漢方内科という標榜をしていると、もちろん漢方診療を希望される方が
来院されるのですが、問診で「体質改善をしたいので西洋薬ではなく
漢方薬を…」なんて希望を書かれることがあります。まあ何をもって
体質改善と評するのかは人によって違うでしょうけど、治療薬を必要と
しなくても症状が出ない状態、と定義したとすると上記の希望は、漢方薬を
飲むことによって漢方薬が必要ない状態にする、ということになって
しまいますよね。うーん、これは難問だ。(^ ^;)
漢方薬の魅力は西洋薬にない効果を示すことですが、だからと言って西洋薬
よりも勝っているというわけでもないし、ましてや体質が変わってしまう
ということはないです。漢方薬は生薬の集合体ですが、その生薬の効能が
科学的に明らかになっていないので、どうも未知の不思議薬(?)みたい
なイメージが付き、それが体質改善が期待できる、という方向に発展して
しまったのではないかと想像します。
夢のない言い方かも知れませんが(^ ^;)、漢方薬も単なる薬です。体質
改善とは身体を構成するものを変えると言うことですから、身体の材料を
変えることであり、すなわち食事療法以外にはできないと思います。実は
僕も漢方を勉強し始めた頃は、症状の根本から改善できる漢方は体質をも
変えるのでは、なんて思っていましたがまあこれは幻想でしたね。根本だと
思っていたものは本当の根本ではなかっただけ、という。
漢方内科という標榜をしている以上、こういった漢方薬への過剰な期待と
いうか、間違った捉え方をも正していく義務があるのかなぁと思っています。
僕が漢方薬を使うのは単にそれが患者さんに有用だから、というだけなので
西洋薬の方が有用だと思えば西洋薬を処方しますし、そもそも何の検査も
されていなければ、まずそちらをお勧めしています。「治すために漢方薬を
使っていた」のが次第に「漢方薬で治す人」になってしまうのは最も避け
なければいけないと思います。