補土派(ほどは)とは昔の中国の医師の一派で、
「治療において最も優先すべきは消化器機能である。」
とする医師達のことです。
何故、補土派と言うかというと中国には古来より「五行説」
というのがありまして、これは、この世の全てのものを
「木・火・土・金・水」に分類しちゃおうぜ!っていう
なんとも横柄な…いや、便利な説なんですね。
で、人体の生理機能をこれに当てはめますと「肝・心・脾・肺・腎」
となりまして、「土=脾」になります。これら5つは臓器では
なくて機能を表しまして、「脾」とは脾臓のことではなくて
消化吸収機能を指します。なので、消化器機能を最優先する一派を
補土派と言うんですね。
例えば腰痛を主訴に来院された患者さんでも、明らかに消化機能が
落ちていれば、まずはそのお薬から処方する、という具合に治療が
進んでいくのです。
へえ、昔の中国は現代に輪をかけて意味不明だなぁ、と思うなかれ、
この補土派の考えは現代医学に置き換えれば「腸免疫」という
言葉になると思います。今や、花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息と
言ったアレルギー性疾患の震源地は腸だとされてきています。
腸は「第2の脳」とまで言われており、これはまさに補土派の
考えと一致するんですね。分子栄養学の分野でもラクトフェリンなど
の研究が進み、腸での免疫が全身に及ぼす仕組みが明らかにされつつ
あります。
古代中国に検査機器はもちろんなかったわけですから、医師達は自己
あるいは先人の経験から理論を組み立て、消化器機能に目をつけたんで
しょうね。これには本当に感嘆します。実際に消化器機能を立て直すこと
で快方に向かった例を僕もいくつも経験しています。
翻って、アレルギー性疾患に対して抗ヒスタミン剤やステロイドを濫用する
しか手段を持たない西洋医学は、もう少しこういう考え方に歩み寄らねば
ならないんじゃないかと感じます。