院長室

« 2月 2024 11月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

炎症と栄養

ピロリ菌とカンジダ、腸内環境が栄養の吸収に及ぼす影響に

ついて紹介してきました。これだけでも大変なんですが、

現実はそれだけじゃねーんす。今回は炎症との関わりです。

 

炎症は風邪やケガなどの急性炎症とリウマチやアトピー、

あるいは原因がはっきりしない慢性炎症に分けられます。

炎症反応自体はそもそも必要な生理機能なので、急性炎症

はあまり栄養の吸収に影響ありません。問題になるのは

慢性炎症です。

 

単刀直入に言うと、炎症が持続することにより身体は

貧血傾向になるんです。現在でもコロナウィルスが大きな

問題となっていますが、古来よりヒトは感染症と戦って

きました。抗生物質が発見されてから実はまだ100年も

経っていません。最も死者を出してきたのが感染症なん

ですね。

 

感染症が何より怖いとインプットされているので、慢性の

炎症があると人体は「感染症ではないか?!」と疑い、

細菌が増えないような措置を取ります。ヒトの細胞同様に

細菌も増殖する際に鉄が必要なので、鉄を渡さないように

代謝が変化するんです。すると鉄の流通が変化し、貯蔵鉄

が増えて運搬鉄、利用鉄は低下してしまいます。これが

貧血症状に繋がるわけです。

 

栄養療法ではフェリチンというタンパク質の量を重要視

しますが、これはこのタンパク質が鉄の貯蔵量を反映する

ためです。フェリチンが低い時、仮にヘモグロビンが基準

範囲内であっても鉄不足であると判断しますが、もしも

慢性炎症があるとフェリチンは上昇してしまうので、鉄不足

の判断が困難になります。

 

では慢性炎症の原因は何でしょうか?そう、腸内環境の

悪化です。つまりピロリ菌やカンジダ感染があると腸内

環境が乱れ、それがそのまま慢性炎症となり鉄代謝障害が

起きる、ってスンポーです。もしこの状態で鉄を投与すると

敵にエサを与えるようなもので、さらに腸内環境は悪化

する可能性があります。

 

慢性炎症下では鉄不足の改善が難しい、また間違って鉄

投与すると悪化する、というのがポイントとなります。

例えば月経がある女性は鉄不足傾向ですし、成長期の子供

は鉄需要が高いので、治療を始める前に慢性炎症の有無を

しっかり見極めないといけません。

2020年10月19日 月曜日

カテゴリー 院長室

タグ