遠絡療法の症例です。
左手指、特に中指〜小指と手首が反れないことを主訴に
来院された患者さんです。これらの動きは橈骨神経という
神経に支配された筋肉の作用ですので、診断は「橈骨神経麻痺」
になります。指が反れないため、常に手は握ったような状態に
なり、日常生活動作に不便が出ます。
発症は昨年の7月で、他院で加療もされており9ヶ月経っても
麻痺症状が回復しないため、腱移行術(機能が残っている腱を
移動させてつなぐ手術)を検討される段階になっていました。
一般に橈骨神経麻痺は圧迫や外傷など、契機がはっきりしている
ことが多いのですが、この患者さんの場合は明確ではありません。
しかも帯状疱疹に罹患し帯状疱疹後神経痛を発症、その後から
橈骨神経麻痺が出現しているという特徴がありました。
初診時、帯状疱疹後神経痛の所見はもうなかったのですが、
明らかに橈骨神経麻痺はあり、相談の結果、遠絡療法を選択する
ことになりました。遠絡療法では病名は重視しませんので、その
病態がまず治癒可能なものかどうかを診ます。この患者さんの場合
運動麻痺のみで、感覚麻痺はなかったので治癒可能と踏んだわけです。
そこから頑張って通院して頂き、痛い治療にも文句も言わず(内心は
どうか分かんないけど ^ ^;)、こちらも試行錯誤しながら継続しました
ところ、6回目を過ぎた辺りから効果が出始め、いまでは麻痺も無く
パソコンのキーボードを打てるまで回復しました。治療間隔を空けても
悪化しないので、ゴールが見えてきています。
他院にて地道にリハビリをやっており、関節の拘縮がなかったことも
幸いしましたが、このように腱移行術を回避でき、治癒の見込みが
なかった症状を良くできた時ほど嬉しいことはありません。
やってて良かったなあ、と思う瞬間です。西洋医学以外のいわゆる
代替療法は、あやしいものも多く、患者さんを混乱させる原因にも
なってしまっていますが、ひとえに西洋医学の悪しき診断治療学の
ツケでもありますので、西洋医学一辺倒の先生方にはもっと理解して
欲しいな、と感じます。