我々にとってタンパク質がいかに重要かはこれまでも何度かお伝えして
きましたが、頑張ってタンパク質を摂っても、あるいはサプリメントを
飲んでもなかなか満足した値にならない方がいます。この裏には意外な
犯人がいることがあります。
それが胃に感染するヘリコバクター・ピロリという菌です。ヘリコという
のは“らせん状”、バクターは“菌”、ピロリは“胃の幽門部”の意味ですから、
「幽門近くに住むらせん状の菌」ということになりますね。この菌に感染
すると高率に胃の粘膜萎縮が起き、さらには胃癌発生にも関係すると言われて
います。胃の粘膜萎縮が起きるとタンパク質の代謝が低下して吸収障害を
起こすために、ピロリ菌感染があるとタンパク摂取不足を呈するわけです。
ピロリ菌に感染しているかは検査ですぐに分かりますが、保険適応内で
やるには胃カメラをやる必要があります。胃カメラはちょっと…という方は
自費検査になってしまいますが、最近は随分お手頃になりました。ウチでは
4000円でやってます。検査会社さんの努力もあり、ピロリ菌検査と一緒に
ペプシノーゲンという酵素(の前駆体)も一緒に測ってくれます。これは
胃粘膜の障害程度を反映する検査項目で、この値が低くてピロリ菌陽性の方は、
ピロリ菌感染によって胃の粘膜萎縮が起きているということで、タンパク補給
を勧める前にまず除菌治療が必要になるわけですね。逆に菌が陰性でペプシ
ノーゲンが低い方は粘膜障害を治療することがタンパク代謝改善の近道になる
わけです。
漢方の世界でも消化器系の不調を最優先しますが、栄養の世界においても
主戦場は腸管です。消化器の能力を評価することがすなわち、全身状態の評価
に繋がってくるんです。アレルギーの治療にも腸管免疫が重要視されてきて
いますから、近い将来ペプシノーゲン検査は保険適応になるんじゃないかな
と思います。