“花粉症の漢方薬” と名を馳せているのが小青竜湯です。市販
されているほど身近ですが、よくよく考えてみると漢方薬が
発明された時代に花粉症なんてありません。アレルギーという
概念だって無いはずです。ということは…?!
・小青竜湯(ショウセイリュウトウ 19番)
構成:麻黄3g+桂皮3g+芍薬3g+甘草3g
+乾姜3g+半夏6g+細辛3g+五味子3g
意外と構成生薬数がありますね。見落としてはいけないのが
麻黄+桂皮の組合わせです。これは麻黄湯や葛根湯の基本
骨格にもなっていた、「発汗して解熱させる」コンビです。
つまり19番は基本的には悪寒発熱に使用する風邪薬なん
です。
ではなぜ花粉症に有効なんでしょうか?生薬構成の2段目に
秘密がありそうです。半夏(ハンゲ)が6gと多いですが、この
生薬に咳を抑える作用があります。細辛(サイシン)五味子(ゴミシ)
にも鎮咳作用があります。ということは咳がメインの風邪に
適応ということになりますね。さらに細辛、乾姜(カンキョウ)
は温める効果が強く、半夏、五味子は水分代謝を調整する
作用もあります。ならば「冷え」と「水っぽい」ことが適応
に加わりそうです。
よく、水道の水みたいな鼻水によい、なんて言われますが
鼻水を止めるというより「冷えて透明な水が出る」ことに
対する効果の結果と言えるでしょう。ここが花粉症の症状に
偶然マッチした、というのが正解です。重要なのは冷え
の有無です。冷えを契機に症状が出る、でも構いません。
当然抗アレルギー効果はありません。また、
・苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ 119番)
構成:茯苓+杏仁+甘草+乾姜+半夏+細辛+五味子
なんてのもあり、7種の生薬のうち後ろ5つが19番と
同様です。かつ麻黄+桂皮を含みませんので悪寒発熱には
効果は無いですが、19番の特徴を引き継いでいるため
副作用で麻黄が服用できない人の咳や鼻汁に使ったり
します。ちなみに7種の生薬の一文字ずつをつなげた命名
となっています。
小青竜湯はあくまでこのような適応なので、花粉症=
19番では無効例が出てしまいます。例えば目の充血や
鼻づまりがメインでは適応外ですよね。有名処方とは言え
短絡的な使用は避けるべきです。