健康診断や人間ドック、はたまたテレビ番組でも何かと“悪役”扱いされて
いるコレステロールですが、はたして正しく理解されているかと言うと
実は甚だ怪しいのが現実です。
コレステロールはよく「LDL=悪玉」、「HDL=善玉」と区別されますが
これがそもそも間違いの始まり。コレステロールは平たく言えば「油を運ぶ
トラック」です。LDLは組織に油を届け、HDLは組織から油を回収してくる
働きがあるので、人間側が勝手に「悪玉、善玉」と名付けてしまったのです。
つまりLDLそのものは別に悪いことしてないわけですね。それどころか栄養を
届ける大事な役割を担っているんです。
さて、では一体どれくらいになったら「異常」と判断すればいいのでしょうか。
現在は日本動脈硬化学会という学会がLDLが140を越えたら高脂血症!と
いう診断基準を作っているので、全ての検査会社の基準値にこの数字が採用
されています。LDLが160にでもなろうものなら、「生活習慣病の始まりです!
肉や卵を食べるのを控えてコレステロールを下げる薬を飲んで下さい!」と
言われてしまいます。
これも実は噴飯もので、コレステロールは肝臓で合成されるので、食事の中に
コレステロールが多ければ合成を抑えますし、少なければ合成が亢進します。
つまりコレステロール値は食事の影響を受けにくいわけです。で、バカ正直に
薬を飲んでしまったらどうなるか。コレステロールは油を運搬するだけでなく、
ホルモンの原料になったり、細胞膜を安定化させる役目があるので、下げすぎれば
それはもう多彩な不調が出ます。不用意に内服を始めるのは危険なんです。
具体的には総コレステロール値が260〜280くらいがベストじゃないかと
言われています。特に閉経後の女性は生理的に必ず上昇しますので、単一な基準値
で判断するのは非常にナンセンスです。コレステロールを犯罪者のような眼で
見ないで(笑)、慈しんであげて下さい。