昨日の新聞に「糖質制限は危険」なる記事が出てましたね。それも日本
糖尿病学会が発表ということで、結構大きく取り上げられていました。
こういう記事が出る度に一々釈明しないといけないんで面倒なんですが(^ ^;)
患者さんが混乱するので改めて解説を。
まず僕らが勧めている糖質制限は糖質そのものを否定しているわけではあり
ません。糖質は貴重なエネルギー源で、生命活動には必須です。極論すれば
「食事という行為は、血糖値を保つため」と言えるほどです。特に脳細胞と
赤血球は糖質依存度が高く、低血糖下ではダイレクトに悪影響を受けます。
ただ、その糖質を「何から得るか」が問題なわけです。単純に考えれば糖質
を摂って血糖値を維持するのが手っ取り早いと考えますよね。ここが間違い
なんです。実は僕たちの身体はどれだけ糖質制限しても通常血糖値は70を
下回りません。ということは糖質以外から血糖値を維持するシステムが備わって
いるわけですね。これが糖新生と言われるもので、タンパク質や脂質から
糖を作る機構です。糖質制限をして不調が出る方は、この糖新生に何らかの
異常があるために血糖値が維持できないせいです。だからこそ、糖質制限と
高タンパク食はセットで考えるべきなんです。
そもそも糖質は口から入ると半分が肝臓に貯蔵されます。血中の糖はものの
数時間しかもたないので、貯蔵した糖を小出しにして血糖値を維持します。
しかし、この貯蔵した糖質も12時間分ほどしかありません。そこでタンパク
質や脂質から糖新生して血糖値を下げないように調節しているんですね。
学会の発表では糖質は60%くらいの割合で必要、なんて出ていましたが
そうすると蛋白や脂質の割合が減って糖新生が上手くできず、すぐに低血糖
(=空腹)になって過食になるという悪循環が始まるわけです。
さらに糖質を摂りすぎることで交感神経緊張を招き、自律神経失調症状が
出現するのはこれまでにも説明した通りです。糖質を摂らなくたって血糖値
が維持できて糖質を摂ると嫌な症状が出るんですから、方針は自明ですよね。
あとの内容はもう「エビデンス(確証)がない」だとか「西洋人と日本人では
肥満度が違うから」とか、それこそ推測の域を出ない論法で話になりません。
こういう“大本営発表”には公言できないウラ事情があるのが常ですから、今回の
学会の発表も何か事情があるのでしょう。推測の域を出ない話は控えますが…(笑)
とういことで、糖尿病学会の発言は音速で右から左に聞き流してあげて下さい。