

から、専門の歯科医師に依頼することになるのですが、

古い歯の詰めものには水銀が使用されていることが多い

ので、意外と重金属障害の原因となっていたりします。

盲点ですね。

 

あと、巨大魚は食物連鎖の結果、有害重金属を含む場合

があるので、マグロやカツオなどはあまり勧めません。

昔は鉄や必須脂肪酸の補給源として勧めていましたが、

重金属障害が注目されるようになって、これらの食材の

優先度は落ちました。ゴメンよ。

 

とまあ、栄養の過不足を正す栄養療法もただただ栄養を

補給すれば良いわけではない、ということが分かって

頂けたかと思います。どの時点でどこまでの検査するか、

はドクターによって考え方に差がありますが、少なくとも

これらの可能性を念頭に置いてやるべきではあります。

要は栄養障害の背景にも留意しよう、ってことですね。

2020年10月22日 木曜日

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