漢方薬が宣伝される際に「高齢の方にも安全です」みたいな
言われ方をすることがあり、今回紹介する漢方薬も高齢者に
頻繁に処方されます。さらに、特に症状が無くても「アンチ
エイジングの漢方薬」、ってまた聞こえの良い売り文句も
散見されます。ホントか?!
・八味地黄丸(ハチミジオウガン 7番)
構成:地黄6g+山薬3g+山茱萸3g
+茯苓3g+沢瀉3g+牡丹皮2.5g
+桂皮1g+附子0.5g
その名の通り8種類の生薬で構成され、地黄(ジオウ)が主役
の薬です。上段の3種、地黄+山薬(サンヤク)+山茱萸(サンシュユ)
はどれも体内に水分を保持する効能があり、つまり体内の水分
不足の方に適応となります。我々の体は加齢によって生理的に
タンパク質不足になり、その結果脱水傾向になります。この
慢性脱水に対し上記3種が有用なので、あたかも若返り薬の
ように言われるのです。
ただこれは古来言われてきたことでもあり、現代人が曲解
しているというわけではありません。漢方理論の中では、
「腎」は生まれ持った生命力、という意味で7番にはその
「腎」を補強する効能があるとされてきました。この効能を
持つカテゴリーを補腎剤と言いますが、7番はその代表で
あり「腎気丸」という別名を持つ所以です。
まあでも現代医学に照らし合わせれば、若返り薬なんて
ものはあるはずもなく、また水分保持が主たる効能なので
あれば抗加齢というよりは、加齢による症状を緩和する、
という程度に捉えた方が正確でしょう。拡大解釈して処方
するのは避けるべきですが、何より7番の主成分である
地黄は実は最も副作用報告の多い生薬でもあるのです。
一番多いのは悪心です。
高齢の方は既に胃腸症状があったり、もとより消化能力が
落ちていたりするので、盲目的に7番を満量処方すると
意外と不調を訴えるケースがあるので注意が必要なのです。
ただ適応がバッチリ合うと思いもよらない効果があったり
するのもしばしば経験します。まあ最初の問診不足だったり
もするんですけど。(^ ^;)
7番の残りの生薬では附子(ブシ)が目を引きます。これは
温めながら鎮痛する効果を持つので、脱水傾向で腰痛持ち、
風呂に入ると楽、なんて場合も重宝します。こういう
ケースも高齢者に多いですが、もちろん若い方でもOK
です。その他の補腎剤も重要なので次回紹介します。