これから忘年会シーズンが始まり、TVでも「食べ過ぎ、飲み過ぎに
○○!」とか「飲む前に飲む」的なCMが多く流れます。あるいは、
胸焼け、げっぷなどに飲む薬も多数紹介されます。
こういう症状があると、患者さんも我々もつい「胃酸過多」だから
「胃酸を抑える薬」で対処しようとします。実はコレ、結構危険な
方法です。
逆流性食道炎という診断名を耳にすることがあると思いますが、
これは本来食道→胃→十二指腸と流れていくべき食物が逆流し
胃酸の影響で食道に炎症が起きる病態です。胸焼けやげっぷ、悪心
といった症状が出て上記の制酸剤が処方されます。最近は市販薬も
ありますね。でもこの薬はその名の通り胃酸を抑えるだけで逆流を
治しているわけではありません。その場しのぎ的に使用するのは
構いませんが、常用するとむしろ低胃酸による副作用が出ます。
ではなぜ逆流を起こすかというと、様々な原因があるものの、
一番多いのは「胃壁の過伸展」です。食道から胃に食べ物が入って
くると胃の入り口部分はキュッと締まって逆流防止をし胃の中で
消化が始まります。胃が大きく伸ばされると、この入り口部分が
緩んでしまうんです。これが逆流を起こすわけです。
では胃が引き延ばされる原因は?そう、過食と早食いです。また
脂肪が多い食材でこの反応が起きる人もいるので、高脂肪食も
原因となります。まさに生活習慣が原因ですね。日本人はそもそも
胃酸分泌が少ない民族なので胃酸過多は起きづらく、あくまで
逆流現象による諸症状と捉えなければ不要な薬を飲み続けること
になりかねません。
ちなみに制酸剤で低胃酸になるとタンパク質分解が抑制され
胃の中に食物が停留しますので、結果的に胃壁は伸展されやはり
逆流が起き得ます。本末転倒ですね。「ゆっくり食べて腹八分目」
が治療です。