院長室

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ラップは万能…じゃないよ

最近暑くなって外での活動時間が増えたのか、薄着になったせいなのか、

すり傷などの外傷が増えています。外傷と言えば湿潤療法ですが、この頃は

周知が進んでいるらしく既に自分で湿潤療法を施行している患者さんも少なく

ありません。


ただ、プラスモイストやズイコウパッドなどの湿潤療法に適した被覆材までの

使用例はまだ少なく、家庭用のラップを使用して自己処置されている方が多い

印象です。もちろんこれは喜ばしいことで、ケガしたらとりあえずマ○ロン

付けとけ!みたいな風潮が払拭されつつあるのだと感じます。でもここで注意。

ラップは湿潤環境を作る上では大変優れていますが、浸出液を全く吸わない

という最大の弱点があります。浸出液の多いキズにラップを貼りっぱなし

にしておけば、当然キズはジュクジュクになりますが、これが過度になると、

“菌の培養液”になってしまい急激に菌数が増えて感染状態になってしまうん

ですね。


ですから、ラップでキズの手当をする時は、ラップに穴を空けるんです。箸や

ボールペンの尖端でぶすぶす刺すんです。そうすれば浸出液の逃げ道ができますね。

ただこれだと、キズ周囲に漏れて大変な事態になってしまいますから、上から

何らかの吸収素材をあてるのです。例えば紙おむつとかペットの尿取りシーツ

とか、生理用ナプキンなど…。これを組み合わせることで、「適度な湿潤環境」が

完成するわけですね。


湿潤療法が浸透してきてるとは言え、まだまだ正確には広まっていないと思います。

たまに新聞紙上で「ラップ療法で感染!」なんて記事がありますが、これはラップ

が悪いわけではなく、過度の湿潤環境を作ってしまっているだけだというのがご理解

頂けると思います。こういうネガティブ記事を上手に利用してアンチキャンペーンを

展開しようとする浅はかな輩がいるので困るんですけどね。(^ ^;)


湿潤療法は安価で家庭でもできる治療法ですが、是非とも正しい知識を身につけた

上で実践して下さいね。

2013年5月23日 木曜日

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