漢方医学は “流れ” を重視する医学なので “不通” 状態を嫌い
ます。“不通” って何じゃい?!と思われるかも知れませんが、
日常的に見られます。それが便秘です。
・桃核承気湯(トウカクジョウキトウ 61番)
構成:大黄3g+芒硝0.9g+甘草1.5g+桃仁5g+桂皮4g
便通が2〜3日に1回くらいだとあまり便秘と捉えない方
もいると思いますが、不通嫌いの漢方界では立派な便秘に
カウントされます。ゆえに下剤系の漢方薬は意外と多く存在
します。特に大黄(ダイオウ)と芒硝(ボウショウ)のコンビは
頻用される組み合わせです。
中でも61番が最もメジャーでしょう。甘草と桃仁(トウニン)
は共に潤す効能を持つので、便を軟らかくすることに寄与
します。また不通の原因は「気」の巡りの悪さなので、気を
降ろす効能を持つ桂皮を配合することは合理的です。
桃仁が血の巡りを改善する効能も持つので、桂皮と合わせて
更年期のイライラやほてりに良い、とされますが当然便秘が
ある人向けです。便秘が無いのに61番を飲めば下痢します。
これは副作用ではなく診断ミス。ただ、前述のように自分
では便秘と思っていないケースもあるので、便通についての
問診が重要になります。
61番以外にも「承気湯」という名が付く薬があります。
61番の前半3つの生薬だけで構成される調胃承気湯
(チョウイジョウキトウ 74番)、大黄+芒硝+厚朴+枳実で構成
される大承気湯(ダイジョウキトウ 133番)です。大黄+芒硝
が共通しているので、承気湯=大黄+芒硝と思われがちです
が、ちょっと違います。「気」は下腹部で滞ることが多く、
それを改善することを「承気」と表現してるので、必ずしも
大黄+芒硝である必要はありません。例えば、保険薬には
ありませんが、小承気湯(ショウジョウキトウ)は芒硝を含みま
せん。つまり大黄こそが「承気」のキモってことですね。
あくまで「気」の巡行が目的であって、便通を良くすること
だけに拘泥しているわけではない、というのが意外と重要な
ポイントです。そういう意味で「承気湯」という命名は気が
利いていると思います。承気だけに。漢方ジョーク。