漢方薬を不眠症に使用することはしばしばありますが、西洋薬
のように催眠作用があるわけではなく、“気” を緩める効能の
結果として寝付きが良くなったり、途中覚醒が減ったりします。
・酸棗仁湯(サンソウニントウ 103番)
構成:酸棗仁10g+茯苓5g+川芎3g+知母3g+甘草1g
生薬5種類のみのシンプルな構成なので、速効性が望めます。
主役である酸棗仁(サンソウニン)に緊張をほぐす作用があります。
「仁」という文字がある生薬は植物の種なんですが、種には
総じて潤す作用があり、酸棗仁も潤すことで緊張を緩めます。
と言うことは、緊張と乾燥が併存している場合によく効く、
ってことですね。
同じく、知母(チモ)や甘草にも潤す作用があり、また茯苓は
水分代謝を改善する作用がありました。川芎は血流改善の
生薬でしたね。緊張すると口が渇くことは日常的に経験され
ますが、それに加えて眠れない、なんて時に使用する漢方薬
ということになります。同じような効果効能を持つのが、
・甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ 72番)
構成:小麦20g+甘草5g+大棗6g
です。こちらも生薬3種類なので速効性が期待でき、また
全ての生薬が甘いので小児でも飲みやすく、重宝します。
子供の夜泣きや、癇癪なんかに使われてきました。実際、
子供が夜ちゃんと眠るようになってお母さんが楽になった、
なんてエピソードはよく聞きます。
副作用も無く、飲み易いので漢方薬の中では安心度が高い
部類なのですが、実は小麦(ショウバク)はその名の通りコムギ
なのでグルテンを含みます。つまりグルテンで不調を来す人
にはNGとなります。乳児の場合はそれが不明だったりする
ので、処方に少し躊躇してしまう薬でもあります。
以前紹介した「柴胡(サイコ)」という生薬もイライラなどを
抑えるので不眠症に応用されたりしますが、身体を乾燥
させるため酸棗仁とは逆の効能を持つことになります。併用
する際には知っておいた方がいいでしょう。また、睡眠薬は
通常眠前に服用しますが、漢方薬の場合はあくまで緊張を
緩める目的ですので、1日3回服用します。もちろんそれで
日中眠くなって仕事が手につかない場合は眠前でもいいです
けどね。(実話 ^ ^;)