今回も大変メジャーな処方の紹介です。最近では抗癌剤の
副作用に対して使用されたりとか、西洋医学の現場でも
積極使用されている漢方薬です。
・十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ 48番)
構成:人参3g+蒼朮3g+茯苓3g+甘草1.5g
+当帰3g+川芎3g+芍薬3g+地黄3g
+桂皮3g+黄耆3g
変なところで改行されている時は…お分かりですね?(^ ^)
そう、「十全」と言うだけあって10種の生薬から構成
されていますが、よく見ると実はこれまで紹介してきた
処方を合わせたものなんです。上段は四君子湯(75番)、
中段は四物湯(71番)です。75番は消化吸収を助け
元気を出させる薬で、71番は血を作り、血流改善に働く
薬でした。
つまり48番は消化器系と循環器系を守備範囲とする薬、
ということになります。食欲低下や疲れ、皮膚の乾燥、
冷えなどが適応になります。ちなみに中段までの構成を
八珍湯(ハッチントウ)と言います。保険薬にはないですが。
で、さらに下段の2つの生薬が追加されているので48番
は八珍湯加桂皮黄耆とも表現できますね。
その桂皮(ケイヒ)と黄耆(オウギ)ですが、それぞれは加温
作用と水分調節作用を有しますが、人参+黄耆はとても
相性が良く、人参の効果を高めます。この2つの生薬が
配合されている処方を一文字ずつ取って “参耆(ジンギ)剤”
と呼んだりします。48番は参耆剤の代表選手です。
桂皮が配合されることにより、苓桂朮甘湯(39番)が
内包されます。芍薬甘草湯(68番)もありますね。また、
完全ではないですが当帰芍薬散(23番)も入っています
ので、48番はめまいや筋肉の張り、むくみにも効果が
あります。一応地黄が配合されているので、胃腸に配慮は
必要です。
過不足なく広く効果範囲を得る美しい配合だと思いますが、
決して抗癌作用があるわけではないので、癌に48番!
とか、48番で免疫アップ!というのは拡大解釈です。
ちなみに十全大補湯の読み方ですが、“ダイホ” ではなく
“タイホ” ですのでご注意を。知らずに誤読するとちょいと
恥ずかしいよ。