僕は鑑賞した映画は劇場、DVD問わずリストにして評価
している(え?暗い?)のですが、年末にはそれを見直して
年間ベスト3を決定していたりします。(え?暗い?笑)
いや、もう今年はそれ無理。傑作が多すぎる。
「湯を沸かすほどの熱い愛」は末期癌で余命数ヶ月を宣告
された主婦の死までの生き様を描いたヒューマンドラマ。
寸評を見ると「最期までにやっておきたいことをパワフルに
こなしていく様に感動」などとありますが、そんな優等生な
映画では全くありません。所々にエッジの効いた爆弾を仕込ま
せた羊の皮を被った狼的作品です。
セリフや演出などの総合的な完成度で言えば「永い言い訳」
の方が遥かに上なのですが、パンチ力は断然こちら。主演の
宮沢りえさんはキャリアハイの演技ではなかろうか。しかし
そのさらに上を行くのは娘役の杉咲花さんでしょう。CMで
ぐっさんとむっしゃむっしゃ回鍋肉食べてるコですよ。実際は
19歳らしいので子役とは言えないですが、問答無用に
上手かった。素晴らしい。
監督脚本は中野量太さん。本格的な監督は今作が初なんだと。
恐らくラストシーンのためにタイトルからキャラ設定まで全て
作ったんだろう、と思われる。脱帽です。これまた必見作です。
涙腺大決壊映画でもあるので、鑑賞には気をつけて。(^ ^)
そして「PK」。密かに一番期待していた作品です。「きっと
うまくいく」の監督と主演が再タッグ、ということで何も前情報
を入れずに鑑賞。いきなり主人公が宇宙人でびっくらこきましたが、
これは展開上必然なのが分かります。インド映画なので、長尺で
お決まりのダンスシーンもあるのですが、今作はそれらは随分
抑えられて、ハリウッド的に寄せている印象です。しかし
アーミル・カーンさんの身体は相変わらず異常。51歳だそう
ですが、20代でも通用しちゃうでしょう。
今回扱うテーマはズバリ「宗教」。しかもかなり挑戦的です。
コメディータッチでいてその実、テーマは超社会的です。こんなん
よく上映できたな、と思ったら一部の地域では禁止になった
そうな。そりゃそうさね。ある意味この作品も羊の皮狼です。(造語)
ハリウッドに寄せたとは言え、ボリウッドであることは変わりなく
好みはかなり分かれるとは思いますが、テロが顕在化している
現代にあって、この作品の訴えは全世界に響くことでしょう。
紛れもなく傑作です。上映館数が少ないのが痛いところです。
淀川長治さんや水野晴郎さんが生きていたら、今年の映画界の
盛況ぶりに入れ歯を飛ばして(未確認)喜んだことでしょう。
いやぁ、ホントに映画って素晴らしいですね、さよなら、さよなら。